この本に刺激される形で、株式投資におけるポートフォリオについて自分なりの考えをちょっと書いてみたいと思います。個別の株式長期投資(なるべく回転率低め)という前提で。
まずアマチュア個人投資家にとってポートフォリオは何のために存在しているか、ということをはっきりさせたいと思います。
それは断じて「卵を一つのカゴに入れるな」的な、投資先を分散することによるリスクマネジメントのためではありません。
うんちくを語るために存在します。バーボンをあおりながら、にんまりと笑うために存在するのです。ここのところを間違ってはいけない。プロじゃないんだから。
これが私の認識です。
***
それを踏まえたうえで・・・、山本潤氏が『初心者でも勝率99%の株ポートフォリオ戦略』で述べられている個人向けポートフォリオ運用について、かいつまんでまとまてみますと:
- 多様性が豊かな銘柄群により構成されるバランスの良い分散投資。
- 4銘柄以上、20銘柄程度まで(資産規模による。少ない場合はETFを活用)
- ウエイトは各銘柄ほぼ均等(10銘柄だと10%ずつ)
- 業種、および内需株と外需株のバランスに留意
- (業績や株価の)調子のよい企業・悪い企業も含める
- このポートフォリオは、多数の銘柄の集合体としてではなく、ポートフォリオというひとつの株式としてみなす
となります。ほかにセカンドプラン(Contingency plan)等々がありますが、そこは是非本を読んでみてください。
この運用方法が個人の投資家にとっていいのは:
- 株式投資で個人が回避すべき信用取引、集中投資、回転売買を避けることができる
- 一方の銘柄の費用が他方の売り上げになっている関係を作ることにより、リスクを下げることができる
- 結果、致命的な失敗を避けられる。そして長年市場に居続けることによってリターンを得ることができる
からとのこと。
なるほど。内需株と外需株のバランスという視点は面白いですね。
***
ついでに別のファンドマネジャーのポートフォリオに関する言葉を紹介してみます。片山晃氏との共著『勝つ投資 負けない投資』で、小松原周氏はこう述べています。
私がファンドマネジャーとして、ポートフォリオを構築する時に一番意識していることは、このような数学的な分散ではなく、「価値観の分散」です。
片山晃・小松原周 『勝つ投資 負けない投資』
ここで小松原氏が言っている「このような数学的な分散」とは、ポートフォリオ構成銘柄間の株価の相関係数とかを意識した分散です。彼はそういう数学的な理論よりも、それぞれの企業文化の違いに注目した分散に重きを置いているようです。なかなかいい。私的にはこちらのほうが本質をついている気がする。
一言で分散といっても、何に基づいてというところに、いろいろな考え方がありますね。
***
さて私が自身のポートフォリオを考えるときは、まず土台として次の言葉を強く意識します。
「だいじなのは個人を復旧することではない。集団全体を復旧することだ」とビリー・ビーンは言明している。ジェイソン・ジオンビーをもうひとりみつけられるはずがなく、無理に見つける必要もない。
マイケル・ルイス 『マネー・ボール〔完全版〕』 中山 宥・訳 ハヤカワ ノンフィクション文庫
ポートフォリオ内にスーパーヒーローはいらない。いや、いるに越したことはないけど、無理に見つけに行く必要はない。集団として機能すればいい。
このあたりは山本潤氏と似ていなくもないですね。
そのうえで私の場合は、現時点では、『令和の改新 その5 - 三つの巨鯨 -』で述べたように、大きく3つの潮流に沿って構成企業を選んでいきます。
Operation Mars (闘) - 米国の人口動態とその購買行動に的を絞れ -
現時点での保有企業:AOS、CLX、FTDR、HD、QSR、ROL、TTC、WMT、TSCO、MO(どの作戦にもそぐわないため、すでに戦力外通告済みのトレード要員)
Operation Jupiter(拡大と発展)- 世界的なミドルクラスの増加を追え -
現時点での保有企業:ABT、CARR、EMR、IFF、JNJ、KO、MCD、MKC、PG、ZTS、アリアケジャパン
Operation Pluto(死と再生)- 列島社会と人々の意識の変化を見据えよ -
考えてもみてください。よく言われるように個人投資家はプロに対して次の3つのアドバンテージがあります。
- 指数や他の投資家に対して勝つ必要性はない。そもそも無敵な存在である。
- 年ごと、四半期ごと、あるいはその日一日ごとの結果に縛られない。
- 構成企業の選択に制限がない。
