2023年12月26日火曜日

次の10年に向けての雑文(4) ーa permanent holderにとっての最大のリスクー

例年通り、レッドソックスはなりふりかまわずプレーオフをめざしているところだった。息切れ寸前で苦しみながら、「クリフ・フロイドを獲らないことには、にっちもさっちもいかない」とまで思い詰めていた。たったひとりの選手で全問題が解決するはずという、よくある浅はかな発想だ。 〈中略〉 もしフロイドを獲れば、地元ボストンの新聞各紙は狂喜する。フロイドは、レッドソックスの本拠地〈フェンウェイ・パーク〉にまやかしの夢と希望をもたらす存在なのだった。

マイケル・ルイス 『マネー・ボール〔完全版〕』 中山宥・訳 ハヤカワノンフィクション文庫

 

For some reason, the media love the news of one business merging with or acquiring another one.  The investment bankers and financiers who make fat fees love them even more.  Following such an announcement, the CEO is typically invited to CNBC interview during which they will extrol the virtues of "strategic fit," "synergies," "culture fit," and other boilerplate platitudes uttered in every single M&A.  They are almost always wrong.  Most mergers and acquisitions fail.

Pulak Prasad 『What I Learned About Investing From Darwin』Columbia Business School Publishing


インド株式を運用するNalanda Capitalの創始者Pulak Prasad氏は、その著書でM&Aの成功率(失敗率)に関する文献を紹介しています。

2023年12月17日日曜日

次の10年に向けての雑文(3) ー無人島にもっていく3冊+1ー

 

本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。たえず本を読んでいると、他人の考えがどんどん流れ込んでくる。

ショーペンハウアー 『読書について』 鈴木芳子・訳 光文社古典新薬文庫

 

前回、M&Aの巧拙を考えてみたいなんて書きましたが、ちょっと時間がかかりそうなので、今回は向こう10年間で折に触れてページを紐解いていくだろうと思われる3冊+1について書いてみたいと思います。

前提としてThe 3rd Man's  Fund(一時期『いざ・波』とわかれていましたが)は最初の10年間でそれなりに資産を増やしました。とにかく大きくしていくことが最重要課題だったので、別枠に月々積み立てている投資信託にさらにOn Topで定期的に四半期ごとに新たな資金を投入してきました。

さらには投資に関する本も多く読んで知識を吸収してきました。つまらなくて、あるいは私には合わなくて、放り出した本も多数ありましたが。


つぎの10年間は、

  • 家族との旅行(子供たちはいつまで一緒に行ってくれるのだろう)
  • 教育(塾なんぞ無かった田舎出身の私としては、途方に暮れている)
  • 食費(いずれバカスカ食い始めるんだろうな)

に資金と時間を最優先でアロケーションすることになります。

2023年12月6日水曜日

次の10年に向けての雑文(2) ー最大の失敗ー

 

What does a high ROCE of, say, 20 percent tell us?  A simple fact: This Business earns $20 for every $100 it invests.

『WHAT I LEANED ABOUT INVESTING FROM DARWIN』 Pulak Prasad


2014年4月に誕生したThe 3rd Man's  Fund、来年には10歳になります。

おおむね順調に育ってきていて、個人的にはEnoughと言える結果です。財務諸表とはなんぞや?の状態から始まり、日米のいろいろな企業の株式に手を出して試行錯誤しながら自分なりの投資スタイルを探してきた、そのひとつひとつの悪あがきそのものがとても楽しいことでありました。

次の10年はThe 3rd Man's  Fundのクオリティをもっと高めていくことになります。我が家の3番目のProfit Centerとして永続的に行進できる筋肉をビルドアップします。

それをするにあたり、やはり最初の10年での失敗をきっちりと確認し、それの回避策を考えるのはマストです。というわけでここのところじっくりと考えていたのですが、やはり私の弱点は

2023年11月24日金曜日

次の10年に向けての雑文(1) ーカタリストとしての株式投資ー

「十分というのはあなたが考えているよりも長いかもしれないわよ」

村上春樹 『ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編』 新潮文庫

 

 投資家は、企業と人間の本質、さまざまな数字について多くを知る必要がある。

デビッド・クラーク 『マンガーの投資術』 林康史・監訳 石川由美子・翻訳 日経BP社


2014年4月に誕生したThe 3rd Man's  Fund、来年には10歳になります。これを機に年度を5月はじまりの4月終わりに変更します。たいていの米国企業は2月から3月にかけてアニュアルレポートが作成されますし、日本企業も3月が年度末のところが多いため、そのほうが都合がいいというのもあります。

