2019年7月14日日曜日

令和の改新 その1 -始まりの終り-

「だから総一郎さん本人に聞くんです。伝言ゲームになった時点で真実ではなくなる。理不尽な形で犯罪に巻き込まれたとき、これまで聞いたことも見たこともない犯罪に直面したとき、社会の構造的欠陥に気付いたとき、私たちはいかにして不幸を軽減するのか。それには一人ひとりが考えるしか方法はないんです。だから、総括が必要で、総括するための言葉が必要なんです」
阿久津記者
塩田武士『罪の声』講談社文庫
今年の4月に、当ブログを始めて5年が過ぎました。

私はこのブログを続ける期間を、なんとなく20年と想定しています。なので最初の5年はプロローグ、まんなかの10年がメインパート、最後の5年がエピローグ、的に考えています。漠然としたものですけれど。


というわけで、プロローグが終了しました。ほぼ同時期に年号も変わり、新しい時代になりました。


よい機会なので、これまでの軌跡と今後の展望を総括します。



ブログ開始以前


藤巻健史氏の『藤巻健史の5年後にお金持ちになる「資産運用」入門』(光文社)を手に取ったのが2006年。これが資産運用への目覚めです。当時はまだ独身。最初に保有したリスク資産は、当時勤めていたグローバル・ヘルスケア会社(後に知ったのだが、連続増配等企業)のEmployee Stock Purchase Plan (ESPP)を通じて購入した株式。ちなみに、これ以前は定期預金口座すら持っていなかった。

それから藤沢数希氏の『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?-あるいはお金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』(ダイヤモンド社)を読んでインデックス投資なるものを知り、MSCIコクサイの投信(たしかステートストリート、当時はS&P500に連動する投信は無かった)を経て、ネット証券で取り扱いが始まったIVV、EAFE、EEM、それから1306等のETFを保有。これらを(比喩的にですが)永久に持ち続けるつもりだった。


きっとクールになりたかったのだろう。


そういえば某ファイナンシャルプランナーのセミナーを受けて、ユーロのMMFとかも持っていましたね。


やがてサブプライム金融危機で株価が暴落。


クールどころじゃない。きゃー、超円高、やっすーい!と喜び勇んで海外の南の島々へ行く同僚の女性陣が、まぶしくてまぶしくて涙なしでは見られない


あとで知ったのだが、同じころ、米国の投資銀行JPモルガンのCEOジェイミー・ダイモンが、別の投資銀行モルガン・スタンレーが三菱UFJから資金調達できたことを知り、「助かった!」とオフィスで絶叫する。(*1)


そう、サブプライム・バブルのころは、日本の銀行は、散々時代錯誤だのポンコツだの言われていたんだけどね。逆に米国の投資銀行は、称賛の嵐だった。それがね・・・


いまでも、またぞろ同じことが言われていますね。でも、ひょっとしてどえらいことが起こり、電子マネーが世界的にマヒして、やっぱ紙幣や、現ナマや、日本の銀行に頭を下げろー、てなこともあるかもしれん。


荒唐無稽ですかね。


でも、そんなんが起こったのがサブプライム金融危機やからな。荒唐無稽だったのは、したり顔の識者や経済評論家のほうやったんやで。


ネットや週刊誌でクールなことを言っている連中が創り出す常識は、うのみにしてはいけない。まったく容易い伝言ゲームや。くりっく きけん よんだら しぬで ・・・やな。(*2)


仕方がない、彼らも食っていかねばならぬ。


さて、かかる状況下、私は必死に保有するリスク資産を長期間持ち続けるに足る理由(グリップ力)は何かを考え続ける。


そもそもEEMの構成国の大半は、我が母国と同等か、それ以上の歴史と伝統を誇る国々だ・・・とすればだ、効率的な市場および市場価格の形成をさまたげる因習やしがらみ、迷信は日本と同等かそれ以上だ・・・なんでそんな国々の株価指数に投資しているのか? 


「新興国」ってのは誤訳とまでは言わないが、正しくないwordingだ。Emerging marketsとは、投資銀行やグローバル企業が新たにがっぽり儲ける場所という意味だ。ま、新興市場と訳すとマザーズとかと混同されるから、やむを得なかったのかもしれんが。


そもそもオレは、タクシン派と軍政がどういう関係なのか、何度聞いてもさっぱりわかっとらんぞ・・・


えっ、アイスランドが破たんする⁉ ちょっと前まで優等生と言われてなかったか? あの国はEAFEだっけ、EEMだっけ?


