Code of Conduct

 

目立たない場所で、落ち着いて物を見、長い時間をかけて考えること ー これは決して容易なことではない。しかし、時代がどんなに変わったように見えても、株式投資の根本は常にここにしかない

庄野潤三が梶井基次郎を評した言葉をもじったもの。


Goal


世の中に価値をもたらす企業で構成された私的株式ファンドを組成する。それがもたらす経済的なゆとりをベースに、家族と親密な時間を共有する。

同時に、株式投資をすることによって知識を積み上げていくことそのものを楽しむ。複利で積みあがっていく価値は財産だけではなく知識もそうであり、こと知識の価値増大に関しては、終わりはない。


戦略

世の中に価値をもたらす企業は、その企業自体の価値も増大する。そして株価は遅かれ早かれその企業価値を追随する。それを踏まえたうえで:

① 生き延びることを最優先とする

株式投資においてリスクは、

  1. すべきではなかったことを、してしまうこと
  2. すべきであったことを、しないこと

の2つに分けられる。

1.を避け、2.と共存する。

Making Moneyの機会損失は生き延びるためのコストとして受け止め、Losing Moneyのリスクを徹底して避けること。おおかたの場合、行動をしないことこそ最も洗練された行動である。

同時に、投資先にも生き延びる要素を最優先の基準にするため、Debt Freeを求める。

Think about risk first, not return.

② 分析に注力するのは企業(事業)に限定する

経済、政治、国際情勢、マーケット、テーマ等々の分析は、私の手におえるものではない。おそらくは、誰にとっても。

③ 集中投資

過度な分散は避ける。保有企業の業績をきっちりフォローでき、なおかつ年々理解を深められる数に絞る。

世を代表する大富豪(多くは起業家)は、たいていの場合、ひとつの事業を所有し続けていることで富を築いている・・・この事実をしっかり覚えておくこと。

④ 保有株式の選定にあたっては、期待という主観的な変数を取り除いて行う

企業が策定する中期計画やメディアが取り上げるマーケットの規模の成長性は、夏の世の夢のごとし。CEOへのインタビュー記事で語られる内容は、後付け・生存バイアスの研究にうってつけだが、それ以外の何物でもない。10年後の世界をまことしやかに語る識者は、自身が何を言っているのかわかっていない。

よってCEO、専門家、メディア、そして何よりも自分自身の脳内から聞こえてくる心地好いさえずりに耳を傾けないこと。これらをベースに行動することは自己欺瞞への第一歩であることを認識すべし。There is no trap so deadly as the trap you set for yourself.

代わりに最低限過去10年の軌跡をしっかり見る。

過去の結果は、どんな愚鈍な人でも参照できる。未来は狂人にしか見る事はできない。賢人とは、過去と現在を丁寧に観察し、正しく解釈した人のことを指す。


No stories, no projections, just facts about the past.

"Just the Facts, Ma'am" 

 
⑤ Mr. マーケットからの"An offer I can't refuse"を待つ

下記ストライクゾーン参照。The big money is not in the buying or selling - but in the waiting.

それ以外でマーケットタイミングをはかることは一切放棄する。それがNYダウであれTopixであれ、マーケットの天井と底、トレンドを予測ができる人物などいない。いるのは、自分の予測を都合よく忘れ、都合よく思い出す、厚顔無恥な輩のみ。

⑥ 退屈な産業に属する株式を保有し続けること

イノベーションをもたらす企業のニュースは毎日のごとく巷に溢れているが、実際のところ、そういう企業の存在自体は希少であり、ほとんどの場合は現状を維持する力のほうが強い。"Great business stay great, bad business remain bad" が普遍的な物事の在り方である。

またメディアを賑わすM&Aは、往々にして“勝者の呪い”に苦しむ企業を生み出すだけに終わる。
 
ゆえに退屈で安定的な業界で実績を残し続けている企業の株式を選定し、保有し続けるというのは、とても優れた生存戦略となる。回転木馬のデッドヒートにわざわざ参加する必要はない。

ポートフォリオ内のリバランスはおこなわない。事業の根本的な劣化が認められない限り、一株たりとも減らさない。優良企業への株式投資のリターンはリミットレスなのである。

⑦ 諦念を胸に秘める

上述の戦略のトレードオフとして、アマゾンやNVIDIAへの株式投資のような機会を失うことを甘んじて受け入れる。I know I would have missed them, but it's OK dude, it's not the end of the world.  

...and I feel fine.  


戦術

株式の新規・追加獲得は以下を確認してから行う

  1. ROCEが過去10年Medianで20以上であること:This Business earns $20 for every $100 it invests.
  2. 新陳代謝の少ない産業に属していること
  3. それでも着実にTopもBottomも成長を続けていること
  4. 保有している理由を一言でいえるシンプルで正直な特徴を持っていること
  5. その特徴を際立たせるための再投資が行われていること
  6. その企業のテリトリーのなかで、圧倒的なスケールを有していること。独自の市場を作っていれば、さらによい
  7. Debt Freeなこと。Debt/Equity <= 0.3
  8. みんな(Custmer/Consumer、Vendor/Supplier、Employees)が集まる木としてイメージができること
  9. いったん獲得候補を決めてからネクスト・バッターズ・サークル内で最低2週間待つ。そのうえでまだ獲得意欲があればバッター・ボックスに立つ
  10. バットを振っていいのは、以下のストライクゾーンにボールがきたときのみ。色のないところは手を出さない淡い緑は振ってもOK。深い緑は必ず振る。なお、PERはTrail、ROCEは過去10年Medianの値を参照のこと
  11. 最後に、永久にこのビジネスのオーナーになりたいかを、自身に問う



待つこと、打てない球を見極めること2002年のスコット・ハッテバーグ(アスレチックス)のごとし。“初球を振らない率”アメリカンリーグ第一位。“見送り率”リーグ第三位(64.9%)。



打てる球が来たらフル・スイングすること2023年のオータニ・サン(エンジェルス)のごとし。ちまちま遣うな、ぶちこめ!



保有株式の売却の検討は、以下の事象を認めたときに開始する。

  • 事業の参入障壁の高さを見誤ったと悟ったとき
  • ガバナンスがあきらかにおかしいと感じられたとき
  • 修正が効きにくいと思えるリスクをとったとき
    • おおきなDebtを伴うM&A
    • 関連性の薄い多角化
    • 壮大なビジョナリープランの策定
  • 事業において修復不可能な棄損が認められたとき
    • 継続的(3年をめど)なROCEの低下
    • 継続的(3年をめど)なマーケットシェアの低下

2023年12月策定

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