グリーンバーグたちはフレディ・マック(Federal Home Loan Mortgage Corporation)とファニィ・メイ(Federal National Mortgage Association)に見られるような、「複占」が気に入っている。そこでは二社が熾烈な競争をするということがなく、そして特に価格競争はせず、それぞれが高い資本利益率を維持している。
ブルース・グリーンウォルド他・著 『バリュー投資入門』 日本経済新聞社
FY25第二四半期末時点でのThe 3rd Man's Fundの中堅どころに位置する、モーターサイクル用プレミアムヘルメット・メーカー、株式会社SHOEI(7839)の第86期の決算が出ましたのでクイックにレビューします。
初回獲得は2023年の11月。
2022年12月に開催された『Aurea 人生と投資の会II』第149回サロンに参加したことがきっかけで投資対象として認識しました。
Topの数字は前年比+6.5%。売り上げの約8割が海外なので為替の追い風も多分にありますが、それよりも単価の上昇だけで販売数量減をカバーしているのがよいですね。過去10年のCAGRは9.7%。
為替は原材料費の押し上げ要因にもなりますが、この単価の上昇もあり営業利益率は28.9%。営業利益の過去10年のCAGRは12.4%。
ROICとWACCのスプレッド推移(私の計算なので正しくないと思います😅)。
欧州でのスポーツタイプヘルメットの需要減に苦しんでいた第57期を除くと、企業価値を積み上げていっています。
ちなみにROCEの過去10年のMedianは28.3。(これも私の計算なので正しくないと思います😅)とくに21年以降は30の大台越えをキープしており、これらはやはり『Aurea 人生と投資の会II』でも触れられていたように、不断のカイゼンの努力と質を訴求した結果のブランド力の蓄積が功を奏していると思われます。
営業CF対投資CF比率も、調べた限りではありますが第57期以降全部ポジティブです。Free Cash Flow per Shareの推移。
ちなみにスパークス・企業価値創造日本株ファンドの2024年1月の運用コメントで指摘されていた総資産に対する現預金の割合は、44%と高い状態をキープしていますね。
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数字的には全然文句ない(ま、現預金の割合は、べつにええじゃないか・・・)ですが、さらに良いと思えるのは、その市場の状況です。
同社のホームページによると、同社は世界のプレミアムヘルメット市場の60%以上のシェアを占めています。
そして残りの40%のうちの30%は株式会社アライ・ヘルメット(非上場)によって占められているようです(ソース『日本が世界シェア9割!? バイク用ヘルメット2大メーカー「SHOEI」「Arai」のルーツとは』)
つまり日本のメーカー2社でほぼ独占、というか複占状態です。
複占状態が良いと思うのはですね・・・独占だと往々にしてワキが甘くなって一気にひっくり返されたり、規律が緩んで組織的な不祥事を起こしたり、なんてことがあるのですが、複占の場合ライバルの存在を意識して切磋琢磨せざるを得ないので胡坐をかく暇はないし、新規参入を試みる企業ものっけから2大怪獣を相手にすることになり、おいそれと手を出すわけにはいきません。
というわけで、株式を長期で持とうとするオーナー目線で見ると、複占のほうが安心ですかね。
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現時点では、株式放出判断のチェック項目に対しては:
- 事業の参入障壁の高さを見誤ったと悟ったとき ⇒ 依然として障壁は高い
- ガバナンスがあきらかにおかしいと感じられたとき ⇒ 問題なし
- 修正が効きにくいと思えるリスクをとったとき ⇒ 問題なし、もう少しとってもいいくらい
- おおきなDebtを伴うM&A ⇒ なし
- 関連性の薄い多角化 ⇒ なし
- 壮大なビジョナリープランの策定 ⇒ ほら吹きとは真逆な姿勢
- 事業において修復不可能な棄損が認められたとき ⇒ なし
- 継続的(3年をめど)なROCEの低下 ⇒ なし
- 継続的(3年をめど)なマーケットシェアの低下 ⇒ ないと思われる
というわけで、引き続き悠々とホールド。
売り上げや利益は、時々の景気や政治情勢等々で当然ブレます。しかし同社の本質的な企業活動を見据えると、世にもたらす付加価値は一貫して増え続けているのではないでしょうか。
株価的にはFree Cash FlowのYieldが6%程度となっており、これは2015・16年あたりのレベルなので割安なんじゃないかなあと思ったりします。
ですが、先日洗濯機がぶっ壊れ、型式が古すぎて修理もできないことが判明して新たなものを買う必要が出てきたので、とても投資に回せる余裕なし。
ギムレットには、まだまだ早すぎるね。
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