2025年6月14日土曜日

ポートフォリオは円で見よ ースパークス・新・国際優良日本株ファンド 第17期ー その二次会

 「そうだね。外に残してきたものは死者であり、夜の闇に生きるなにものかであり、雨や風、雷、月、星、つまり自然だ。人間のなかに内と外という概念が生まれるのは ー 自意識のようなものが生まれ、内面が育っていくようになったのは ー 自分たちの手で家をつくるようになったことが大きかったんじゃないかと私は思っているんだよ」

松家仁之 『火山のふもとで』 新潮文庫

ゴールデンウイークに信州へ出かけたさいに、浅間山のふもとを舞台にした『火山のふもとで』を旅のお供の文庫本にしました。結局、帰りの新幹線の中で読み始め、それから約一か月半かけてじっくりとページをめくりました。

一つ一つのシーンが静かに丁寧に書かれているのですが、それらが丁寧に書かれれば書かれるほど、書かれていない場面が雄弁に語りかけてきて、それが静かに読み手の心の奥底まで沈殿してきます。

素晴らしい小説です。

最終章での、

建築は利用者とその時代によって、息を吹き込まれ、生かされていく。 〈中略〉 人と時間が、あの大聖堂を育てたのだ。

と主人公が達観している場面は、それまでの物語を読み終えた後だと、胸にじんわり沁みてきます。

株式投資もおそらくはそのようなものなのでしょう。人と時間が育んでいくものなのです。

2025年6月4日水曜日

ポートフォリオは円で見よ ースパークス・新・国際優良日本株ファンド 第17期ー その一

すなわち、株というのは毎日規則正しく上昇するのでも下落するものでもないということです。全くランダムに存在する特定の日に長期のパフォーマンスの大部分が決まってしまうだけの値動きが発生するのです。それを予めピンポイントで予測し、そこに前もって資金を振り向けるのは経験則上、非常に難しいと考えます。こうしたことから、常に腰を据えて株式市場に資金を投じているのが成功への近道であり、公募投信に投資する一般投資家の方々にも当てはまる心構えだと考えます。

スパークス・新・国際優良日本株ファンドの2024年9月の運用コメントより

昨年の夏あたりからムスコ(6歳)が野球に熱中するようになりました。MLBやNPBの中継があれば熱心に見入っており、今年から通い始めた小学校から帰宅すると、必ず在宅勤務中の私のところによってきてキャッチボールをせがみます。私も時間があれば10分ばかり付き合います。よい気分転換になり、眠気覚ましにもいい。

そして先週からとうとう近所の少年野球チームに入団しました。同じクラスの友人の父親がコーチをやっています。学校のグラウンドや河川敷で練習をしており、これからいろいろ手伝い等もあって週末の時間がとられそうです。

というわけで、私用のグローブも購入しました。ほかにもムスコのアンダーストッキングやバッグ等々イニシャルコストがけっこうかさむ・・・本当のところ、私は新しいテニスラケット(2019年版ヘッド・ラジカルを使用中)が欲しいのですが、そっちの望みは霞む・・・😢




2025年5月30日金曜日

カジノにおける長期投資Big Shotsの動向 -2025年1st Q-

There's so many different worlds 

So many different suns

And we have just one world

But we live in different ones

Dire Straits『Brothers In Arms』


一言で株式投資といっても、いろいろな手法があります。個別株式か投資信託か、アクティブかパッシブか、デイトレかスイングかバイ&ホールドか、順張りか逆張りか、ロングかショートか、グロースかバリューか、etc...

ときにはその手法は投資ではなく投機だ、という論争も見かけます。ただその定義の違いは、100人いれば120通りほど存在するようです。

私としては、これらの違いはどうでもよいものと考えます。グロースとバリューなんて単なるマーケティング用語にしか過ぎず、つまるところは同じではないか。価格しか見ていないのであれば、機を見てドカンとやろうがコツコツと積み立てようが、資本投下の時間軸が違うだけで結局のところ投機なのではないか。

そんなところの区別化に拘泥せず、要は自分が納得する手法をとればいいだけです。

ただ世間一般的に「投機はよくないもの」という暗黙の了解めいたものがあるのが、ちょっと気になります。

なぜだろう。

なぜ人々は「それは投機だ」と言われると後ろ指さされたような気分になるのだろう。

どうして「コツコツ投資家の夕べの集い」と「コツコツ投機家の夕べの集い」があるとすれば、前者の方がまともに見えるのだろう。

この投機に対して含まれる蔑視めいたもの・・・これは投機筋のせいでモノ(例えばお米とか石油とか)の値段が上がった、とかいう語り口でニュースが流れるからでしょうか。それとも私の気のせいにすぎず、そんな風潮は存在しないのだろうか。

いずれにせよ、株式投資の市場を照らす太陽は、たくさんあるようです。市場そのものは一つですが。


2025年5月10日土曜日

3RDMANからの手紙  FY2025 - 2

 何もしないことは、あらゆる悪徳の始まりであり、あらゆる美徳の頂点である。

カフカ 『カフカ断片集』 頭木裕紀・編訳 新潮文庫


長期投資という運用方針はすばらしいものだ。経済に好不況の波があっても、買うか売るか、白か黒かに思い煩う必要はなく、自分の投資がどう展開していくかを見守っていればいいだけだからだ

by アンソニー・ナット、Roald W.Chan 『価値の探究者たち』 山本御稔・小林真知子・訳 きんざい

 

FY2025は、過去10年のなかで一番トレード(株式の売り買い)の少ない一年となりました。それでも年度の初頭に"Never Sell, Never Again"と宣言した割には、全放出の株式もあったのですが。


3RDMANからの手紙  FY2025 - 1

  価値か利益かというのは、誤った選択です。卓越した財務パフォーマンスは、価値創造を反映しています。もう一度言いましょう。価値を考えれば、利益は後からついてくるのです。

フェリックス・オーバーフォルツァー・ジー 『「価値」こそがすべて!』 原田勉・訳 東洋経済新報社

 

"Exactly!  Bingo!  That's what I've learned.  Stocks follow earnings!"