つぎはどこだ、ギリシャ? かの国に知り合いはソクラテスしかおらん。あ、よく考えたらプラトンの本、一冊も読んだことなかったな・・・ゾルバってギリシャ人だっけ?


単に「資本主義は成長し続け、株価はそれに追随する」というだけでは、実のところ道端で澄んだ目のこぎれいな身なりをした人から「キリストは復活する、神の国が近づいている、神を信じなさい、信じる者は・・・」と言われたくらいのグリップ力しかない。


順風のときはそれでいい。いったん逆風が吹くと・・・アナタも私も、たちどころにキチジローだ(*3)


しかし新聞や週刊誌、ネットから目を離して周りを見渡すと、苦悶する私をよそに、(すくなくとも日本では)人々はスーパーやコンビニで何事もなかったかのように毎日レジで列を作っている・・・Oh yeah, life is going on.


こうして自分なりに考えて模索した結果として、2011年に結婚式の資金にするためユーロMMFを清算します。そしてサブプライム金融危機からある程度株価が回復してきた2012年あたりから、米国をはじめとする連続増配等株式(ヘルスケア・生活必需品・バフェット氏が保有する企業中心)に投資を始めました。それに充てる資金は、保有していたETFをグリップ力の弱いもの順(1.1306・・・だってさあ・・・、2.EEM、3.EAFA、4.SPY)で売却することで得ました。


どうやってその投資方法にたどりついたかは『序にかえて』で述べた通りです。



念のため・・・『藤巻健史の5年後にお金持ちになる「資産運用」入門』も『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?-あるいはお金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』も、とても良い本です。非常に参考になったし、いまでも私の投資におけるベースになっています。


ブログ開始以後


ここからはThe 3rd Man's  Fundのポートフォリオの推移を見ていきます。なお企業名とティッカーコードを赤色で記載しているのは、後々放出した(一部放出含む、しかしリバランスのリロ・ホールディングは除く)企業になります。

ではブログ開始時の2014年4月のポートフォリオ





全12企業+1投信。コカ・コーラ(KO)が首位。こののち快進撃が始まるリロ・グループ(当時はリロ・ホールディング、8876)とドクターペッパー・スナップル(DPS)はまだ目立たない位置です。ふーむ、シェブロン(CVX)が4位だったのか。そういえばセブン銀行(8410)も保有していました。

ひふみプラス(9C311125)がいますね。これもいろいろ考えた結果でこの投信にたどり着きましたね。このあと一旦放出し、子供の教育資金のための作戦『汝の父を敬えで2015年から復活することになります。


次に2014年末のポートフォリオ。フォーラム仙台、なつかしいな。







全17企業。増えたのはP&G(PG)、ターゲット(TGT)、マクド(MCD)、エクソンモービル(XOM)ジェニュインパーツ(GPC)ゼネラルミルズ(GIS) 


このころは、ひたすら保有していない連続増配等企業を探しては、新規で獲得していった時期です。たしか構成企業数を30あたりまで増やしたかったはず。それがリスク分散につながると考えていました。それに純粋に調べて加える、という行為が楽しくなってきていました。ただ基本的に連続増配年数と配当利回りがよければそれでよし、というスタンスでした。


あのころの状況下でマクド(MCD)を押さえたのは、たいしたもんだ。またフィリップ・モリス(PM)の獲得を見合わせたのも、20年後の結果はどうあれ、自分なりに調べて判断を下せたのはGood。


またこの期間に起こった重要なこととして、世界各国・地域の人口動態を調べたことが挙げられます。


きっかけはジェレミー・シーゲル著・小林のりこ訳の『株式投資の未来』(日経BP)。そのタイトルのお題目である「未来の誰が(米国の)株式を買い支えるのか」というパートを読んで、うん、確かにねえと気になりました。ちょうどそのころ配信された山口正洋氏のメールマガジンに人口動態資料のソースのリンクがあったので、自分でいろいろ調べてみました。


これは私にとって大きなターニングポイントでした。


次に2015年末





全21企業。増えたのはマコーミック(MKC)、JMスマッカー(SJM)、ヘルメリッチ&ペイン(HP)、エマソン(EMR)。
日本管理センター(3276)減ったのはセブン銀行とKOの一部。


