2019年8月25日日曜日

令和の改新 その3 - 株式投資のメインストリーム -

汝、未来という冷厳なる幻よ、わたしは汝に戦いを挑む! おお祝福を受けたもろもろの力よ、私のそばにいて、私を包み、私を抱きしめよ!
エイハブ船長の独白。
メルヴィル 『白鯨(上)』 千石英世・訳 講談社文芸文庫
平成時代のThe 3rd Man's  Fundにおける投資方法は、極力未来の予測を避け、あくまで手堅い実績を残してきた企業に投資をするというものでした。


これは『配当を転がせ - 『マネー・ボール』を読んで -』でレビューしたような、『マネーボール〔完全版〕マイケル・ルイス著、中山 宥・訳 ハヤカワ ノンフィクション文庫)に書かれているアスレチックス、ビリー・ビーンGMの



選手がどう見えるか、将来どうなりそうかといった主観的な評価よりも、現実にどんな成績を残しているかが重要

という考え方に影響を強く受けています。企業が将来どう大化けするかよりも、これまでどう手堅く利益と配当を上げてきたか、を重視してきました。

令和時代のThe 3rd Man's  Fundでは、すこしばかりアプローチを変えることにします。


ある程度世の中がどうなるのかを予測し、その予測が当たった場合に大きな恩恵を得られそうな企業に積極的に投資していくことに決めたのです。その際、その企業の過去の実績は、これまでほど重視しないことにしました。かといって無視するわけでもないですけど。


この変化のきっかけは、『令和の改新 その2 -靴の中の小石-』で述べたように、投資先を選ぶにあたっての思考(嗜好)が強く形成されてきたところに、山口正洋氏の2019年6月17日配信のメルマガ(これは永久保存版ですね)を読んで大きく触発されたからになります。

有料メルマガなので、内容をここで詳しく書くわけにはいけませんが、ここまでなら問題ないであろうと思う範囲で、当記事および次回の記事に書きます。


まずは以下の表を見てみましょう。これは『「汝の父を敬え」作戦 -2nd Front 樹立へ-』で書いたように、山口正洋氏の無料のブログに掲示された資料です。





米国の年齢別グループの人口の推移(実績+予測)を表したこのグラフ、もともとは「CalculatedRISK」というサイトに記載されています。


ここで重要になってくるのが青色のグループです。30-39歳と言えば、先進国、特に米国では、住宅をはじめ、車や教育等々、いちばん消費が旺盛な年齢です。言い換えれば世の消費トレンドを形作るグループです。CalculatedRISK」では米国住宅需要にフォーカスしているので、これまでmulti family typeの住宅需要が堅調だったが、これからは一戸建てへの需要にシフトするであろう、なぜならば赤色の20-29歳のグループの人口が2021年を境に青色の30-39歳のグループに抜かれるから、と分析されています。

この青線、現在猛烈な勢いで上昇中です。

山口氏は、住宅需要のみならず、車のSUVの売れ行きや、さらには株式価格の推移との関連も指摘されていましたね。

ちょっと見てみましょう。まず注目は上記グラフ(以降米人口グラフと呼びます)の青い線です。これを目に焼き付けたうえで、次にS&P500の1990年から現在までの株価推移を見ます。



S&P500の株価指数推移、1990年1月から2019年8月、Yahoo! Financeより

第一次湾岸戦争が終わった後のクリントノミクスのもと、米国経済は力強く成長します。株価も90年代後半からグングン上昇しドットコム・バブルへと突入しました。そして2001年にはじけます。

ポイント1:1990年代半ばに米人口グラフの青線がピークアウトしていた


2002年から03年にかけてボトムをつけた株価は、2007年にかけて再び上昇しています。そしてサブプライム金融危機が発生し、2008年から09年にかけて株価は暴落。その後多少のアップ&ダウンはあるものの、基本的に現在まで右肩上がり。