- Will Danoff 

William Green 『RICHER, WISER, HAPPIER』SCRIBNER

 

The 3rd Man's  FundのFY2025(May 2024 - Apr 2025)が終わりました。『次の10年に向けての雑文(1) ーカタリストとしての株式投資ーで書いた、「次の10年」の初年度が終わったことになります。

4月末が年度末という設定は中途半端な印象ですが、このタイミングだと投資している米国企業の最新のアニュアルレポートをすべて目を通し終えていて、日本企業もeBASE以外は決算発表も終わっているので、私にとってはいいタイミングです。なによりも、このさわやかな初夏の日差しの下では、自然とポジティブな気分になれるのがいい、と実感している次第です。

株式投資を愉しむには、ポジティブなマインドセットが一番大事ですからね。

この記事を書いている時点で外は雨だったりするのですが・・・


2025年5月2日金曜日

FY2025 第四四半期レポート - Stage 04/40 -

I've always said if you spend 13 minutes a year on economics, you've wasted 10 minutes.  I deal in facts, not forecasting the future.

- Peter Lynch

「紳士とは、払った税金と寝た女について多くを語らない人の事です」

村上春樹 『独立器官』  


伝説的なファンドマネジャーのピーター・リンチ氏によると、経済の展望についての考察に13分使ったとすれば、10分の時間を無駄に費やしたに等しいとのことです。

当該期間の2025年2月~4月にかけては、どこかのダイトーリョーのおかげですっかり経済の見通しとやらがわからなくなり、株価も乱高下しています。(乱低下と言った方が正しいかも)

ただしリンチ氏が述べたように、経済の見通しがどうのこうのというのは、それこそジョージ・ソロス級の能力でもない限り、あるいは居酒屋でワイワイ楽しむのでもない限り、時間の無駄遣いなのでしょう。

やっぱり、

株式投資家とは、株式にぶら下がっている値札と経済について多くを語らない人の事です
というスタンスでいるのがよろしいかと思います。成功している著名な投資家は大抵そうであり、出版物やメディアで稼ぐ“投資家”は、その逆を行っている気がするな。

ま、リンチさんは「10バガー」という言葉で有名ではありますけれども。

2025年4月29日火曜日

ロスト・ワールドの覇者 その2 - WSOのFY2024 -

As a leader of one of those families so succinctly put it, when you join Watsco, “you’re not swallowed by a big fish, instead you get to swim with a school of fish.”

2024年度のWSOのアニュアルレポートより

日本の夏は今年も暑くなりそうです。米国はどうなのでしょうか。


2025年4月23日水曜日

暁のZ作戦・その2 - ZTSのFY2024 -

今から約2年半前に発売された科学雑誌『ニュートン』の2022年10月号に、ふたつの注目すべき記事があります。

ひとつは『世界を襲う未曽有の干ばつ』と題された特集です。新たに注目され始めた「フラッシュ干ばつ」がとりあげられ、それがもたらす大規模な森林火災のリスク等々が書かれています。今年に入り、岩手県や瀬戸内で大きな被害をもたらした山火事が発生し、また国外でも韓国やロスで大規模な火災があったのは記憶に新しいところです。

もうひとつは『人口80億人時代のファクトブック』という特集の中で述べられている「タンパク質危機」です。2025~2030年には食肉の供給が需要に追いつかなくなることが予測されていたようです。

いまのところコメ騒動が大きな話題になっていますが、そのうち肉や魚も話題になるかもしれません。10年後には、吉野家の牛丼はおいそれと手を出せない超高級料理・・・かも。

その貴重なタンパク源であるウシ・ブタ・ニワトリ、それからサーモン等々の健康を守るアニマルヘルスケアのZoetis Inc.の24年度を確認します。




2025年4月18日金曜日

品ぞろえとスピードこそが価値の源泉 - HDのFY2024 -

どこかのダイトーリョーのおかげで、仕事もいろいろ身構えないといけないことが増えてきました。私の仕事のUS本社でのカウンターパートは米国南部のおばちゃんで、いかにもGo Trumpな感じの人なのですが、ここのところ“いくらなんでも、こりゃ、マズいんじゃ・・・やっちまったかな”という若干ひるんだ雰囲気を漂わせるようになっています。

ただ我が社の場合では、生産拠点のUS回帰という観点で見ると、ダイトーリョーの目論見通りになってきています。

ではThe Home Depot, Incの24年度を確認します。



2025年4月13日日曜日

MonotaROの第25期レビュー

私は、自分がやっている仕事は、基本的には価値を創造することだと思っています。 

‐ 瀬戸欣哉 株式会社MonotaRO 取締役会長(2015年当時)

川北英隆/奥野一成 編著 『京都大学で学ぶ企業経営と株式投資』 きんざい


MonotaROの第25期の有価証券報告書が出たので確認です。

第25期中間報告書より