2018年10月13日土曜日

農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドの運用報告会

「情報源マーリンは」アレリンが、小さく、だがいかにもスコットランド人ならやりそうに、歯茎をすすってからつげた。「高位に置かれた情報源で、ソ連の極秘政策決定レベルにアクセスを持っている」そういって、特権階級にでもなったかのように付け加えた。「われわれは彼の情報を〈ウィッチクラフト〉と呼ぶことにした」
ジョン・ル・カレ 『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕』 村上博樹・訳 ハヤカワ文庫
今月初めに、私が個人型確定拠出年金(意地でも、あのダサい愛称は使わない。そもそもアイデコとしか発音のしようがないではないか)の一部で積み立てている農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドの第一回運用報告会が開かれたので、仕事もそこそこに終わらせて、六本木まで出かけてきました。


このファンドに積み立て投資をしている理由としては、その運用方針を信頼しているからというのがあるのですが、もうひとつ挙げると、日本の個人素人投資家がなかなか入手しづらい米国企業の情報を収集する格好のツールだからです。(参考記事『新たなる情報源 ー農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドー』)

なので、こういう機会は、逃すわけにはいかない。

午後6:30開始で、会場には約10‐15人程度の受益者の方が参加していました。

株主総会へは過去3回参加したことがあるのですが、投資信託の運用報告会っていうのは初めてです。ちなみに運用報告会は京都でも開かれたそうで、わざわざ東京から参加した方もいたとか。

もちろん運用報告されるのは、ファンドマネジャーの奥野一成氏。

奥野氏によると、投資をするにあたっては、対象となりそうな企業の沿革を重視します(このへんは日本中小型ファンドの苦瓜達郎氏と同じですね〔*〕)とのことで、しからばとばかりにNVICの成り立ちから話が始まりました。

ああ、こりゃ長くなるなと思ったとおり、話が長かった。

その後、投資している企業の話や、それらへの訪問の際のエピソード等の話になっていきます。基準価格の推移がどうたらこうたら、国際情勢がなんたらかんたらみたいな、私から言わせれば長期投資の本筋じゃない話がほとんどなかったのが、このファンドらしいところ。

面白く感じた個所の断片。


  • おカネに働いてもらおうなんて、ナンセンスもいいところ。おカネが働いているところを見たことありますか?
  • 買収が起こる = 参入障壁がある、なぜならその手段を使わないと、そのエリアに入っていけないから
  • B to BとB to Cの違い
  • 幼児用オムツと大人用オムツのビジネスの違い
  • 治療対象がヒトか動物かによる興味深い話と、そこにからむ生活必需大手


等々がありました。

いや、面白かったですね。いろいろ参考になりました。詳しく書きたいところではありますが、そこは参加したものの特権として、あえて開示しません。ふふふ。

時間がおしたので、休憩なしで質疑応答。あっという間の一時間半でした。

***

さて、この報告会で具体的に言及された企業の一つが、動物用医薬品のZOETIS (ZTS)。農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドの2017年10月の運用レポートに取り上げられていますね。おもしろそうだったので、ちょこっとだけ調べてみると…


数値のソースはモーニングスターのサイト

・・・なんですか、この営業利益率の高さと伸びは。

一見した限り、財務レバレッジの高さがちょっと気になるくらいで、その他の数字は素晴らしいように見える。

興味を惹かれたので、2017年度のアニュアルレポートを見ると、表紙はとってもフレンドリーな動物のイラスト。アメリカンなダサさはあるものの、とてもよい。ローリンズ(ROL)のやつより、よっぽどいい(参考『害虫防除がサイエンスの域に達するとき その4 - ローリンズ(ROL) -』)。





気分よく3ページ目まで進み、CEOの写真を見てコケた。




・・・いまどき、農家の家畜を紹介するのでも、もうちょっとマシな写真を使うぞ。


俄然興味を惹かれたので、アニュアルレポートを読み込んでみよう・・・いや、これ以上保有企業を増やす余裕はないのだけどなあ。


***


さて、話はもどって米国株式長期厳選ファンド。


こういうプロのファンドマネジャーが語る、投資や企業(それも米国の)のシビアなウンチクや投資対象企業への訪問時のエピソード(3MではCEOが出てきたらしい)が直接聞けて、なおかつ質問までできる機会を設けてくれる投資信託ってなかなかないと思われます。


もしアナタが、値札(株価・基準価格のみならず、信託報酬の0.XX%の差も含む)だけを気にして株式や投資信託を選ぶのではなく、投資対象の企業が生み出す価値や、それらを享受する人々や社会までを見据えながら長きにわたって投資を楽しめる人であれば、米国株式長期厳選ファンドは悪くない選択肢だと考えます。


いかがでしょうか。

情報開示:この記事を書いている時点でROL160株保有

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〔*〕苦瓜達郎『ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること』幻冬舎新書

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