2023年12月17日日曜日

次の10年に向けての雑文(3) ー無人島にもっていく3冊+1ー

 

本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。たえず本を読んでいると、他人の考えがどんどん流れ込んでくる。

ショーペンハウアー 『読書について』 鈴木芳子・訳 光文社古典新薬文庫

 

前回、M&Aの巧拙を考えてみたいなんて書きましたが、ちょっと時間がかかりそうなので、今回は向こう10年間で折に触れてページを紐解いていくだろうと思われる3冊+1について書いてみたいと思います。

前提としてThe 3rd Man's  Fund(一時期『いざ・波』とわかれていましたが)は最初の10年間でそれなりに資産を増やしました。とにかく大きくしていくことが最重要課題だったので、別枠に月々積み立てている投資信託にさらにOn Topで定期的に四半期ごとに新たな資金を投入してきました。

さらには投資に関する本も多く読んで知識を吸収してきました。つまらなくて、あるいは私には合わなくて、放り出した本も多数ありましたが。


つぎの10年間は、

  • 家族との旅行(子供たちはいつまで一緒に行ってくれるのだろう)
  • 教育(塾なんぞ無かった田舎出身の私としては、途方に暮れている)
  • 食費(いずれバカスカ食い始めるんだろうな)

に資金と時間を最優先でアロケーションすることになります。

これらの個人的な状況を踏まえ、向こう10年中のThe 3rd Man's  Fundは、基本的に現状の資金でやっていき、いざ良い企業の株式の価格が下がったときのみ余裕資金(その時々にあればの話だが)を投入するということになります。

Code of Conduct固まってきました。特別アドバイザーも招へい済みです。年内に完成させ、2024年1月1日よりGo-Liveの予定です。

当記事は、それを策定するにあたり大いに参考にし、さらにこれから折に触れて辞書や経典のようなスタンスでページをめくるであろう3冊+1について書いてみます。

まずは『一流投資家が人生で一番大切にしていること』(ウィリアム・グリーン著、依田光江・訳、早川書房)。 



 

この本は+1にあたります。

もうすでに『次の10年に向けての雑文(1) ーカタリストとしての株式投資ー』で書いていますが、投資云々だけではなく、私の物事の受け止め方、物事に対する考え方、人生に対するスタンスに大きな影響を与えた本になります。新大阪駅にある本屋さんで新幹線での時間つぶしのつもりで買った本でしたが、掘り出し物でしたね。

では3冊の紹介。

まずはこれ。



同書に関しては約8年前にもブログの記事にしました(配当を転がせ - 『マネー・ボール』を読んで -

今年の春先からじっくり読み返してみましたが、ひたすら面白い。

私にとってこの本の肝は三つ。

まず一つ目に、世の趨勢に惑わされないようにするため、いかに自分なりの独自の判断基準を設けるか、というのが挙げられます。具体的にはミスター・マーケットが、「この業界の先行きは真っ暗だ」「FRBもしくは日銀が利上げするぜ」「アメリカ型の資本主義はもう限界や」「歴史の終わり」「日本企業は世界(どこやねん)から周回遅れ」等々喚きながらオファーしてくる価格を冷静に見据えつつ「この企業の過去10年間のROCEのメディアンは30、しかも上向きつつある」ことを確認して粛々と株式を獲得していく姿勢を身に着けることを意味します。株式に手を出さない判断を下す場合にも然り。

あと、よく言われている「相場が大幅に下がったときに投資する」というのは言うは易しですが、実際には動く基準値を設定しておかないと動けるものではありません。そういった意味でも、自分(達)なりの基準を前もって設定しておくことは大事です。

二つ目は期待という主観的な変数”の排除をする姿勢です。これは私自身の最初の10年間の軌跡をみても明らかなのですが、目から怪しげな光線を出しながら語る経営者、新聞論説員、エコノミストに評論家たちの描く未来からは一切目を背けたほうが平穏に株式投資ができます。みな未来を知りたがるけど、大事なのは現在まで持続している過去です。

そもそも3か月後の利益なんて、その会社のCEO自身がもっとも知りたい数字だと思うのだが、その質問を当のCEOに颯爽と投げかけることがメインの投資家向けテレカンなんて、これ以上の茶番劇はないです。よくみんな真面目な顔してやってますね。

ちなみにウォーレン・バフェットさんも「私は経済予測記事は読みません。漫画欄も読みません」というような発言を繰り返しされていますが、自称バフェット研究家にして凄腕投資家みたいな人がしょっちゅうタイミングを「予測」する本を出版したりしているのは・・・あれは笑いをとろうとしているのでしょうか。

ま、誰しも食べていかねばならないことは理解していますが。

三つめは資金繰りに対する姿勢ですね。先述の通り、もう資金は潤沢に(これまでも潤沢というわけではなかったけど)入ってこないので、ポートフォリオの再編成は、2000年代初頭のアスレチックスのトレードのように冷徹に行う必要があります。