ポイント2:2012年から米人口グラフの青線が上昇していて、2030年ごろまでこのトレンドが続く

以上2つのポイントを踏まえたうえで、仮説を述べます。

【仮説】

  • 企業の業績とそれに伴う株価は、消費の額と多様性が大きい30-39歳の人口に追随する。

  1. 米国での2002年から2007年までの株価の上昇は同時期の30-39歳の人口の推移と大きく乖離していた。これはクリントンだかグリーンスパンだかの政策がトリガーとなって、明らかに実力以上の値だった。
  2. 逆にサブプライム金融危機の際の株価暴落は、パニックにより実力以上に売り込まれていた。なので2009年から12年までの株価上昇は、実力値への回帰。
  3. 2012年以降の株価上昇は、30-39歳の人口の推移を伴う実力どおりの成長


乱雑な仮説(私としてはこれが精いっぱい)ですが、これが正しいとすると、少なくともS&P500の株価は、今後2030年過ぎあたりまでは基本的に伸び続けます。

それ以降も同じようなペースで伸び続けたら要注意。

これが私が想定する株式投資の未来のメインストリームです。

このメインストリームさえ認識しておけば、ピーター・リンチ氏の言うところの「週末の不安」(『ピーター・リンチの株の法則』、平野誠一・訳、ダイヤモンド社)に煩わされずに済みます。特に最近はシン・ダイトーリョーのツイッターが、せわしないみたいやし。

さらには、よくあるヒンデンブルグだかブランデンブルグだかのオーメンや、逆イールド(これに関しては山口氏が2019年8月21日のブログで書いてますね)等々の、必要以上にこねくり回しているとしか思えない情報に惑わされずに済みます。

これらの日々紙面やネットを賑わす情報を、私の新入社員時代の仕事はできるが口は汚い上司(外見は楽天証券の山崎元氏そっくり)が見たら「エコノミストのマス■ーベーション」と一言で斬ったことでしょう。

しょうがない、エコノミストたちも日銭は稼がねばならぬ。原稿用紙のマス目は埋めねばならぬ。私は、その上司ほど口は悪くないので、こう言います「おしごと、おつかれさま。」

ただし気をつけなければならないのは、30-39歳の人口が増える=その国・地域、あるいは世界全体の株価指標の上昇ではない、ということです。

モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントでemerging market(新興国と訳しちゃいかんよ)チームのヘッドであるインド出身のシャルマ氏は、その著書で以下の通りに述べています。


 そう、若年労働者の拡大は、とてつもなく大きな競争優位になり得る。しかし、それは国が若者たちを生産的な仕事に就かせるために懸命に努力した場合に限って言えることである。
ルチル・シャルマ 『ブレイクアウト・ネーションズ』 鈴木立哉・訳 ハヤカワ文庫

私はそれに加えて、多種多様な人々が安心して参加できるように、その国・地域の株式マーケットの制度がきちんと整っていることが重要と考えています。


なので少なくとも先進国以外の株価指数に投資なんてのは、正気の沙汰じゃないと考えています。それらを含む世界全体の株価指数もしかり。えーと、日本のTOPIXは・・・もちろん、これも正気の沙汰じゃないね。

さて次回は、そのメインストリームを踏まえたうえで、さらに米国での人口動態を微分し、なおかつもう一つの大きな潮流を考慮しつつ、なぜ「令和の改新」と題してアーロンズ(AAN)、フロントドア(FTDR)、ペットIQ(PETQ)、トロ・カンパニー(TTC)、およびレストラン・ブランズ・インターナショナル(QSR)を獲得したかを記しておきたいと思います。

いや、ほんとは今回の記事でそこまでたどり着きたかったんやけど、長くなっちまった・・・今年中にたどり着けるかなあ。いつものごとく、この令和シリーズもフェードアウトしてしまうかもしれん。

情報開示:この記事を書いている時点で8876x800株、KO238株、AAN128株、FTDR128株、PETQ60株、TTC94株、QSR35株保有 


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