おお、MKCの登場ですね。ここでひとつのブレイクスルー。MKCは食品セクターとしてPER的には高く(初回獲得当時はPER23)、配当利回りは低かった(2.15%)。そのころはPER20以下、配当利回りはなるべく3%以上、に結構固執していました。なので私にとってMKCは、ビジネスモデル>PER20の縛り、となった初めての選択です。たぶん。これまでのところ結果は吉となっています。


またMKC獲得の原資はKOの一部放出から来ています。KOの負債の増加スピードに魂消たからですね。ここでふたつめのブレイクスルー: バフェット・ブランドを盲信するな、がありました。


印象的な出来事としては、勢いのある国フィリピンのスーパーの棚を見て回ったことですね(詳細はこちらのシリーズ)。


この1年で8876とDPSが株価的に大躍進しました。またムスメが誕生し、汝の父を敬え』作戦を発動しています。


では2016年末。この年はシン・ダイトーリョー誕生がきまりました。







全26企業。増えたのはローリンズ(ROL)、クロロックス(CLX)JT(2914)明光ネットワークジャパン(4668)、ステップ(9795)

この年は毎回株価が高すぎるなあ、とぶつくさ言いながら獲得していました。ここでROLが登場します。ROLは読者からその存在を教えていただいたのですが、MKCに続いて2つ目のビジネスモデル>PERの値となりました。こちらも、これまでのところ結果は吉となっています。


一方で日本株式にも積極的に投資を開始しました(参考記事『新たなる無謀』)。こちらでも試行錯誤しましたが、結局2014年に日本の人口動態を調べて危機感を持って考え続けたことが、投資先企業の選定につながりました。現在のところ結果は吉となっています。


このころから、保有企業を多くすること=リスク分散という考えに違和感を感じ始めています。

そして2017年末






全27企業。増えたのはA.O.スミス(AOS)

仕事はテキトーなのだが子育てはそうもいかず、ワイルドワイフも二人目を妊娠したので、コア企業と題して、きちんと業績をフォロー(アニュアルレポートに目を通すという意味)する8社を選定しました。なんせ時間がない。上記グラフのオレンジ色がコア企業。


そのほかは放置でいいや、との判断。とうとう8876が追加投資なんぞ一切していないのに首位打者になっております。


2018年末




全22企業。


2018年は、波乱の一年でした。まずDPSが買収されることになったので、泣く泣く放出。
以後、「スレッジハンマー作戦」と題し、ポートフォリオのリストラを行いました。ハンマーで叩き出されたのは、4688、GIS、3276、TGT、2914、XOMでした。

リストラの理由は、二人目の誕生で、もうえらいこっちゃ状態になったのと、5月に農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)の方々との座談会があり、その運用理念に強く影響を受けたことになります。


私がMKCやROL(たまたまNVICの農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドとかぶっている)を保有することによって得た成功体験、つまり株価の結果がどうこうというより、その展開するビジネスが良いと思えば思うほど、株式を持っている満足感が強まるなあ・・・と漠然と抱いていた実感を、NVICの方々に明確に言語化していただいた印象です。


これにより投資方針を改訂しました。配当や株価の指標より、事業内容とそれが生み出す価値に重きを置くように変化しました。

また農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドの月次レポート等をフォローすることによって知りえた企業であるインターナショナル・フレーバー&フレグランス(IFF)とゾエティス(ZTS)が新たに加わっています。

最後に2019年の6月





計22企業。連続増配 < 事業の内容・及びそれが生み出す/生み出すであろう価値、という考えになったので、連続増配の縛りを撤廃。結果、トロ・カンパニー(TTC)、アーロンズ(AAN)、ペットIQ(PETQ)が加わり、SJMとCVXが放出されました。GPCも放出されています。

またそれ以後もフロントドア(FTDR)とアリアケジャパン(2815)を新規獲得しています。

以上がブログを開始してからの軌跡になります。

情報開示:面倒くさいのでSkip

(*1) アンドリュー・ロス・ソーキン 『リーマンショック コンフィデンシャル 下』 加賀山卓郎・訳 ハヤカワ ノンフィクション・・・へえ、これ加賀山氏が訳してたのか・・・

(*2) グリコ・森永事件の犯人グループによる「どくいり きけん たべたら しぬで」のもじり。

(*3) 遠藤周作の名作、『沈黙』にでてくる登場人物。彼の象徴的なセリフ:俺を弱か者に生まれさせておきながら、強か者の真似ばせろとデウスさまは仰せだされる。それは無理無法と言うもんじゃい。

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