2025年5月30日金曜日

カジノにおける長期投資Big Shotsの動向 -2025年1st Q-

There's so many different worlds 

So many different suns

And we have just one world

But we live in different ones

Dire Straits『Brothers In Arms』


一言で株式投資といっても、いろいろな手法があります。個別株式か投資信託か、アクティブかパッシブか、デイトレかスイングかバイ&ホールドか、順張りか逆張りか、ロングかショートか、グロースかバリューか、etc...

ときにはその手法は投資ではなく投機だ、という論争も見かけます。ただその定義の違いは、100人いれば120通りほど存在するようです。

私としては、これらの違いはどうでもよいものと考えます。グロースとバリューなんて単なるマーケティング用語にしか過ぎず、つまるところは同じではないか。価格しか見ていないのであれば、機を見てドカンとやろうがコツコツと積み立てようが、時間軸が違うだけで結局のところ投機なのではないか。

そんなところの区別化に拘泥せず、要は自分が納得する手法をとればいいだけです。

ただ世間一般的に「投機はよくないもの」という暗黙の了解めいたものがあるのが、ちょっと気になります。

なぜだろう。

なぜ人々は「それは投機だ」と言われると後ろ指さされたような気分になるのだろう。

どうして「コツコツ投資家の夕べの集い」と「コツコツ投機家の夕べの集い」があるとすれば、前者の方がまともに見えるのだろう。

この投機に対して含まれる蔑視めいたもの・・・これは投機筋のせいでモノ(例えばお米とか石油とか)の値段が上がった、とかいう語り口でニュースが流れるからでしょうか。それとも私の気のせいにすぎず、そんな風潮は存在しないのだろうか。

いずれにせよ、株式投資の市場を照らす太陽は、たくさんあるようです。市場そのものは一つですが。


2025年5月10日土曜日

3RDMANからの手紙  FY2025 - 2

 何もしないことは、あらゆる悪徳の始まりであり、あらゆる美徳の頂点である。

カフカ 『カフカ断片集』 頭木裕紀・編訳 新潮文庫


長期投資という運用方針はすばらしいものだ。経済に好不況の波があっても、買うか売るか、白か黒かに思い煩う必要はなく、自分の投資がどう展開していくかを見守っていればいいだけだからだ

by アンソニー・ナット、Roald W.Chan 『価値の探究者たち』 山本御稔・小林真知子・訳 きんざい

 

FY2025は、過去10年のなかで一番トレード(株式の売り買い)の少ない一年となりました。それでも年度の初頭に"Never Sell, Never Again"と宣言した割には、全放出の株式もあったのですが。


3RDMANからの手紙  FY2025 - 1

  価値か利益かというのは、誤った選択です。卓越した財務パフォーマンスは、価値創造を反映しています。もう一度言いましょう。価値を考えれば、利益は後からついてくるのです。

フェリックス・オーバーフォルツァー・ジー 『「価値」こそがすべて!』 原田勉・訳 東洋経済新報社

 

"Exactly!  Bingo!  That's what I've learned.  Stocks follow earnings!"

- Will Danoff 

William Green 『RICHER, WISER, HAPPIER』SCRIBNER

 

The 3rd Man's  FundのFY2025(May 2024 - Apr 2025)が終わりました。『次の10年に向けての雑文(1) ーカタリストとしての株式投資ーで書いた、「次の10年」の初年度が終わったことになります。

4月末が年度末という設定は中途半端な印象ですが、このタイミングだと投資している米国企業の最新のアニュアルレポートをすべて目を通し終えていて、日本企業もeBASE以外は決算発表も終わっているので、私にとってはいいタイミングです。なによりも、このさわやかな初夏の日差しの下では、自然とポジティブな気分になれるのがいい、と実感している次第です。

株式投資を愉しむには、ポジティブなマインドセットが一番大事ですからね。

この記事を書いている時点で外は雨だったりするのですが・・・


2025年5月2日金曜日

FY2025 第四四半期レポート - Stage 04/40 -

I've always said if you spend 13 minutes a year on economics, you've wasted 10 minutes.  I deal in facts, not forecasting the future.

