どこかのダイトーリョーのおかげで、仕事もいろいろ身構えないといけないことが増えてきました。私の仕事のUS本社でのカウンターパートは米国南部のおばちゃんで、いかにもGo Trumpな感じの人なのですが、ここのところ“いくらなんでも、こりゃ、マズいんじゃ・・・やっちまったかな”という若干ひるんだ雰囲気を漂わせるようになっています。
ただ我が社の場合では、生産拠点のUS回帰という観点で見ると、ダイトーリョーの目論見通りになってきています。
ではThe Home Depot, Incの24年度を確認します。
The Home Depot Inc.(HD)
米国の、ちょっとあっけにとられるくらいにどでかい総合型ホームセンター・チェーンを展開。
【存在を知ったキッカケ】
1990年代前半に米国留学していた時に、数回店舗に買い物に出かけことがある。その大きさに驚いた。あと米国に出張した時にも冷やかしに行っている(参考記事『米国連続増配当株式の小売店訪問記』)
【初回の獲得】
コロナ禍恐怖まっ最中の2020年3月
【誰にどのような価値を提供しているか】
Aurea Lotusの柳下由紀氏によると、米国のDIY文化を再構築したのは同社だとか。みずから市場を創出した企業。米国では住宅は自分たち自身で手直して資産価値を維持・向上させるのが一般的で、プロ(業者)を含むそれらの人々のDIYニーズを、アドバイスも含めてワンストップ、スピーディに提供している。
【参入障壁】
競合他社のLowe's社と市場を複占している。『双頭のヘルメット:SHOEIの第86期』で述べたように、そのような市場への新規参入は困難であると考える。
またNVIC「おおぶね」のレポートにあったように、競合他社のLowe's社に対しては、大規模なプロ(業者)向け需要に対応できるSCMの構築という点で秀でており、なおかつ大都市圏に近い立地を押さえてしまっているという点で優位を保っているように見受けられる。
ご興味のある方は、是非おおぶねの投資信託の受益者になっていただきたし。
【長期潮流】
米国の人口動態と住宅メンテナンス文化。そして先の金融危機以降、米国における住宅供給が圧倒的に足りていないという「すでに起こっている未来」。
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HDが産み出す企業価値をみてみます。(以下経営効率や一株当たりのFCFの数値は私の計算なので、あくまで参考値)
棒グラフはROIC-WACC Spreadです。毎年しっかりと価値を創出しています。
2024年度は:
Net Salesは+4.5%、過去10年間のCAGRは6.7%(マイナス成長1回)
Operating Incomeは-0.8%、過去10年間のCAGRは8.1%(マイナス成長2回)
Operating Marginは13.5%、過去10年間の平均は14.0%
ROCEは32.3%、過去10年のMedianは42.9%
Net Salesは増えていますが、これは主にSRS社(屋根・造園・プールのコントラクターに対する流通・卸)の買収と営業日の増加によるものです。Sales per square footは、ここ数年は頭打ちです。
コロナ特需の反動(消費者傾向がレジャーや外食等に移った)もあるでしょうが、インフレの落ち着きや、継続する金利高の影響が大きいようですね。
米国で10店、メキシコで2店オープンし、計2,347店。
オンラインセールスは前年度から6.6%伸びたとのことです。全売り上げの15.1%を占めるようになってきました。
HDはここに注力していて、顧客に対する利便性(品揃えの拡充・配送のスピード)こそが価値の源泉と認識し、SCMのさらなるブラッシュアップに注力しているようです。また店舗そのものをDCに次ぐロジスティックス拠点として位置づけし、SCM網の効率化をはかっています。2024年度は米国における50%のオンラインオーダーが店舗でピックアップされています。
つまり頼んだものを店舗でピックアップしたついでの買い物も期待できるのです。そうなればリアル店舗とオンラインのシナジーがうまく発揮されますね。ちなみにHDの広い店舗をほっつき歩いていると、やたらとオレンジのエプロン着用のにこやかなおじさん・おばさんに声をかけられます。なかなか冷やかしだけで訪れるには困難な場所です😅
一方で在庫の回転率は前年度の4.3から4.7と上がっていて、こちらでも効率化が見て取れます。
一株当たりのフリーキャッシュフローの推移。
過去10年間のCAGRでみると11.8%。
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こうしてみると、プロ(業者)のニーズをうまく取り込んで収益の安定化を図り、一方でSCMの強化により一般消費者に対する利便性を向上させるという両輪がうまく回っている印象を受けます。
高い価値創造能力を誇り、一株当たりのFCFも10年前から約4倍という事実を踏まえると、1株たりとも手放す選択肢はないですね。
情報開示:この記事を書いている時点でHD55株保有
Appendix
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