2019年7月27日土曜日

令和の改新 その2 -靴の中の小石- 

 I have a stone in my shoe. You can remove it.
   
   『Godfather part III』ドン・アルトベッロのセリフ

 変えられないものを受け入れる安らぎ、
 変えられるものを変えていく勇気、
 この2つを見分ける賢さを与えたまえ

 説教師ラインホルド・ニーバーの「平穏の祈り」、 ポール・ウェイド 『プリゾナートレーニング 超絶‼ グリップ&関節編』 山田雅久・訳 CCCメディアハウス

前回の記事『令和の改新 その1 -始まりの終り-』で書いたように、当ブログを開始してから5年が経過しました。

この期間の株式投資の経過を一言で評価すると、「上出来」です。


きちんと計算しているわけではありませんが、手数料や税金を考慮しても定期預金を大きくアウトパーフォームしていることは間違いないです。なによりマーケットから退場をしていません。これだけでEnoughです。

もちろん過去5年間は、株式相場環境が順風満帆だったので、追い風(それも甲子園球場の浜風並みの強風)参考記録ではありますが。


一方で悪かった点はと言いますと・・・


あまりにも放出企業が多かったですね。買収されたドクターペッパースナップル(DPS)と、ポジティブにポジション調整を行ったリログループ(8876)を除いた放出企業は以下の通り。


コカ・コーラの一部(KO)

シェブロン(CVX)
エクソン・モービル(XOM)
ジェニュイン・パーツ(GPC)
ゼネラル・ミルズ(GIS)
JMスマッカー(SJM)
ヘルメリッチ&ペイン (HP)
ターゲット (TGT)
セブン銀行(8410)
日本管理センター(3276)
JT (2914)
明光ネットワーク (4668)

計12企業。


私が目指している理想の投資方法は、他の追随を許さない価値を生み出し続ける企業の株式を獲得し、ずっと持ち続けるというものです。それが、このザマだ。


なぜこんなことになったのか。放出した理由を、怒りを込めて振り返ろう。Look back in anger, I heard you say.


1. 誰かさんが持っているからという理由だけで獲得したもの

 
KOがこれに該当しますね。その誰かさんってのは、もちろんウォーレン・バフェット氏。これじゃあ株式を保有し続ける理由になっていない。

2.その企業が提供する製品やサービスを受ける人々の、喜ぶ顔が想像できない


CVX、XOM、HPです。もちろんこれらの企業は現在の人々の生活に豊かさをもたらしていることは理解しているのですが・・・私の想像力の限界ですね。おまけにレイ・ダリオ氏的トップ・ダウン・アプローチは、私にはサイズがあっていなかった。国際政治や情勢を追いかけるのは嫌いじゃないんだけど、それと株式投資は別。


銀行や保険などの金融や、ハイテク・IT・ゲームなどの企業は検討の対象すらなっていませんね。こやつらが人々にどのような笑顔をもたらしているか想像できない。


なぜならば、これらの企業がもたらすサービスは、確実に私の人生を複雑かつ不幸なものにしているからだ。


ファミコンよりも昆虫採集やジュニア版世界文学集に夢中だったせいで友達が少なかったし、保険なんぞに入っているせいで年末調整なんてつまんねーことをやらなきゃという妙な義務感に苛まれるし、パソコンやインターネットやらのおかげで書かなくてもいいブログをせっせと書く破目になってしまっておるではないか。


貴重なオレの自由時間を奪いやがって・・・IT革命がどうのこうのなんてうそぶいている場合ではないぞ。


3.連続増配当という理由だけで獲得した企業。


言い換えると、ティリングハスト氏が言うところの「特徴」、ピーター・リンチ氏が言うところの「クレヨンで描けるもの」がない企業。


GPC、GIS、SJM、8410、4668が該当します。これらの企業は例えば数十年増配中だったり、営業利益率やROEの値がずっと高かったりする。しかし彼らにはマールボロがない。圧倒的なブランド力がない。他の追随を許さないユニークさがない。
あくまで私の判断だが。

