2019年9月21日土曜日

令和の改新 その4 - 巨鯨現る -

「おーい、そこを行く船よ! 尋ねるが、白鯨を見なかったか?」
エイハブは叫んだ。

メルヴィル 『白鯨(上)』 千石英世・訳 講談社文芸文庫

令和の改新 その3 - 株式投資のメインストリーム -』で書いた通り、米国での人口動態の予測をさらに詳しく見ます。



【一つ目の潮流】

山口正洋氏の2019年6月17日配信のメルマガには、米国における年齢別のグループ(Cohort)の人口の推移予測表が載っていました。

それをそのまま使うのは気が引けるので、当ブログでは元のソースと思われるUnited States Census Bureauのサイト から取得したデータを使い、自分なりにまとめたグラフを以下で使用します。

ちなみに米国は:


  • 8秒に一人が誕生
  • 12秒に一人が死亡
  • 33秒に一人が移民としてやってくる


結果、13秒に一人、人口が増えている国です。トランプさんがいなくなると、移民が15秒に一人くらいになるんじゃないか。

さて、米国の人口予測(実績)を5歳ごとのCohortで集計し、年ごとに順位付けをしました。

注目は30‐50歳です。個人的な考えとして、現在の米国で一番お金を稼いで使うのは30歳台と考えています。なのでここのCohortを黄色でハイライトしました。またこれも私の推測なのですが、米国でも比較的裕福な層においては、仕事で余裕が出てくる年齢が以前より遅くなりつつあると感じるので、彼らの消費が増えるてくるのは40歳台かなとも(数値的な根拠はありませんが)考えます。なので、そこのCohortはオレンジ色にハイライトしました。これらをゴールデンエイジと呼びます。

まずは2016年からの5年を見ていきましょう。




令和の改新 その3 - 株式投資のメインストリーム -』で既に確認したように期間の後半に30歳代が順位をのばしてきています。それにしても直近は若い人が多かったのですね。20歳代が1・2位を占めていました。ただ50歳台も5位以内にランクインしており、世代交代の最中とも言えます。

若輩者と黄昏症候群がトップ5を占める…ここで言えるのは、米国での今後の消費ののびしろはまだまだあるということです。


次の5年間。




ゴールデンエイジが上位を占めてきましたね。50歳台はランクを下げています。

こののちのゴールデンエイジの順位の推移はとても興味深いものがあります。私は2050年までまとめました。当記事でいちいち5年ごとにたどっていくのは面倒なので、『米国の年齢別人口推移予測』のページを作成し、公開しています。興味ある方は是非ご覧ください。無料です。オレってナイスガイだろ。ただ力業で編集したので誤りがあるかもしれません。悪しからず・・・

この資料を見て、なにか投資に関するアイデアが浮かんだら是非コメントしてください。どのような投資手法であれ、オリジナルな考えであればAlways welcomeです。

もっとわかりやすくするため、Golden age + 50-54歳の人口(ランクではありません、人数です)の推移を折れ線グラフにしました。




!!!

Look!

2022年から2039年までの、青・赤・黄・緑が織りなす大きな波を御覧なされ。見えますか? 私には見える。深海で、あの大波を立てているヤツが見える。力強い消費エネルギーを生み出す圧倒的な存在が見える。

クジラ発見。

経済活動と株式市場における抹香鯨だ、レヴァイサンだ、それも特大の圧倒無比な巨鯨で白いやつ。白鯨だ! モービィ・ディックだ! 連邦の白いモビルスーツだ!

投資家諸君、これを追わずして何を追いかけろというのだ。直ちに捕鯨ボートをおろせ。一等航海士スターバック、まごまごするな、出撃だ。圧倒的な偏見をもって、あれを仕留めるのだ! 銛を打て!

屠ったあかつきには、たっぷり鯨油をしぼりとろうではないか。遥かなるナンタケットに帰還すれば、酒とバラの日々が待っているぞ。





さて、英語を母国語とし、それなりの教育を受け、法と秩序を尊重する国に居住し、なによりも透明性とフェアネスと競争を骨の髄まで叩き込まれているこの30~40歳代の人々は、なににお金を使うでしょうか。

令和の改新 その3 - 株式投資のメインストリーム -』でも書いたように、私は住宅関連に大きな需要が生まれると考えます。もちろん最先端のエレクトリカル・ディバイスやオートモビル、IT関連機器や教育の分野にも多大なインパクトがあるでしょう。しかし私には、そのときにそれらの分野のどの企業の製品やサービスが幅を利かせているかがさっぱりわかりません。

