2020年6月2日火曜日

河を渡って木立のなかへ ートラクター・サプライ(TSCO)の獲得-

みなさま、もし資産運用がうまくいって、もうあくせく働くことなくのんびり暮らせるとなったら、どういうところに住みたいですか?

静かな自然のなかでしょうか。 それとも便利でおしゃれな都会でしょうか。

私は自然(田舎)派ですね。

でも田舎といってもいろいろあります。 山があれば海もあり、田んぼが広がる農村があれば、広々とした酪農地もあります。

私は信州の安曇野や八ヶ岳周辺のような高原に憧れます。これは私が米国に留学していたところがそのような場所に近かったことが大きいです。その大学のある町の郊外では、結構な割合で馬が家族の一員でした。

私も欲を言えば、夏は高原でトレッキングやマウンテンバイクを楽しみ、冬は暖炉もしくは薪ストーブのそばの安楽椅子で読書三昧(寒いのは苦手だったりする)という生活が理想です。

現実は郊外の中途半端な場所のマンションなのですが・・・





そんな現実から逃避するため、アルトリアグループ(MO)を一部放出し、トラクター・サプライ(TSCO)を獲得しました。6月は定期獲得の月ですが、これは定期獲得ではなく臨時のアクションになります。

簡単にTSCOとはどういった会社かというと、


  • 1938年設立
  • 本社はテネシー州
  • ホームディーポ(HD)やLowe's(LOW)のようなホームセンターの田舎暮らし向けバージョン
  • メイン・ターゲットの客層は、アーバンエリアから離れた場所に暮らす、収入が平均より上で、なおかつリビングコストが平均より下の人々(つまりプロの農家や酪農家とはちょっと違うようである)
  • 2019年末時点で49州に2,024店舗(うち180店舗がペット専門店)
  • 一店舗当たり15,000から20,000SQFTの面積 (HDは平均105,000SQFT)
  • 一店舗当たりの製品点数は15,500~20,000
  • 32,000人の従業員(うちフルタイムはその半数)
  • 9年連続増配中

お店で取り扱っている製品は以下のとおりに大別でき、この割合はここ数年同じのようです。

TSCOのアニュアルレポートより

  1. ペットや家畜関連(ヘルスケア製品含む)
  2. 農村生活に必要なハードウェアー
  3. Seasonalとは、芝やガーデニング用品、暖房器具のこと
  4. 作業着 
  5. 農機具
トロ・カンパニー(TTC)の芝刈り機は、2.と3.のどっちかな?

同社を知ったのは、今年3月にHDを獲得する際、その強豪先はどんなところがあるのだろうと調べていたのがきっかけです。いわゆるひとつのNVIC方式ですな。

TSCOはアニュアル・レポートでも謳っている通り、田舎暮らしを楽しむ人々のニーズに応えることに特化して、HDやLowe'sのような競合他社と差別化を図っています。


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数字の確認(数値のソースはモーニングスター)。

RevenueとOperating marginの推移。


Cash Flowの推移。 


一株当たりの数字の推移。


経営効率の通信簿の推移。



全体的にB+(あんまりロジカルではない印象的な評価)。すごく目を見張る数字はないけど、安定感はありますね。

このグラフでは見えませんがCash flowでは、Debtの出し入れが毎年あります。個人的にDebtのジャグリングと呼んでいて以前は毛嫌いしていましたが、もう気にしないことにしました。

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獲得した理由は以下の通りです。

  • いまさら田舎暮らし向けホームセンターというニッチな市場に本格的に参入してくる企業があるとは考えにくい
  • HDと同じく、いやそれ以上に、アマゾンに対する抗体を持っている。
  • 米国での人口動態(参考記事『令和の改新 その4 - 巨鯨現る -』)
  • 米国でのライフスタイルの多様化(証拠としてLowe'sでは、田舎の店舗の売り上げが伸びている)
  • 田舎でのホームセンターは、定期的に訪れたくなる娯楽施設的な意味合いもある

さらには:

コロナウイルスによる在宅勤務の増加は、人々に居住場所はもっと自由でよいという気づきを与えた。よって米国での田舎暮らしを楽しむ人は、リタイア世代の増加も相まって、増加する。さすればTSCOのマーケットは今後有望である。

という仮説を立てております。

ついでにいうとポートフォリオの3つの作戦(参考『令和の改新、最終章 -作戦術の導入ー』)のうち、Operation Marsの戦力をいまのうちにもっと拡充させておきたいというのも大きな理由です。

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与太話的になりますが、ポートフォリオ内のひとつのセクター内に、ジャイアントとニッチ(正統派と曲者と言い換えてもいい)の2企業を構成するのが私の好みです。例でいうと生活必需品であればP&G(PG)やユニリーバがジャイアントで、クロロックス(CLX)やチャーチ&ドワイト(CHD)がニッチ。ソーダでいうとコカ・コーラ(KO)やペプシ(PEP)がジャイアントで、かつてのドクターペッパー・スナップルズがニッチ。

ホームセンターだと、HDやLowe'sがジャイアントで、TSCOがニッチ。

これらのペアを組んでポートフォリオを構成すると、なんとなく安心して眠れます。

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MOは、そのキャッシュを作り出す能力は捨てがたいものがあります。ただし私の中では:

マルボロマンがもたらす一服(価値) < TSCOがもたらす田舎暮らし(価値)

という評価になってしまったので、今回のトレードとなりました。ま、ながーく運用し続けるポートフォリオです。事業内容が個人の好みというのは、実は個人投資家にとって重要な要素だと思います。

けっして人にはお勧めできないですけど。

情報開示:この記事を書いている時点でTSCO42株、HD17株、TTC94株、MO245株、KO238株、CLX68株保有


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