- Peter Lynch

「紳士とは、払った税金と寝た女について多くを語らない人の事です」

村上春樹 『独立器官』  


伝説的なファンドマネジャーのピーター・リンチ氏によると、経済の展望についての考察に13分使ったとすれば、10分の時間を無駄に費やしたに等しいとのことです。

当該期間の2025年2月~4月にかけては、どこかのダイトーリョーのおかげですっかり経済の見通しとやらがわからなくなり、株価も乱高下しています。(乱低下と言った方が正しいかも)

ただしリンチ氏が述べたように、経済の見通しがどうのこうのというのは、それこそジョージ・ソロス級の能力でもない限り、あるいは居酒屋でワイワイ楽しむのでもない限り、時間の無駄遣いなのでしょう。

やっぱり、

株式投資家とは、株式にぶら下がっている値札と経済について多くを語らない人の事です
というスタンスでいるのがよろしいかと思います。成功している著名な投資家は大抵そうであり、出版物やメディアで稼ぐ“投資家”は、その逆を行っている気がするな。

ま、リンチさんは「10バガー」という言葉で有名ではありますけれども。

2025年4月29日火曜日

ロスト・ワールドの覇者 その2 - WSOのFY2024 -

As a leader of one of those families so succinctly put it, when you join Watsco, “you’re not swallowed by a big fish, instead you get to swim with a school of fish.”

2024年度のWSOのアニュアルレポートより

日本の夏は今年も暑くなりそうです。米国はどうなのでしょうか。


2025年4月23日水曜日

暁のZ作戦・その2 - ZTSのFY2024 -

今から約2年半前に発売された科学雑誌『ニュートン』の2022年10月号に、ふたつの注目すべき記事があります。

ひとつは『世界を襲う未曽有の干ばつ』と題された特集です。新たに注目され始めた「フラッシュ干ばつ」がとりあげられ、それがもたらす大規模な森林火災のリスク等々が書かれています。今年に入り、岩手県や瀬戸内で大きな被害をもたらした山火事が発生し、また国外でも韓国やロスで大規模な火災があったのは記憶に新しいところです。

もうひとつは『人口80億人時代のファクトブック』という特集の中で述べられている「タンパク質危機」です。2025~2030年には食肉の供給が需要に追いつかなくなることが予測されていたようです。

いまのところコメ騒動が大きな話題になっていますが、そのうち肉や魚も話題になるかもしれません。10年後には、吉野家の牛丼はおいそれと手を出せない超高級料理・・・かも。

その貴重なタンパク源であるウシ・ブタ・ニワトリ、それからサーモン等々の健康を守るアニマルヘルスケアのZoetis Inc.の24年度を確認します。




2025年4月18日金曜日

品ぞろえとスピードこそが価値の源泉 - HDのFY2024 -

どこかのダイトーリョーのおかげで、仕事もいろいろ身構えないといけないことが増えてきました。私の仕事のUS本社でのカウンターパートは米国南部のおばちゃんで、いかにもGo Trumpな感じの人なのですが、ここのところ“いくらなんでも、こりゃ、マズいんじゃ・・・やっちまったかな”という若干ひるんだ雰囲気を漂わせるようになっています。

ただ我が社の場合では、生産拠点のUS回帰という観点で見ると、ダイトーリョーの目論見通りになってきています。

ではThe Home Depot, Incの24年度を確認します。



2025年4月13日日曜日

MonotaROの第25期レビュー

私は、自分がやっている仕事は、基本的には価値を創造することだと思っています。 

‐ 瀬戸欣哉 株式会社MonotaRO 取締役会長(2015年当時)

川北英隆/奥野一成 編著 『京都大学で学ぶ企業経営と株式投資』 きんざい


MonotaROの第25期の有価証券報告書が出たので確認です。

第25期中間報告書より


2025年4月9日水曜日

2025年4月4日金曜日

カジノにおける長期投資Big Shotsの動向 -2024年4th Q-

He deals the cards as a meditation,  And those he plays never suspect 

He doesn't play for the money he wins,  He don't play for respect

He deals the cards to find the answer

Sting『Shape of My Heart』

最近某国の大統領とその取り巻きがやたらと「お前はどんなカードを持っているんだ、なにも持ってないじゃないか」と喚いています。政治信条や政策へのPro/Conは別としても、さすがにそのやり方はよくないよな、と思います。

それはさておき、我々在野の個人投資家はいかなるカードを切ることができるでしょうか。

たぶん我々が優位に切れるのは「時間」というカードだけなのでしょう。そのたった一枚のカードは最後までとっておき、贅沢に時をかけて解を見つけていくのがよいのかな、と思います。

***

各大物ファンドマネジャー(Big Shot)の2024年の4th Qの株式ポートフォリオが公開されました。たてまえは余興、実は虎視眈々と投資先の開拓を狙って、MoneyやRespectを得るために株式投資を行っているわけではなさそうな修道士的雰囲気を漂わせている長期・厳選株式投資Big Shotsの動向をチェックしてみたいと思います。


2025年3月29日土曜日

全人類のすみっこ5%暮らしの男

 「ところが、集団行動の遺伝子をもたない人たちもいるようなのだ」とロションは言う。「彼らには、みんなと同じように動かなくちゃ、という意識がない。自分の頭で考えられる人たちだからこそ、優れた投資家になれる」