なので私の羅針盤は、住宅関連を指しています。持ち家志向の強さは日本人だけに限りません。基本的に世界中の人々がそうなのです。狙うべきはここだ、ここに白鯨は潜んでいる。

過去の人口動態を見ても顕著なように、ここのところの米国は、50歳と20歳台の人口が多かった。なので集合住宅の建築が多かったのですが、これからは戸建てにシフトすると考えます。現状、かなり不足しているんじゃないか、サブプライム金融危機のトラウマもあって。

あのときはゴールデンエイジ人口が黄昏ていたのに、住宅がやたら増えていたのですな。潮目はすでに変わっている。


もう一つの潮流


「船長、神が、神が、あなたに怒りを向けておられるのです。ここは、堪えて、引き返しましょう! この航海は不吉です。始まりも不吉だった。続きも不吉でした。わたしに転桁させて下さい。帆桁をまわして、この風を故郷への追い風にするのです。この旅を良き旅にするのです」

スターバックのセリフ、メルヴィル 『白鯨(下)』 千石英世・訳 講談社文芸文庫


まったくこのスターバックとやら、いつもいろいろ正しき屁理屈をのたまう煙たい存在。彼の名前を冠したカフェに、御託を並べるのが得意そうな連中が集まるのも、むべなるかな。

令和の改新 その3 - 株式投資のメインストリーム -』でも触れたように、上記の人口動態に加えて、もう一つの潮流が米国に現れています。

給料が、これまでのように上がらない。

こちらは詳細なデータは触れませんが、かの国での昨今の失業率の低さから考えると、もっともっと給料が過熱しても不思議ではないはず。それがここのところ平均時給が年率+3%程度なのだそです。ま、それでも3%あるのですが・・・。

山口正洋氏は、メルマガにてある見解を示されていますが、私もなるほどなあ、と考えます。であれば、今後も米国在住の人々の所得がどんどん豊かになるとは考えにくい。

逆風ですな。そう簡単には酒とバラの日々というわけにはいかない。

***

この2つの大いなる潮流を過大にも過少にも受け取らず、冷徹に見据えながら、白鯨を仕留めようではないか。というわけで、これらの観点から長期投資の対象として選んだのが以下の企業。個別ではまたおいおい詳細にみることにして、簡単に紹介。

フロントドア(FTDR)

シロアリ分野でローリンズ(ROL)の競合であるサービスマスター(SERV)からスピンアウトされた住宅メンテナンスのサービスを提供する企業。DIY精神が豊かな米国では、おそらくこれまであまりなかった分野。でも最近の住宅は、HVACから給湯器、食洗器、セキュリティ等々、素人では手に負えなくなっている。FTDRは、それらの保守メンテをホームオーナーと契約し、いざトラブル発生となったら、協力企業から適切なエンジニアを派遣する。

なにやらオウチというものは、何年かに一度の絶妙なタイミングでトラブルが発生するらしいので、契約の解約率は低いらしい。

これってバフェットさん好みのビジネスじゃないですかな。

現在のところ、がっぷりよっつの競合先は把握していません。

トロ・カンパニー(TTC)

芝刈機がメインではあるが、どのような製品を扱っているかは、日本語だとこちらをご覧いただくのが簡単。

獲得した理由は、米国では戸建て=庭付き=芝の手入れ、なので。

あと灌漑システムを扱っているのも魅力。

競合は、ディア(DE)、クボタ(6326)等々、ちょっといま手元に資料が無いけど、グローバルシェアNo.1は欧州企業だったように思う。ただ個人的に米国での地位はTTCが結構強いんじゃないかと考えます。

アーロンズ(AAN)

家具のリース。小売店を全米に展開。つまり家具までそろえるお金が無いけど、おウチでリッチな気分で過ごしたい需要にこたえるサービスを提供。すこし財布の中身が寂しい人向けですね。既述の2つ目の潮流を意識した投資になります。

現時点のおおきな競合先であるRent-A-Center(RCII)の数字を見ましたが、AANと比べると格段に劣ると判断。

AANはまだまだ順調に小売店を拡張すると考えます。ピーター・リンチさん好みの企業じゃないかな。

***

というわけで、私としてはかなり予測に基づいたアクションをとりました。上記企業の中では、TTCが一番グリップ力が弱いかな。

この判断がどうなるかは、20年後の楽しみですね。もちろん、あかん、と判断すればさっさと方針を変えますけど。

情報開示:この記事を書いている時点でAAN128株、FTDR128株、TTC94株、ROL241株保有 


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