“人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。矢張り向こう三軒両隣りにちらちらする唯の人である。唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりも猶住みにくかろう。”
夏目漱石 『草枕』 新潮文庫
米国のグローバル企業の世界地図(組織)の分け方は以下のものが多いように見受けられます。
市場規模によってUS/OUS(USとそれ以外)だけだったり、日本やANZ(Australia & New Zealand)がAPACから分かれていたりします。今後中国やインドの市場が成熟してくるのであれば、もっと多様性に富んでくるかもしれません。
EMEAってずいぶん強引かつ広範囲な括り方だな、と思っていましたが(ロシアもたいていここに含まれる)、最近の世界情勢とそのニュースをみると確かにヨーロッパは中東やアフリカ、ロシアとつながりが深いんだなと思います。
地図で見ると、地中海って日本でいうところの瀬戸内海くらいの規模感ですな。その昔は海の方が交通に便利です。地理的にも歴史的にも、アフリカと中近東はヨーロッパにとっては向こう三軒両隣です。
またヨーロッパは経済的に南米と深くつながっており、アルゼンチンがデフォルト騒ぎになると、はるばる大西洋を隔てた銀行が青色吐息になっていたりします。いまのところ狭いパナマ運河を隔てたところにある銀行は、そうでもなさそうですが。
となると、経済的にはEMEAとSouth Americaは密接な関係と言えます。つまるところヨーロッパ経済の向こう三軒両隣は、アフリカ、中近東、ロシア、南米となってきており、こりゃ我を通せば窮屈そうです。
こうしてみると米国は世界からけっこう隔離されてますね。そういえば、もともと米国は孤立主義を国是としていて、海の向こうの出来事には、われ関せずな国でしたね。その誕生の経緯から植民地主義に拒否感があったのかもしれないし、ただ単に出遅れただけかもしれないですが、結果的に他地域とのしがらみは少ないです。
でもウィルソン大統領が第一次世界大戦で宣戦布告するために“「民主主義のために、世界を安全にしなければならない」”と演説して以来(8/7、草野和彦氏の記事より、毎日新聞朝刊)、米国は、時には呼ばれもしてないのにノッシノッシしゃしゃり出てきて、いろいろひっかきまわした挙句、しばしば痛い目にあって去っていく、なんじゃらほい遊撃軍的な存在になっているように見受けられます。
所詮遊撃軍なので、反感は買っても、しがらみはあんまり残りません。だから我を通してもあんまり窮屈ではない。ほんとのところ彼らは成長し、変化し続ける自国内の多様性に対応するだけで手一杯なのではないでしょうか。
なんでこんなことをつらつら書いたかというと・・・以前に書いた通り、私は確定拠出年金でインデックス投信に投資をしているのですが、株式の商品がMSCIコクサイとTOPIXに連動するものの2種類しかなく(新興国の指数に連動するものすらない・・・まあ、これは勤め先の確定拠出運用年金プランの問題ですが)、また証券会社が扱っている投信も、例えばS&P500に連動するものがないからです。少なくともSBI証券と楽天証券では取り扱っていない。ETFならあるし、NYダウのものなら投信でもあるようですが・・・。
不満です。
私は米国がことさら好きというわけではないですが、米国株はあちらやこちらで書いた理由があり、またその人口動態から自国内だけでも頼もしい市場を抱えてて、なおかつ上で述べたように隣人からのネガティブなしがらみを比較的受けづらいので、投資先としては一番魅力的に思います。なのにMSCIコクサイというふうに一括りにされてしまうと、いろんなしがらみを背負うことになってしまいます。
インデックス投信も、S&P500に連動するものに限らず、もっといろいろ種類が増えないかなあと思いつつ、日々のニュースを追う今日この頃です。
情報開示:特になし
ちなみに日本の隣人中国ですが、基本的なスタンスとして彼らは米国とは別の意味で外の世界には無関心だと思います。
なんせ、中国はCenter of the Worldの意味ですから、わざわざ世界の中心の住民が外に出ていく理由がないのです。そんなもんは世界の隅っこにいる変わり者のイギリス人にでもやらせておけばいい。
かれらの姿勢が如実に表れているのが万里の長城で、あれは匈奴に向かって、頼むからここから入ってこないでくれ!いらんことをしないでくれ!という心からの叫びの表れなのです。重機なんぞ無い時代にあれほどの建造物を作ってしまうほど、その願いは必死だったと推察できます。決してあの長城は侵略の拠点ではありません。
中国の奥地での弾圧が問題になっていますが、中国人(漢民族)は、あの地域を押さえつけておかないと安心して夜眠れないのでしょう。その恐怖心は、もはやDNAレベルです。東・南シナ海に対する態度とは本気度が違うように私には思えます。
中国は、Younger Brothersである東アジア諸国に対しては、それなりに顔を立ててもらえればそれで満足なはずです。日本は得意の腹芸を生かしてElder Brotherを持ち上げておけば、労せずごっそりおいしい実が取れるんじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
うまくすりゃ、日本は米国と中国の双方からおいしい実をいただけます。そうなったら格さん・助さんに支えられた黄門様のようなもんです。たまに腹芸に疲れたら、人の世をいったん離れて、漱石さんのように桃源郷で温泉にでも浸かればいいんじゃないかなあ。
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