ウイリアム・グリーン 『一流投資家が人生で一番大切にしていること』 依田光江・訳 早川書房

趣味+投資先発掘のスケベ心でやっております各大物ファンドマネジャー(Big Shots)の株式ポートフォリオの確認ですが、2024年の4th Qが公開されています。さっそくレビューをしたいところですが、確認するメンバーを入れ替えることにしました。

今回外すのはDISCIPLINED GROWTH INVESTORS (DGI)で、代わりにカナダのマネー・ジャーのフランソワ・ロション氏のポートフォリオをのぞき見することにしました。

2025年3月20日木曜日

害虫防除がサイエンスの域に達するとき その9 - ローリンズ(ROL) -

我らがThe 3rd Man's  Fundには(私の理解では)ロールアップ戦略を得意とするメンバーがいます。Watsco, Inc. (WSO)、Pool Corporation (POOL)、そしてRollins Inc. (ROL)です。ロールアップいう言葉はNVIC『おおぶね』のカンファレンスコールだかレポートだかで知りました。それまで私はRollins型ビジネスと呼んでいましたね。そのROLの2024年度を確認します。


2025年3月14日金曜日

GGGのFY2024

過去3日間、高熱で寝込んでいました。病院に行きましたが、コロナもインフルエンザも陰性。何だったのだろう。本日37度台まで回復してきましたので、ほったらかしにしていた本稿をアップします。タイトルも中身も体温とは裏腹に熱のこもっていないものとなっています。

あー、しんどい。


あくまでイメージです

2025年2月27日木曜日

子供たちは何処へ - NVRのレビュー 1-

Where do the children go

Between the bright night and darkest day?

The Hooters 『Where Do the Children Go』

いまをさかのぼること約35年ほど前、私は米国東部のフィラデルフィア郊外にある大学に留学をしていました(のちに北西部の大学に転籍する)。かの地の6月あたりはとてもさわやかで、芝生の香りを楽しみながら、ながーい黄昏時に近所の住宅街を散歩していたことは、よき思い出の一つです。ときおりそのあたりにあった公園で、たむろしていた子供たちとバスケをやったりしましたね。

思えば私の株式投資のポートフォリオは、自身の見果てぬ夢を追いかけていく過程で構成されつつあるのかもしれない。私は米国で暮らしていくにはあまりにも弱い人間なので、代わりに太平洋の対岸から、あの過酷な地の優良企業のオーナーになることで人生の帳尻を合わせている気がします。 

あのころバスケをした子供たちは、今はどういう暮らしぶりをしているだろうか。やはり郊外に家を建てて、週末はToroの機械で芝を刈っているのでしょうかね。

米国の主に北東部を根城にしているホームビルダーNVR, Inc. (NVR)をレビューします。The 3rd Man's  Fundの新規メンバーです。


この写真の建築中の家はNVRのものかどうかはわかりません。あくまでイメージです。

2025年2月21日金曜日

スパイスのない人生なんて 10 - MKC-

Power over spice is power over all.

FY2025 第三四半期レポート -ステージ03/40-』で書いた通り、2025年1月に大幅にポジションを減らしたMcCormick & Company,Incorporated(MKC)ですが、The 3rd Man's  Fund最初の10年間のポートフォリオにおけるアイコニック的な存在でもありますし、今後もそれなりに期待はしているので、しっかり2024年度を振り返ってみます。



2025年2月1日土曜日

FY2025 第三四半期レポート -ステージ03/40- 

We have to invest in the world we live in, and not the world we want.

- Charlie Munger

世界的な選挙イヤーだった2024年が終わって一か月が経ちました。

全体的にみると、各地域での保守的なリーダーが選ばれた傾向があるように見受けられます。米国しかり、欧州しかり。ここのところの韓国での騒動も、あれはイデオロギー的に右か左かではなく、“半島”という見地からみて保守か否か、の争いだと思います。

そして日本では、“面倒な時には中空(ちゅうくう)”というお家芸が発揮されましたね。まさしく列島の見地から見て保守的な行動です😅 

これらの結果は、とどのつまりはインフレがもたらしたものと私は考えています。インフレは人々が自分自身の、あるいは自分達の文化や流儀の価値が毀損されたと無意識に感じてしまい、なんとかしてその価値を取り戻そうとすると、いわゆる“保守的”なアクションをとりがちになるのだと思います。

一方デフレは、自分たちが提供するモノやサービスが買いたたかれている状態なので、結果的に失われたウン十年みたいな自信喪失につながるのでは、とも考えます。

It's the economy, stupid.

閑話休題、それぞれの選挙の結果に我が意を得た方もいれば、失望した方もいるかと思います。

いずれにせよ、投資活動においては

We have to invest in the world we live in, and not the world we want.

です。理想に酔わず、ストーリーを描かず、株価に踊らされず、事実を正しく解釈することを心がけ、クールにいこう。