また、なんとなくなのですが、自分の中で長期投資は30年という意識があります。その場合、10年ごとに前半・中盤・後半と分けられます。

ということで、来年の5月からはいよいよ中盤の10年に差し掛かることになります。中盤が終わるころには、私は63歳、ムスメは19歳、ムスコは15歳となり、こりゃ、なかなか重要な局面を迎えることになりそうです。

来年からNISAもさらに充実してくることもあって、これからは投資信託への積み立てがメインになる予定ですが、一方でThe 3rd Man's  Fundももっとクオリティを高くしていくつもりで、これまでの10年間の反省を踏まえながら、改めて投資方針を見直している最中です(Code of Conduct for next 10 years (策定中))。

それに合わせ、すこしずつポートフォリオの中身もいじっている最中で、来年の4月末まで時間をかけて質を高めていく予定です。最終的には中盤が終わる2034年の初夏の時点で株式の平均保有年数が10年になることを目指します。

その過程でいろいろ考えていることを、これから複数回にわたってつらつらと書いてみたいと思います。

2023年9月30日土曜日

投資家K.の四半期レポート 3rd Q, 2023

At Berkshire, we look to performance, not to the calendar.  Charlie and I, at 71 and 64 respectively, now keep George Foreman'spicture on our desks.

To the Shareholders of Berkshire Hathaway Inc.(1994)

今年の夏は暑かったです。炎熱という表現がしっくりきました。その昔、フィリピンはマニラを舞台にした『炎熱商人』という小説がありましたが、もう東京でもそのタイトルでいけるのではないでしょうか。 

夏に備えて2月あたりからしっかり走りこんで汗をかいてきたのですが、ほんっとに屋外に出るのに気合が必要でしたね。それでも家族を連れて山や川、それに海に行ってきたところ、8歳と5歳の子どもたちの好奇心と体力は無尽蔵で暑さなんてもろともしておらず・・・こうして振り返ってみると、私にとってはひたすらバテた印象しかない夏でした。



2023年8月31日木曜日

積み立て投信にたいする考察 ー シン・NISAを迎えるにあたり ー

 敗北……。勝利……。私にはこういった常套句の使い方がよくわからない。人を昂揚させる勝利もあれば、人を駄目にしてしまう勝利もある。人を打ちひしぐ敗北もあれば、人を目覚めさせる敗北もある。生命というのは、そのときどきの状態によっては示すことができない。ただその歩みによってのみ示すことができるのだ。

サン=テグジュペリ 『戦う操縦士』 鈴木雅生・訳 光文社古典新訳文庫

『汝の父を敬え作戦』発動から8年半が経過しました。

教育資金を準備する目的で、ムスメ(8.5歳)のための1st Frontでは、彼女が誕生したその日から以下の投資信託を毎月積み立ててきました。現在はつみたてNISAを利用しています。


  • ひふみプラス(2022年9月まで)
  • コモンズ30 (2022年10月より)
  • 米国株式のインデックス投信

さらにはムスコ(5.2歳)向けの2nd Frontとして、

  • 農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね
  • スパークス・新・国際優良日本株ファンド

を毎月積み立てています。

積み立ては、子供たちがそれぞれ中学を卒業する15歳まで行う予定です。そしてその時点での含み益・損の状況を見て、

  1. 定期預金に切り替えるか
  2. そのままリスク資産として保有し続けるか
  3. 積み立てを継続するか

の判断を下すつもりです。

2023年8月8日火曜日

ポートフォリオは円で見よ ーNVICの米国厳選投資編 第6期ー

暑い日が続きます。今年は2月あたりから夏に備えてけっこうランニングをやって汗をかいてきたんですけどね、この暑さはすさまじいですね。外に出たくありません。聞くところによると、あまりの暑さに海水浴客が少ないということで、これに台風がかさなると・・・いやあ、ちょっと厳しい夏になってしまいましたね。

2023年6月30日金曜日

投資家K.の四半期レポート 2nd Q, 2023


The operative phrase here is “pay no attention”. This is not easily done. Many investors are professionally required to “pay attention” to the latest trend for fear of missing out (pay attention and be invested!).

