2023年12月6日水曜日

次の10年に向けての雑文(2) ー最大の失敗ー

 

What does a high ROCE of, say, 20 percent tell us?  A simple fact: This Business earns $20 for every $100 it invests.

『WHAT I LEANED ABOUT INVESTING FROM DARWIN』 Pulak Prasad


2014年4月に誕生したThe 3rd Man's  Fund、来年には10歳になります。

おおむね順調に育ってきていて、個人的にはEnoughと言える結果です。財務諸表とはなんぞや?の状態から始まり、日米のいろいろな企業の株式に手を出して試行錯誤しながら自分なりの投資スタイルを探してきた、そのひとつひとつの悪あがきそのものがとても楽しいことでありました。

次の10年はThe 3rd Man's  Fundのクオリティをもっと高めていくことになります。我が家の3番目のProfit Centerとして永続的に行進できる筋肉をビルドアップします。

それをするにあたり、やはり最初の10年での失敗をきっちりと確認し、それの回避策を考えるのはマストです。というわけでここのところじっくりと考えていたのですが、やはり私の弱点は


  • 連想ゲームで株式を選んでしまう

これに尽きると思います。

どこそこの地域の人口が増えるから、気候温暖化が進むから、水・食料が足りなくなるから・・・等々のテーマがあり、それに対してよい立ち位置にあるとおぼしき企業をピックアップし、それらのアニュアルレポートを読んでビジネスを把握し、営業利益率やROE、ROA等々の数値の推移をチェックしてGo!というのが基本的なパターンでした。

決定的に欠けていたのが、最終的に取捨選択をする際に頼れる、自分の腹にまで落とし込めた定量的な分析数字の基準値です。

たしかに連想ゲームだけでよい投資先に出会うこともあるのですが、それだけだとすぐにほかの企業に目移りしてしまい、結果、回転率が高くなってしまう、という悪循環に陥ってしまいます。自覚はしていたのですが、このクセはなかなか抜け出せませんでした。

ただ2021年に以下の本を入手してから、少しずつ私の意識が変わっていきます。


 

この本にでてくるROIC (Return on Invested Capital)という数字、はじめは胡散臭げに見ていたのですが、たしかに調べれば調べるほど、継続して高いROICをたたき出している企業の株式価格は比較的安定して伸びていっている事実を発見します。そりゃもう結果は一目瞭然。

そこで徐々に自分なりにROICおよびWACCの計算式を入れたスプレッドシートをエクセルで作っていきました。

さらには今年の秋に以下の本を入手し、ROCE(Return on Capital Employed)という指標もしっかりと把握しました。



ROICもROCEも何がすごいって、これが持続的に高い=以下のことが証明される数字なのです。

  • その企業は何らかの参入障壁を有している
  • 優秀な経営陣が揃っている
  • 価格決定権を有している
  • 世に付加価値を提供している
  • 年々企業価値が高まっている
  * それぞれ末尾に(可能性が高い)という一文を入れておいたほうがいいですけど。


ちなみにROICはNOPATを分子に、ROCEはEBITを分子にしています(なんかいろいろ異なる解説が溢れていますが、私はこれで行っています)。なのでROCEは本業に含まれない特別な利益や損失含んでいるから不適当でござます!という批判が出てくるでしょうし、ROICに対しては、なんで税率という本業とは関係のないことを気にしなくてはいけないのかね・・・という文句が出てくることでしょう。

私は、10年間連続の数字を取って傾向がつかめれば、どちらの数値でもヨシ!と判断しています。

というわけで、現時点でのThe 3rd Man's  FundのメンバーのROCEの数字の推移をまとめました。各年次報告書から手で拾ってきた数字をもとに私が計算したので信頼度は高くない(笑)。


過去10年間の平均Avg(10 years)の大きいもの順から並べています。また、この秋以降に獲得したものはオレンジにハイライトしています。

ホーム・ディーポ(HD)にランドスター・システム(LSTR)、こやつら100ドルの投資で40ドル稼いでまっせ。LSTRはここ直近の数字がすごすぎることはさておいて、その持続性は目を見張るものがあります。(半信半疑だったので、金融危機前の2008年までさかのぼって調べた)

Code of Conduct for next 10 years (策定中)に記載している通り、今後はROCEの10年の平均が20以下のものは、新規・追加獲得の対象からは外れます。たとえ商品がユニークであろうが、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオに組み入れられていようが、容赦なく外します。

既存の組み入れ企業はあえて外すまではしませんが・・・、まあフロア&デコレ(FND)は成長期だし、日立製作所はターンアラウンド真っ最中だから、この2つは割り切りましょう。

でも割り切れないのがありますね。こうして数字に直すと最初の10年の一番大きな失敗があぶりだされましたね。


そう、マコーミック(MKC)、貴様だ。


MKCのビジネス事態はとてもユニークなもので悪くないと思う。しかし過去10年間一貫してROCEが低い。RB Foodsを買収するまでは、それでも悪くはなかったのだが・・・

知らなかったのだよ、これ。

なので事業内容と営業利益率だけを見てポートフォリオの一位を占めるまでポジションを膨らませてしまった。ポートフォリオの奥深くにモグラをインプラントしてエサを与えてしまっていたのだ。

MKCは一時期NISAで保有していて、それが5年経過とともに強制的に売却され、その価格で同時に特定口座で購入されているから、いまのところ含み損な状態の口座がある。なので、処分しても税金はかからない。どうしようか・・・たぶんあと半年くらい悩むと思う。

***

もうひとつ、今後注意を払っていく数字はDebt/Equity Ratioです。

なにごともレバレッジをきかせるのはよくない。たとえビジネスでも。たとえそれが経営効率の足を少々引っ張るとしても。とくに向こう10年はMr. Marketから私が断れないオファーが提示されない限り、新規にThe 3rd Man's  Fundへのcapital allocationはしないので、それこそ私が10年間プリゾナー行きになってもOKな企業だけ選定したい。

なのでDebt Freeに越したことはない。

その数値をまとめたものは以下の通りです。過去10年間平均で数値が低いもの順に並べました。(数値の元ネタはMorningstar)


HDは別格だ。忘れてしまおう。BSは債務超過なときもあるけど、それで長らくやってきたんだし。

やはり日本企業が比較的上位に来ますね。なかなか米国企業はなあ、風土・体質的に難しそうではある。

Code of Conduct for next 10 years (策定中)に記載している通り、今後の新規・追加獲得はDebt/Equity<=0.3をルールにします。グラコ(GGG)を獲得したときは、まだここまで厳密に決めていなかったな…

***

上記2つのリストの順位を足して、低いもの順に並べてと以下の通りになります。


最近獲得した株式はやはり上位に来ますね。にしてもLSTR、この素っ気ないIR(株式を保有してもらいたくないのか?)の物流/3PL会社、ひょっとしてウォール・ストリートは気づいていないのか? いや、PER、高いと言えば高いのだけれど。

ところで両リストを俯瞰してみると、ひっかかかるところがありますね。MKCの2017年にROLの2019年。これはさらなる落とし穴、M&Aの迷宮の入り口です。次回は、私が以前勤めていたグローバル企業での実体験も踏まえながら、M&Aの巧拙を考えてみたいと思います。

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