2023年3月6日月曜日

スパイスのない人生なんて 8 - マコーミック(MKC)の2022年度 -

 世界中でトウガラシの刺激的な辛さが好まれるというこの不思議な現象には、多様な食物に手を加えて調理し、それを仲間と共に食べる、ヒトという動物の特徴がよく表れている。私たちはただ腹を満たすためではなく心を満たすため、日々の料理にスパイスを効かせるのだ。

出村政彬 『辛い!の科学』 日経サイエンス 2022 5月号

我らがThe 3rd Man's Fundの2022年末におけるポートフォリオの首位打者であり、なおかつOperation Jupiterの旗艦企業でもあるマコーミック(MKC)の2022年度の結果を振り返ります。

家の中の辛そうなものを集めました。MKCと直接関係はございません。たぶん。

【存在を知ったキッカケ】

Dividend Championsのリスト農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶねの運用レポートじゃないからね(笑)。

【初回の獲得】

初回獲得は2015年1月。以来折に触れて追加しています。確か途中で株式の分割もあったような気がするが、よく覚えていません。

【参入障壁】

農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶねの2019年9月の月次レポートによると、MKCの調味料(Consumer Segment)は、北米や主要欧州諸国において市場シェアが40~50%とのことです。口の中に入るものですし、特にスパイス(だけではないですが)は、一般的な消費者にとっては、ころころメーカーを買えるようなものではない、と思います。

B to BであるFlavor Segmentでは、食品・飲料メーカーが調味料のパートナーを変えることのスイッチングコストは、想像するにとっても高くつきそうです。

【世の中に提供している価値は?】

ヒトにとって舌は永遠のモチベーションです。それは世界史を勉強すればわかります。英国が日の沈むことのない大帝国を築き上げられたのは、あの島国のメシがまずかったからだし、中国がCenter of the world(中国)と称して万里の長城の内側に長らくこもっていたのも、かの国のメシがうまくて、外に出ずとも事足りていたからです(独断と偏見)。

また「考える」方向に進化しているヒトにとって「考える」以外の分野は、生きていくのに、さらには種の存続に不可欠である三大欲求ですら、効率化をどんどん図っていく方向にある(昨今の性欲処理と不妊治療分野の進歩を見よ!)と思いますが、最後の最後まで食欲だけは効率化されないのでは、と考えます。

MKCはその人類史のコアの部分に信用・安定という付加価値を加えて世界中に提供しています。

ただ2022年度はインフレによりひたすら苦しんだ年ではありましたね。数字を見てみます。




営業利益が前年比マイナスで、営業利益率や、ROICやROE等の資本効率の指標の数字も過去10年で最低となっています。ROIC/WACCのスプレッドは、なんとか鼻先が水面から出ている状態ですね。

セグメント別でSalesとOperating Incomeの推移をみると、


Salesはアフターコロナで人々が家で調理をする頻度が減ったことと、中国でのゼロ・コロナ政策、ロシアでの事業をやめたこと等々で、Consumerセグメントは前年比マイナスとなっています。まあ、Make Sense。

Operating Incomeは両セグメントともマイナス。原材料や物流コストの上昇をカバーしきれていません。これらもあってか、株価もここのところ冴えていないですね。

CEOであるLawerence E. Kurzius氏からの株主へのレターの内容も、ちょっと歯を食いしばっている感が滲み出ています。

ただ長い年月で株式を持っていると、こういう『帝国の逆襲』的な期間はあるものです。同社の強みが崩れたわけではないと現時点では判断しています。

それでも14%の営業利益率をたたき出しているし、Pricingのアクションも手を打っているようなので、そのあたりを楽しみにしながら引き続きHold。

MKCを保有して、心を満たしましょう。

情報開示:この記事を書いている時点でMKC637株保有

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