SJMとかは個人的な嗜好にぴったり合致する企業なんですけどね・・・


***


以上に述べてきたことの逆をすると、わたくしなりに長期保有できる株式の条件が見えてきました。簡潔に述べてみましょう。


1.はじめにビジネス(事業)ありき

  
そりゃ、そうでしょう。だれだって中古の車を買うときはタイヤを蹴っ飛ばしてみるし、住むための家を買うなら現地を訪れたりモデルルームを見学したりします。

株式を獲得するんであれば、その企業がどんな事業をしているかを知っておかないとだめです。
過去の値札の推移と保有コストだけを見て判断する、なんて奇特な買い物やっていると、痛い目にあいますわな。

あ、べつにインデックス投資家を悪く言っているつもりはありませんけど。


2.次に好みありき


好みというとあいまいなので別の定義をすると、その事業が提供する製品・サービスを受ける人々の笑顔が想像できること・・・になりますね。


きつい労働後の一服、一日の終わりに浸る湯船、スパイスのきいたバッファローウィング、孫の帰省を心待ちにしながら磨く家具、待ちわびた退院の日、スーパーに並ぶパリッと新鮮なレタス・・・。その時々の人々の表情を想像できないと、長期で株式を持つことは無理です。


私の場合、ここが一番のキモですね。


3.ブランド力


もうね、そんじょそこらのものじゃなく、1.5秒で頭に浮かぶマールボロ(たばこ)やクロロックス(漂白剤)、レッドブル(エナジードリンク)級が望ましいですな。


コカ・コーラ自体はいいです。でもこのたびKOの出したエナジードリンクは、一年後セブンイレブンの棚に残っているかどうかは微妙な感じが・・・こりゃ、余談ですけど。


4.競合先の有無(そのカテゴリーの状況)


今いるところ敵なし、の企業がいいですね。


たとえばSJMですが・・・ペットフード・カテゴリーなんてネスレを筆頭に敵だらけなんですわな。


その点、これは『いざ・波』の構成企業になりますが、鎌倉新書(6184)やアイ・アールジャパン(6035)とかが、今いるところ敵なしに該当すると考えています。ただ、そういう企業は、ひっくりかえされるときは一気にひっくりかえるけど。


5.最後に数字


営業利益率やROA・ROE等の経営効率指標、増配の推移等をみて、その企業の強さを確認します。儲けてくれなきゃ意味がない。


以上が過去5年間、自分なりに試行錯誤しながら編み出してきた長期保有するに足る企業の株式の見つけ方になります。


そう、ブログ開始当初にこだわっていた連続増配当年数XX年以上!!のプライオリティが下がってしまいました。もちろんこれはこれで企業の強さを証明する重要な数字との認識は変わっていません。ただそれよりももっと見るべきポイントがあるということです。


***


こうしてみると、結果的にポートフォリオの構成企業はずいぶん偏ったものになるかもしれません。でも、長期投資を前提に個人で納得できる投資先を選定していくと、どうしたってそうならざるを得ないんじゃないかという気がします。

それでいいじゃないですか。


よく言われるように個人投資家は、一年、あるいは四半期、あるいはその日一日でアルファを狙いにいく必要はありません。S&P500やTOPIXを目の敵にする必要はないのです。そういう意味では、個人の投資はハナッから無敵なのです。なんせ敵がいないので。


敵がいないので敗けようがない。ということは、あらかじめ敗けた時の言い訳のために、指標やバリュエーションの技法や、セクターの分散にこだわったり、他人の御託を取り入れる必要はないのです。


あくまで自分が、
保有していて、ふふふ・・・満足、と思える投資先を見つけるほうが大事かなと考えます。個人なので、積極的に愉しむべきだ。

そして個人の長期投資においては、靴の中にはいった小さな石ころのような違和感を覚えたら、早目に取り除くべきです。長丁場、そのストレスたるや、甚大なものになる。


次回では今後の展望と、なぜ「令和の改新」と題してアーロンズ(AAN)、フロントドア(FTDR)、ペットIQ(PETQ)、トロ・カンパニー(TTC)、およびレストラン・ブランズ・インターナショナル(QSR)を獲得したかを記しておきたいと思います。


情報開示:この記事を書いている時点で8876x800株、KO238株、AAN128株、FTDR128株、PETQ60株、TTC94株、QSR35株保有

1 件のコメント:

  1. ありがとうございます。参考になりました。
    今後も更新を楽しみにしています。

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