『マネー・ボール』は都度都度ページをめくることで、ともすれば陶酔と恐怖にブレてしまいがちな感情を抑えるのに役立つ一冊になることでしょう。

次の2冊はこれらです。





長期的に株価は企業の価値を追随する、という原則は知っていたのですが、では具体的にどうやってその価値を測るのか・・・という私のモヤモヤした疑問に、難解に(笑)解答いただけたのが柳下裕紀氏の著書になります。しょうがない、時として物事は難解なのです。数時間で読める2千円以下の本に書かれている簡潔な方法が役に立つことなど、そうそうありません。

人によっては、とっつきにくい本だと思います。私にとっても、とっつきにくい本です。しかし株式投資をするにあたって日々浮かんでくる疑問に有意義なヒントを与えてくれる参考書として、ゆるぎない座右の書となります。

ちなみに同書の有効な利用方法ですが・・・

まずは本を一読。

そのうえで柳下氏がCEOを勤めるAurea Lotus主催の『人生と投資の会』の企業分析のサロンに申し込みます。そうするとそのサロンの講義対象になる企業のROIC等の分析がされているExcel資料が送られてきます。

私はそのExcelを解体して分析し、自分用に再構築しました。あたかもアクトン島に不時着したゼロ戦を米軍が回収し、調査したように。

このExcel表と同じものをメンテナンスするのは私には不可能です。なのでなるべく簡略にしたコピーを作成したのですが、結局、あの数値も必要、これを計算するにはやっぱりこの数値も必要、みたいに後付けで膨れ上がっていき、最終的に不必要に不便なファイルができあがってしまったのは仕事と同じ・・・

例:ランドスターシステムのサマリーシート by K. なんでROICの行が2つもあるのか、なんて質問はしないでください。そうなってしまったのです・・・

なので、柳下氏からExcelファイルを入手し、それを参考にご自身なりのスプレッドシートを作成するのがおススメです。

あと念のために申し添えておくと、2023年時点の話にはなりますが、柳下氏の両目からキラキラした怪光線が出ていないことは請け負います。

そしてもう一冊が私にとって投資関連本のザ・マスターピースと言える本、インド株式を運用するNalanda Capitalの創始者、Pulak Prasad氏による『WHAT I LEARNED ABOUT INVESTING FROM DARWIN』(Columbia Business School Publishing)です。

これは決して「生存競争を生き延び進化し続ける企業に投資する、進化する投資家になるべし!」的な、よくある進化論を誤ってご都合主義的に引用するような浅はかな本ではありません。

Prasad氏は、進化生物学に深い見識を持ち、自然界と株式投資界隈双方に通ずる本質的な法則をあぶりだし、それらに沿いながら、高いクオリティを持つ株式のみを厳選してPermanentに投資する方法を提案しています。

スタンスも生物学者の手法に近しい方法をとっています。

 We at Nalanda pursue the profession of investing the same way evolutionary biologist do: We interpret the present in the context of history.  Evolutionary biology does not make predictions as physics and chemistory do.  Nor do we.  Instead, our investment approach attempts to explain the present by interpreting what occured in the past.

そう、 Nalanda Capitalも、『マネー・ボール』のビリー・ビーンGMが率いた2000年代初頭のアスレチックスと同じく、期待や予測という主観的な変数に頼らず、あくまでも過去の実績の解釈に重きを置いています。

ダーウィンもドラマティックな新種や前人未到の地で新たな地層を発見したわけではありません。あくまで当時の学者たちが入手可能で周知なエビデンスに独自の解釈を加えることによって、人類の歴史を揺るがす『種の起源』を世に出したのです。

ちなみにNalanda Capitalが運用するファンドに2007年に1ルピー投資していたら、2022年には13.8ルピーになったそうです。同じ期間のインドSensexだと3.9ルピー。Closedな同ファンドが買いに大きく動いたのは、金融危機の08年、欧州危機(ありましたねえ、ギリシャのその後はどうなんでしょ?)の12年、そしてコロナ禍の20年のわずか3回だけだったとか。そんでもって投資先企業数は30社程度。FPの山崎氏が目を三角にして「もっと働け!」とドア蹴破って怒鳴り込んできそうなほど、「労働」していないですね。

この本は雲の上のGuruたちが発する恐れ多い語句、たとえば「素晴らしいビジネスをほどほどの価格で」とか、「分散投資をありがたがるとは気が違っている」とか、「オッズを理解し勝算があるときだけ行動せよ!」みたいな、ある意味掴みどころがない金言を、自然界での法則を引用しながら控えめかつ丁寧に解説することにより、私のハラに見事なまでに落とし込んでくれています。

現在策定中のCode of Conductも、同書の影響が一番大きいです。まず間違いなく、今後一年に一回は読み直すことでしょう。格調高くて慎み深く、なおかつエスプリの効いた英語による、本質を突いた株式投資の本になります。

というわけで、もうこの3冊+1で、今後10年の航海はOKですね。あとは自分の頭で考え抜き、自分で決めた行動規範にのっとり、自分の肝で行動すること。リスクと言えば・・・例えば柳下氏が新たな本を執筆中という情報もあり・・・いや、もう、余計なことはしないでもらいたい(笑)。

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