Nomad Investment PartnershipのInterrim report, Jun 30th, 2002

2023年も折り返し地点です。

せんだって映画『探偵マーロウ』を観てきました。あんまり期待しておらず、また劇場で見終わったときも、ま、こんなもんだな、程度の感想しかなかったのですが、それから何日か経つにつれジワジワとくるものがあり、最近ボーっとしているときは映画の回想に浸っていたりします。

そして気が付いたらブログのタイトルを変更してしまいました。いったいどうしたことか。このままでは劇場まで再度足を運びかねない。うーん、もともと上映場所が少ないうえに、人気なさそうだからいつまでチャンスがあるだろう・・・

2023年5月24日水曜日

ロスト・ワールドの覇者

Watsco knew Peirce-Phelps was a good company and they only wanted three things of us: to continue to lead and manage the business as a market leader; to accelerate our growth by providing us with additional capital and technology; and to collaborate with our peers throughout the Watsco network so that we could all learn and benefit from each other’s experience. So far, we’ve all checked all three boxes and both companies have benefited from the transaction.

Watscoの2019年度版アニュアルレポートより

よく言われていることですが、昨今のICTによるネットワーク化や人々の価値観の多様化などにより、かつての重厚長大な企業が発揮していたような、とくに資本力や固定資産のデカさに依存したスケールメリットが薄れつつあるように見えます。

最近のM&Aにしても、単に規模を大きくするのではなく、新たな技術や販路を確保するといった目的でなされていることが多いように思います。さらには世のトレンドは、ジョンソン&ジョンソンやユナイテッド・テクノロジーズ、日立製作所(6501)のように、分割したり事業を手放したりして組織の効率化を図る方向にあるように見受けられます。

しかし、約2億130万年前から始まったジュラ紀に存在していた生物が、生き延びるためにひたすら巨大化する方向に進化したのと同じように、現在でも大きくなることこそが正しい世界、作家コナン・ドイルの代表作の『失われた世界』のような台地が米国に存在しています。



2023年5月16日火曜日

ポートフォリオは円で見よ ーNVICの米国厳選投資編ー

銘柄選択は芸術でもあり科学でもある。

ピーター・リンチ 『ピーター・リンチの株の法則』 平野誠一・訳 ダイヤモンド社

せんだって(といっても、もう数か月前か…)ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイ(BRK)の株主への手紙が公開され、そこには同社の上場企業への投資先が記載されています。BRKはこれ以外の直接支配権を持っている企業があるので、それを考慮にいれたうえで見ないといけませんが、やはり私もまずはレターのそこの部分を確認してしまいます。

プロ・アマ(個人)を問わず、他人様の株式投資のポートフォリオの中身を覗くことほど楽しいことはありません。

2023年4月16日日曜日

ポートフォリオのメンバーの時価総額 その2

「ブラウンは太りすぎだ」いちばん率直にものを言うスカウトが、反論の口火を切った。

「大学では記録的な活躍だが、でぶには変わりない」とピッターも言う。

「SECリーグの史上初めて、安打三〇〇本と四球二〇〇個を記録しています」とポールがパソコンの情報を読み上げた。

マイケル・ルイス 『マネー・ボール〔完全版〕』 中山宥・訳 ハヤカワ・ノンフィクション文庫

名著『マネー・ボール』が米国で出版されたのが2003年。それから20年の時が過ぎ、今年からは元阪神タイガースの藤浪投手がアスレチックスでプレーしています。4/15に3回目の登板をして3敗目となっていますが、今回のピッチング、内容は悪くはなかったのではないでしょうか。


2023年4月2日日曜日

投資家K.の四半期レポート 2023 Q1

「成長」は、「価値」計算の際に必要な変数なのです。

ローレンス・A・カニンガム『バフェットからの手紙 第5版』 Pan Rolling


多くの優良企業では、成熟ステージに入ったとしても、常に新たな事業展開やアプローチなどを模索し、不断の変革を行うことによって、成長ステージへ回帰するように尽力し続けている

柳下裕紀 『真のバリュー投資のための企業価値分析』 きんざい


2023年の最初の25%が経過しました。

これまで私の投資先の選定方法は、まず連続増配をしているか否か、そして地味かどうか、で判断するところから始まり、最近は、社会の情勢・予測等々と企業の事業内容を結び付けた、連想ゲームに近いノリに変化していました。

2023年3月25日土曜日

床は固いのがお好き その3 -フロア&デコア(FND)の2022年度-

For fiscal 2022, 10 of our 14 merchandising departments posted positive comparable sales, led by Building Materials, Plumbing, Millwork, Paint, Hardware, and Kitchen and Bath, which posted comparable sales above the Company average. Our Indoor Garden, Outdoor Garden, Appliances, and Flooring departments posted negative comparable sales.

