2025年2月27日木曜日

子供たちは何処へ - NVRのレビュー 1-

Where do the children go

Between the bright night and darkest day?

The Hooters 『Where Do the Children Go』

いまをさかのぼること約35年ほど前、私は米国東部のフィラデルフィア郊外にある大学に留学をしていました(のちに北西部の大学に転籍する)。かの地の6月あたりはとてもさわやかで、芝生の香りを楽しみながら、ながーい黄昏時に近所の住宅街を散歩していたことは、よき思い出の一つです。ときおりそのあたりにあった公園で、たむろしていた子供たちとバスケをやったりしましたね。

思えば私の株式投資のポートフォリオは、自身の見果てぬ夢を追いかけていく過程で構成されつつあるのかもしれない。私は米国で暮らしていくにはあまりにも弱い人間なので、代わりに太平洋の対岸から、あの過酷な地の優良企業のオーナーになることで人生の帳尻を合わせている気がします。 

あのころバスケをした子供たちは、今はどういう暮らしぶりをしているだろうか。やはり郊外に家を建てて、週末はToroの機械で芝を刈っているのでしょうかね。

米国は主に北東部を根城にしているホームビルダーNVR, Inc. (NVR)をレビューします。The 3rd Man's  Fundの新規メンバーです。


この写真の建築中の家はNVRのものかどうかはわかりません。あくまでイメージです。

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NVR売り上げ規模でいくと米国第4位のホームビルダー。本社はワシントンDC(注・・・ワシントン州ではない)にほど近い、ヴァージニア州レストン。一軒家やコンドミニアムの建築・販売を行う会社。原材料を仕入れて、子会社の工場でパネル等セグメント部材を組み立てて現場に搬入。工事の指揮・監督をするが、実際の建築作業は請負業者が行う。

平均86日で完成させる非常に効率的な仕組みをつくっている。Aurea Lotusの柳下氏主宰の第190回サロンより)

一方で自社取り扱い物件に限るが、住宅ローン専門金融も行っており、ローンの発行手数料、タイトル(保有権)手数料の収入がある。またローンそのものは締結後30日以内にSecondary Marketに売却する。

Homebuildingでは以下の3つのTrade Nameで商売をしている。

  • Ryan Homes (2022年就任の現CEO、Paul C. Savie氏はここ出身)
  • NVHomes
  • Heartland homes

主に活動している地域は以下の通り。

Mid Atlantic:

Maryland, Virginia, West Virginia, Delaware and Washington, D.C.

North East:

New Jersey and Eastern Pennsylvania

Mid East:

New York, Ohio, Western Pennsylvania, Indiana and Illinois

South East:

North Carolina, South Carolina, Tennessee, Florida, Georgia and Kentucky

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【存在を知ったキッカケ】

Aurea Lotusの柳下氏のX (旧ツイッター)

【初回の獲得】

20251

【誰にどのような価値を提供しているか】

狭義では、質の高い中~(準)高級住宅(24年度のSettlementにおける平均価格はUS$450.7K)と、住宅ローン専門金融。

広義では、住宅購入者の資産価値及び周辺地域全体のブランド向上、ならびに地域経済の活性化

【参入障壁】

Aurea Lotusの柳下氏主宰の第190回サロンの講義によると、米国ではホームビルダーのテリトリーは比較的地域やターゲット層によって住み分けされていて、あまりシェアの奪い合いはおこらない。逆に地域全体の付加価値を上げていく施策・開発を行っていることにより、地理的な障壁を築いている。いったんコミュニティとWin-Winな関係を築くと、そこに後から割り込んでいくのは結構大変と思われるし、そんなことをするより、各自得意領域に集中したほうが効果的と思われる。

【長期潮流】

令和の改新 その3 - 株式投資のメインストリーム -』『令和の改新 その4 - 巨鯨現る -』に書いた通り。

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NVRが産み出す企業価値は、げっぷが出ます。(以下経営効率や一株当たりのFCFの数値は私の計算なので、あくまで参考値)



スパイスのない人生なんて 10  - MKC-
』で確認した
McCormick & Company,Incorporated(MKC)のグラフとは左軸の目盛りの値が違っています。ROICは過去10年のMedianでいくと33.6%‼です。

この数字の高さがNVRに興味を惹かれた理由です。ちなみに同業のD.R.Hortonはだいたい5~17%の間、Lennarは7~25%の間とのことで(上記第190回サロンの講義より)、それらと比較しても圧倒的に素晴らしい数字です。

これはNVRが土地の購入をして自ら開発をしないことが大きな要因となっています。投下資本が少ない結果、計算の際の分母の値が小さいので、このような目覚ましい数字が産出されることになりますね。

土地を購入する代わりにNVRは土地開発業者とLot Purchase Agreement(完成地購入契約)に基づいて、開発された建物用地を取得します。そのさい最終的な価格の10%程度までをデポジットとして支払います。つまり最終顧客が家の建築・購入を決定するまで土地を持たないプロセスになっています。

このようなAsset lightな戦略をとっているのがNVRの特徴です。土地取得に関するリスクは終的な価格の10%程度に抑えていると言えますね。

このThink about risk first, not return or expansionな姿勢は、その昔同社が拡大路線に走った結果、1992年にChapter11を申請する破目になったことに起因しています。長期投資家としては、この姿勢は買いですね。

2024年度は:

Net Salesは10.3%増、過去10年間のCAGRは7.5%(マイナス成長1回)
Operating Incomeは9.1%増、過去10年間のCAGRは13.1%(マイナス成長1回)
Operating Marginは9.1%、過去10年間の平均は13.1%
ROCEは50%!!、過去10年間のMedianは43.6%

トップラインの成長とROCEを鑑みるに、NVR絶大なる価値創造複利マシーンと判断しています。

一株当たりのフリーキャッシュフローの推移。



過去10年間のCAGRでみると24.7%。

このフリー・キャッシュ・フロー、おもたる使い道は自社株買いくらいのようで、けっこうCashがたまってきており、これはこれでリスクフリーなビジネスを展開する同社の特徴といえるかもしれません。

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株価の過去10年間のCAGRは17.3%にとどまっています。

金利が高止まりしていることもありますが、とくに最近はトランプさん+イーロン・マスクさんによる連邦政府職員へのリストラの影響で、2024年11月以降、NVRの根城の一つであるワシントンDC界隈では住宅約5,000戸が売りに出されており、同地域の住宅価格のメジアンは20%低下しているようです(グッチ―ポストの経済ZAP!! メルマガ第290号)。

それで、ここのところのNVRの株価は冴えていないと思われます。

いやはやダイトーリョー、いい仕事されてますね😁 太平洋の対岸から感謝申し上げます。

情報開示:この記事を書いている時点でNVR4株保有

米国は、しばらくBetween the bright night and darkest dayをさまよいそうですね。

Appendix


名曲です。フィラデルフィアでのライブです。







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