2025年4月23日水曜日

暁のZ作戦・その2 - ZTSのFY2024 -

今から約2年半前に発売された科学雑誌『ニュートン』の2022年10月号に、ふたつの注目すべき記事があります。

ひとつは『世界を襲う未曽有の干ばつ』と題された特集です。新たに注目され始めた「フラッシュ干ばつ」がとりあげられ、それがもたらす大規模な森林火災のリスク等々が書かれています。今年に入り、岩手県や瀬戸内で大きな被害をもたらした山火事が発生し、また国外でも韓国やロスで大規模な火災があったのは記憶に新しいところです。

もうひとつは『人口80億人時代のファクトブック』という特集の中で述べられている「タンパク質危機」です。2025~2030年には食肉の供給が需要に追いつかなくなることが予測されていたようです。

いまのところコメ騒動が大きな話題になっていますが、そのうち肉や魚も話題になるかもしれません。10年後には、吉野家の牛丼はおいそれと手を出せない超高級料理・・・かも。

その貴重なタンパク源であるウシ・ブタ・ニワトリ、それからサーモン等々の健康を守るアニマルヘルスケアのZoetis Inc.の24年度を確認します。




Zoetis Inc.(ZTS)


グローバル製薬企業の大手ファイザーから2013年にスピンオフされた、独立系アニマルヘルスメーカー。2022年時点で世界シェア約15%のリーディング・カンパニー。(ディール・ラボ『動物用医薬品・アニマルヘルス業界の世界市場シェアの分析』)

ブタや牛、鶏、魚、羊といった家畜と、イヌやネコ、ウマといったペット(Companion Animal)に、感染予防やワクチン等の医薬品を提供。また診断機器も扱う。



【存在を知ったキッカケ】


2018年の農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドの記念すべき第1回(もしくは-1.0回) 運用報告会・・・まだ『おおぶね』を名乗る前・・・で、その存在を知る。(参考記事『農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドの運用報告会』)


【初回の獲得】


2018年10月


【誰にどのような価値を提供しているか】


  • 動物病院や畜産農場へのソリューション提案を含む信頼関係
  • ペットとともに長く歩むQOLの向上


【参入障壁】


人体向けのヘルスケア市場に比べ、アニマル向けのそれは規模が小さい。非効率なため、これ以上大手ヘルスメーカーやジェネリックの参入の可能性は低い。このニッチェな市場でZTSはすでに先駆者として学習効果をおさめ、獣医・畜産農家へのチャネルも確立していると思われる。


【長期潮流】


とくに先進国におけるペットのプレゼンスの増大と、冒頭に述べた動物性プロテインの希少価値化


***


ZTSが産み出す企業価値をみてみます。(以下経営効率や一株当たりのFCFの数値は私の計算なので、あくまで参考値)



棒グラフはROIC-WACC Spreadです。2024年度は過去最高の価値を創造しました。なにゆえ株価が下がったのか理解に苦しんだ・・・ので、2月にすこし追加獲得。

その他の2024年度の実績は:

Net Salesは+8.3%、過去10年間のCAGRは6.9%(マイナス成長1回)
  • USは+11%、OUSは+5%
Operating Incomeは+6.7%、過去10年間のCAGRは15.4%(マイナス成長1回)
Operating Marginは33.8%、過去10年間の平均は31.2%
ROCEは31.0%、過去10年のMedianは21.3%

ZTSはアニマルヘルスケアの医薬品をコアに据えながら、シナジーが発揮できる事業買収をすることにより取り扱い分野や地理的なエリアを広げてきましたが、24年度は買収はなかったようです。

正直なところZTSは優等生で、書くことがあまりなくツマラナイのですが、せっかくなのでここ3年の地域別売り上げの推移(その他にまとめられている諸国は除く)


ブラジルが伸びているのは畜産関係かなあ。UKはあらたなチャネルを開拓したのか? 

中国は経済状況が影響していると思われ、3年前の2位から6位に転落。しかし残念なのは日本。プレゼンスが低下していて、ちょっとさみしい。

カテゴリー別は:

医療用飼料添加物(ちゃんと訳せているのかどうかはしらん)が減っているのは、事業を一部Divestしたからです。


一株当たりのフリーキャッシュフローの推移。


過去10年間のCAGRでみると19.1%‼ 10年前から比較すると約6倍。

***

私からすれば優秀過ぎるあまりにつまらないのだけが欠点。1株たりとも手放す選択肢は無し。

情報開示:この記事を書いている時点でZTS170株保有

Appendix



0 件のコメント:

コメントを投稿