2014年8月1日金曜日

配当、自社株、そして負債

"生きる歓びとは、払った金に相応しい楽しみを確保し、それだけの価値のある楽しみを見きわめることにある。その人の意識しだいで、払った金に相応しい楽しみを得ることは可能なのだ。この世は金をフルに生かして食い込むには格好の場所だ。"

ヘミングウェイ 『日はまた昇る』 高見 浩訳 新潮文庫
過去のエントリーで何回か、特にPMについて書いたときに触れましたが、最近稼ぎに対し、どれだけの割合で配当や自社株買いが行われているかが私の中でホットな話題になっています。

配当はわかるのですが、自社株買いというのがいまひとつピンとこない。よく米国の企業は自社株買いをやるから長期投資に向いている、という賛辞があるのですが、手放しで褒め称えていいのかなあ。

というわけで、まず調べてみました。以下はウィキペディアのShare Repurchaseから得た私の理解です。

企業は利益を主に2つの方法で使います。一つ目は配当、もう一つは事業への投資です。自社株買いは配当の代替行為にあたります("Share repurchases are an alternative to dividends")。自社株買いをすると発行済み株式数が減るので、利益が同じであればEPS(一株当たりの利益)が増えることになります。

おもしろいことに、株式ホルダーの大多数が個人投資家の企業は、自社株買いで利益を得ることが多い、と書いてあります。なぜならば、これらの個人投資家は洗練されていないので、株価がUndervalueのときに嫌気がさして安値で保有株式を売り払う傾向にあるからだそうです。だからそのとき売らずにいる株主が、その分利益を得るんだって・・・フム。

逆に株式ホルダーの大多数が、洗練されている機関投資家の場合は、自社株買いではそんなにおいしい利益を得られないとのこと・・・ふーん。

投資家は配当をカットされると激怒するけど、自社株買いが当初の計画より下回ったとしても、さほど怒ったりしない習性があります。ですので利益が十分あるときは、自社株買いを行うことによって配当の支払いを抑えておき、いざそんなに利益がない時は、自社株買いを少なくすることによって、配当のレベルを落とさずに済むようです。

つまり自社株買いは、株主に怒られないようにするためのバッファーというか調整弁のような役割があるみたいですね。

また企業家が自社の株式が安すぎると判断した場合、自社株買いをすることにより将来の売却益につながる可能性があります。それに企業家の自社に対する自信のほどを市場に示す効果も狙えます。

気をつけないとならないのは、多くの場合において、企業のExecutiveの報酬はEPSターゲットに連動していたり、Stock Optionという形をとっているので、自社株買いがExecutive自身の利益のために行われている可能性があるということです。

過去何回か見てきたようにPMはどうみても配当と自社株買いを行うため負債を増やしていますからね・・・私なんぞから見ると不健全に思われます。

で、今回は稼ぎ(Net Cash Provided by Operating Activities)に対して自社株買いや配当がどれだけの割合を占めているか、および負債の動向を過去5年間にわたって複数の企業で調べてみました。

以下のグラフの元データは全てモーニングスターのサイトから得ています。負債の単位は$million。(追記、グラフにうまく表れていないのですが、赤い折れ線グラフが稼ぎに対する配当への支払いの%です。)

まずは5月に御大バフェットから物言いをつけられたコカコーラ(KO)。


借金が右肩上がりですね。低金利を利用した戦略的なものだったらいいのですが。2011年以降、自社株買いが増えてきて配当と二分しています。こんだけダラダラ自社株買いだと、もはや惰性で行っているような雰囲気もありますね。それともここのところずっと株価がunder value?

いずれにせよ、あんまりスカッと爽やかではないですな。

個人的に爽やかTastyに感じたのがジョンソンエンドジョンソン(JNJ)。
まず基本的に配当が自社株買いを上回っています。唯一逆転しているのが2012年。もうちゃんと覚えていないけど、2012年あたりは不祥事とかがあってJNJの株価がグズグズしていた記憶があります。

そういうときに、ここぞとばかりの自社株買い、やっぱ伝家の宝刀は太く・短く・力強く抜かなくっちゃね。2013年になって株価は上昇しています。お見事!

つぎはウォルマート(WMT)。


こちらも2010年に、どどんと自社株買いをしています。惜しむらくは基本的に配当より自社株買いが多い・・・WMTは従業員だけでなく株主にも厳しいのか!? ちょっとThe 3rd Man's Portfolioに占める割合が多すぎたかなあ。

タバコのアルトリア(MO)とフィリップモリス(PM)。

やはりPMはちょっとしんどそう。2011年を除き、自社株買い+配当が稼ぎの金額を上回っています。

意外なのはMOで、もっと自社株買いをやっているのかと思っていたけど、全然違いますね。儲けは全部配当でもっていきなよ、くらいの気前の良さです。ただ自社株買いがトリガーとなって負債が増えているようにも見受けられます。

最後にプロクター・エンド・ギャンブル(PG)。

なんとなーく増配を保とうとする努力が伝わってきますね。まあ、頑張れよ。

こうして調べてみると、ちょっと面白かったです。やはり長期的に投資するのであればJNJのような姿勢の銘柄が安心できますね。今後は企業の調査の際に、自社株買いと配当の推移も考慮に入れようと思います。

情報開示:KO430株、JNJ174株、WMT140株、MO180株、PG50株、保有


0 件のコメント:

コメントを投稿