彼女は唐突に鋭く笑い、ドアを半分抜けた。それから首を曲げて振り向き、クールな声で言った。「あなたは私がこれまで会った中では、誰よりも冷たい血を持った獣よ、マーロウ。それともフィルって呼んでいいのかしら?」
「もちろん」
「私のことはヴィヴィアンって呼んでいいのよ」
「ありがとう、ミセズ・リーガン」
「あんたなんかくたばればいいのよ、マーロウ」、彼女はそのまま振り返りもせずに出ていった。
レイモンド・チャンドラー 『大いなる眠り』 村上春樹訳 ハヤカワ文庫 以下の記事の茶色の部分は同じ引用元になります。
レイモンド・チャンドラーの『大いなる眠り』の新訳が文庫化されたので、早速読みました。
"ロサンジェルスのダークサイドを歩く、シニカルで優しい孤高の騎士"(注)の私立探偵フィリップ・マーロウの長編初登場作品です。まだ若いマーロウがきちんとした身なりで訪れる依頼人スターンウッド氏は、地元で採れる石油で財を成した大富豪の死にかけの老人という設定です。
へえ、Los Angelesで石油が採れたんですね。知らなかった。映画産業が発展する以前は石油採掘業の土地だったようです。資本主義が最終的にたどり着いた、新大陸の西海岸にある金と欲望の街、Los Angeles・・・だからこそマーロウの出番が増えるってもんです。
で、その石油を含むエネルギーセクターは、ジェレミー・シーゲル氏が『株式投資の未来』(瑞穂のりこ訳 日経BP)で取り上げているように、1957年~2003年にかけてのリターンはS&P500のそれを上回っています。また資源銘柄の多くは長年にわたって増配をしています。
個人的な嗜好なのですが、あんまり資源を扱う企業の興味が持てません。でも連続増配当株式に長期投資をするうえで、やっぱりポートフォリオに加えないわけにはいきません。
現在私はシェブロン(CVX)を保有しています。これなんか適当に配当利回りの高さだけで選んだ銘柄です。しかし1銘柄だけだと、2010年のBPの流出事故みたいなネガティブインパクトをモロにかぶることになるので、少なくともあと1つは加えておきたいところです。
余談ですが、2010年はよく米国本社に出張していました。皆とカフェテリアで昼食をとっていると、テレビでBPの事故と株価下落のニュースが流れていました。それを見ながらあるオランダ人が「ねえ、BPってつぶれると思うかい?」とニコニコ笑いながら誰ともなしに訊いていましたが、その目は注射器を目前にした子供の目つきそのものでした。
きっと彼はBPを保有していたに違いない。思えばそのときが買いのタイミングだった。
人々が真剣かつ弱気な目つきで、にこやかに株価について周囲の反応を探りはじめたりしたときは買いの絶好のタイミングである・・・のかもしれない・・・今後の教訓にしておきましょう。
それはさておき、Dave Fish氏によるU.S. Dividend ChampionsのリストでPERが25以下、Div. yieldが2.5%以上で、なおかつオイルメジャー(旧セブンシスターズ) に絞るとコノコ・フィリップス(COP)とエクソンモービル(XOM)が選択されます。この2銘柄についてレビューしていきたいと思います。
オイルメジャー以外は・・・しんどいんで、調べる気力なし。投資方針にもそれは明記しています。
情報開示:CVX64株保有
ちなみにジェレミー・シーゲル氏の“成長の罠”をマーロウ風に言わせると以下の通りになります。
「誰がそう言うんだ?君と、表の車の中で待機している二人の拳銃使いか?ここはもうでかい街なんだよ、エディー。新顔のおっかないやくざがここのところ次々に参入している。成長の代償という奴さ」あのね、ジェレミーくんさ、きみもチャンドラーのファンだったのかい?
(注)村上春樹氏による訳者あとがきより抜粋
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