3.ですが、ピーター・リンチさんがボヤいていたように、プロにはいろいろな制約があります。例えば時価総額がいくら以上の企業じゃないとダメとか、ある企業がオートフォリオに占める割合は3%以下におさえるとか、XXのセクターの企業は組み入れないとか・・・
私から言わせれば、そんなものはイザというときに顧客に対して使う言い逃れマニュアルに過ぎない。しかたがない、彼らはプロなんだから。
我々はアマチュアである。そんな窮屈な企業側の論理に影響されるのではなく、もっと心の赴くままにポートフォリオを作り上げていけばいいと思う。
私は上記の3つの作戦とその構成メンバーを見ると、ほんとうにワクワクしてくる。そして年次報告書(あるいはアクティブ投信の定期レポート)をウイスキー片手に読むのが本当に楽しみである。お気に入りの企業がポートフォリオの10%以上を占めたからと言って、それを3%に減らしたりはしない。私にはそんな自虐趣味はない。セクター分散なんて・・・そもそもセクターの分け方って、どこかの赤の他人たちが彼らの物差しで作ったものにすぎません。なんでそんなものにホイホイ従ってしまうのか、私には理解できない。
***
ピーター・リンチさんは、90秒で説明可能な企業に投資せよ、と言いました。そのとおり、と私は思う。そして私ならこう付け足す。
しかしポートフォリオは3時間かけてウンチクを語れるものにせよ、と。
それくらいの偏愛がないと、数十年の期間中ずっとマーケットに居続けるのは難しいと私は考えます。
***
構成企業の数というのも、各個々人のこだわりが出てきそうで、興味深いエリアではありますね。私の場合、現時点で28企業です。
多いか、少ないか?
個人的には興味を惹かれた企業があれば、どんどん付け加える方向でいます。管理が大変かというと、そうでもない。なんせ、構成企業のすべての年次(四半期)報告書に律義に目を通す義務はない。
何か業績に大きな変化があったとき、あるいは今回のCovid-19のような状況になったときにピンポイントで気になる企業の報告書を見るくらいで充分です。JNJやKOのレポートなんて、 annualじゃなくてdecadeでいいと思う。
***
ここからは余談・・・古い(2011年2月)ですが、経済評論家の山崎元氏は『株式ポートフォリオの銘柄数について』という記事で以下のように書かれています。
投信の場合でいうと、顧客はせっかく「小口の資金でもできる分散投資」のメリットを購入するのだから、少ない銘柄数で「これがアクティブ運用だ!」と開き直るのは、純粋に運用の問題としては、リスクの計測を知らないか、横着であるかのいずれかだろう。たとえば、「いい銘柄を30銘柄集めてポートフォリオを作りました」と言うファンドマネジャー(二昔くらい前はよくいた)は、「同じ位いい銘柄を100程度集めよ。仕事をサボるな!」と言われたら、反論のしようがないはずだ。
なんでこんな古い記事を覚えているかというと、当時私はコモンズ30という投資信託を持っていたからなんですね。たしか同投信の設定は2010年あたりだったかな。なので一受益者として私個人的には、上記記事は山崎さんがコモンズ30にシュートを仕掛けた(プロレス用語)と受け取っていました。
山崎さんは分散投資の一環として日本株式と外国株式のウエイトを40%:60%でもつのがいい、そのうち日本株式はTOPIXに連動するインデックス投信(ETF)がおすすめ、と言っていた記憶があります。
せっかくなんで過去10年間のコモンズ30の基準価格とTOPIXを比べてみよう。
Yahoo! Financeより、青線がコモンズ30で、ピンクがTOPIX |
おやまあ・・・
そんなはずはない、われらがヤマザキは正しいはずだ。分散が行き届いているTOPIXが、仕事をさぼっているファンドマネージャーたちの投信に劣後するがない。きっとパソコンが壊れているんだろう。
日本だけではない。世界にはもっと悪い奴らがいる。ヤマザキ氏の代わりに私が言っておいてやる。
オイ、バフェットにアックマン、おまえらの持っている株式はせいぜい10企業かそこらだ。横着にもほどがあるぞ‼ 100くらい集めろよな!
オイ、バフェットにアックマン、おまえらの持っている株式はせいぜい10企業かそこらだ。横着にもほどがあるぞ‼ 100くらい集めろよな!
しかし、ま、そのへんの論争は業界側の論理に過ぎぬ。私はアマチュアだ。のんびり好きなようにやらしてもらう。
情報開示:面倒くさいのでSkip
分散も過ぎたるは及ばざるがごとし。
最近ぱらぱらっと読み返したら『勝つ投資 負けない投資』は、とても奥行きが深い本でした。
参考図書
0 件のコメント:
コメントを投稿