THE HOME DEPOTの2022年度版10Kレポートより、下線はK.による

もしかしたらホーム・ディーポ(HD)のフロアリング関連を苦しめているのかもしれないフロア&デコア(FND)2022年度をレビューします。ただLowe’sのフロアリング関連の売り上げはずっと好調のようなので、まだなんともいえませんが。

2023年3月22日水曜日

害虫防除がサイエンスの域に達するとき その8 - ローリンズ(ROL) -

The 3rd Man's  Fundの老舗メンバーの米国の害虫・害獣防除(ペスト・コントロール)のローリンズ(ROL)をレビューします。

2023年3月14日火曜日

プールサイドにて その1

2022年末でThe 3rd Man's  Fundの6%を占めていたプール・コーポレーション(POOL)をレビューします。

2023年3月6日月曜日

スパイスのない人生なんて 8 - マコーミック(MKC)の2022年度 -

 世界中でトウガラシの刺激的な辛さが好まれるというこの不思議な現象には、多様な食物に手を加えて調理し、それを仲間と共に食べる、ヒトという動物の特徴がよく表れている。私たちはただ腹を満たすためではなく心を満たすため、日々の料理にスパイスを効かせるのだ。

出村政彬 『辛い!の科学』 日経サイエンス 2022 5月号

我らがThe 3rd Man's Fundの2022年末におけるポートフォリオの首位打者であり、なおかつOperation Jupiterの旗艦企業でもあるマコーミック(MKC)の2022年度の結果を振り返ります。

2023年2月22日水曜日

Ride on グローブライド

私の実家はかなりの田舎で、中学に入るまでは、夏休みはもっぱら川で遊んでいました。遊ぶといっても、魚を獲るのがメインになります。魚の獲り方はおおむね3つに分けられます。

2023年2月17日金曜日

その投資先、市場は創られているか

レッドブルのための市場は存在しない。我々がこれから創造するのだ。

ディートリヒ・マテシッツ

エナジードリンクのレッドブルの創業者、マテシッツ氏が創業当時のプレゼンで述べた言葉だそうです。クールですね。

2023年2月12日日曜日

ワン・ステップ・ビヨンド その2 -ステップ(9795)のレビュー‐

 知能指数(IQ)は一世紀以上のあいだ、世界のあらゆる地域で一〇年ごとに三ポイント(標準偏差の五分の一)のペースで上昇しつづけている。

<中略>

ごく平均的な現代のアメリカ人が過去にタイムスリップし、エドワード朝〔一九〇一 ー 一九一〇年〕のイギリスにひょっこり降り立ったら、その人はそこで出会うフロックコートを着て髭を生やした紳士の九八パーセントよりも知能が高いことになる。 

 スティーブン・ピンカー 『21世紀の啓蒙 下』 草思社 

学習塾のステップ(9795)の事業報告が送られてきたので、レビューします。

2023年2月9日木曜日

保有株式のフォローアップ

 投資判断は数字や利回りだけで下すべきではない。配当利回り、配当性向、株価収益率(P/E)、投下資本利益率、フリー・キャッシュ・フローといった数値の分析は行うが、これらの数値は物事を単純化しすぎていると感じている。すべての道はローマに通じるというように、どんな手法や数値を用いても最終的には安いか、高いかの判断に行きつくわけだが、定性的な分析の重要性の方が高いと思う

by アンソニー・ナット、Roald W.Chan 『価値の探究者たち』 山本御稔・小林真知子・訳 きんざい 

とはいえ私のような数字が苦手な個人投資家が株式を評価する際、どうしたって定性的なところに偏重しがちです。投資は「儲け」を出すことが大前提なので、やはり定期的に数字はきっちり押さえておいて、ある程度客観的に獲得・維持・放出の判断を下さないといけません。理想は永久保有の無回転ポートフォリオなのではあるが。

2023年1月2日月曜日

投資家K.のアニュアルレポート 2022 後編 ー  シン・サードマン ー

「それで、ちょっと考えてみて。もしあなたが、誰かと一緒に車で長い旅行をするとするわね。パートナーを組んで、ときどき運転を交代する。それでそういう場合にあなたは、相手としてどちらのタイプを選ぶかしら。運転がうまいけれど注意深くない人と、運転はあまりうまくないけれど注意深い人と」 

村上春樹 『スプートニクの恋人』 講談社文庫 

昨年まではThe 3rd Man's  Fundいざ・波に分けていましたが、『投資家K.のアニュアルレポート 2022 前編』で書いた通り、株式投資にかけるリソースを極力少なくするため、ひとつに統合します。シン・サードマンですね。2022年末のポートフォリオは以下の通りになっています。