本来的な意味での株式投資とは、持続的な価値を創造することができる企業を見極め、お金を預けることで、自らの代わりに継続的に価値を増やしてもらうという資本家・オーナーとしての発想であり、この発想は資本主義の根幹を成すものです。
川北英隆/奥野一成 編集 『いま日本を代表する経営者が考えていること』 ダイヤモンド社
We buy never to sell.
Pulak Prasad 『What I Learned About Investing From Darwin』Columbia Business School Publishing
The 3rd Man's FundのInceptionから、この4月末で丸10年を迎えました。『次の10年に向けての雑文(1) ーカタリストとしての株式投資ー』で書いた通り、今後は5月をThe 3rd Man's Fundの年度の始まりとします。
では、新たなシーズンの始まりにあたり、現時点での立ち位置を確認します。
まずはCode of Conduct。昨年末に完成し、一月より試運転。プレ・シーズン中に若干のストライクゾーンの修正(あと、ROCEが左→右で大きくなるようグラフを作図し直した)を行いましたが、今後はこれで行きます。
当ブログを始めた2014年のころは、ろくに財務諸表、アニュアルレポート、有価証券報告書等々の読み方すらわかっていませんでした。営業利益と純利益の違いも分かっていなかったですね。おまけに当時は先の金融危機(リーマン・ブラザーズがあおりをくって破綻したやつ)の記憶が生々しく残っていたこともあり、ひたすら連続増配、ならびに生活必需を中心とした株価的にディフェンシブ(私の体験では、中で働いている人は必要以上にオフェンシブ)と言われる銘柄を追いかけていました。
いまでは一次資料を読んで、自分なりの解釈・判断を下せるようになっています・・・正しいかどうかは別として。そして、それらから読み取る「各企業が世に提供する価値」を見極めて投資することに意義を感じるスタイルに変わっています。価値(勝ち)続けるであろう企業だけを厳選し、いつまでもその株式を保有し続けて、オーナーとしてのステータスをゆったりと味わいたい。
売却して利益を得るために株式を購入するのではなく、保有するために購入するのです。
もちろん投資ですので、私が投下した資本が回収できるかどうかについても冷徹に目を配っていることは言うまでもありません。自分の判断の誤りに気付いたら、躊躇なくその株式を手放します。きっとそのようなケースも、今後いくつか出てくるでしょう。未来は本質的に不確実ですが、一つだけ確実に言えるのは、「私は間違い続ける」ということです。
Never
Sell
Never
Again
とばかりに「ネバセル精神」で臨みます。
My name is Bond, James Bond...
のつもりです。むむ⁉ 『Never Say Never Again』をご存じでない? ま、私もアレはテレビのロードショーで観たけど、まったく内容を覚えていない。
まあね、仙一さんでもいいのですけどね。えっ⁉ 「ネバサレ」を知らない⁉
当ブログは阪神ファン以外は立ち読み厳禁です。そこのヨミウリ・ファンのかた・・・
退場👉
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次に、プレ・シーズン中の獲得並びに放出。
【獲得】
(株)MonotaRO(3064)
【放出】
XPEL, Inc.(XPEL)
3064は、主に工場関節資材を卸業者・メーカーから仕入れ、ウェブサイト経由でエンドユーザーに直接販売しているeコマース企業です。北英隆/奥野一成・編著の『京都大学で学ぶ企業経営と株式投資』(きんざい)を読んで2018年にその存在を知るところになりましたが、長らく獲得は見合わせていました。このたび策定されたストライクゾーンに入ったため、獲得に至っています。WalmartやCostcoのようにscale economicsをユーザーとシェアすることができている稀有な日本企業と判断しています。その2社と違い、顧客へ還元するのは商品の価格ではなく利便性ではありますが。雑多な品物をクリアな価格でタイムリーに提供し、それで稼いだお金をディストリビューションセンター拡大に投資し、それによって取扱製品を増やして利便性を顧客とシェアし、そこで儲けたお金をさらなる・・・とエンドレスに続いていくことが期待できます。
"Put simply: average companies do not do scale economics shared."- Nomad Investment Partnership
XPELは、米国の、おもに車のプロテクション・フィルムの販売ならびにコーティングを施工する会社。当初は唯一無地のサービスを提供する企業と判断して獲得するも、その後の調査で、同社の強みは施工業者たるディーラーに便利なソフトを提供することであり、それらは競合他社、特に素材を提供するフィルムメーカーにも模倣される可能性が高いと判断。長期的に耐えうる堀は無いと考え直したので放出に至っています。
これ以外にもMcCormick & Company, Incorporated (MKC)を一部放出してLandstar System, Inc (LSTR)の追加を検討しましたが、見送っています(スパイスのない人生なんて 9 - MKCとLSTR-』)。また(株)日立製作所 (6501)を一部放出して、それより価値創造の確度が高いと判断している3064の追加を考えましたが、それ以降3064の株価がストライクゾーンに入ってこなかったため、行動を起こすことはありませんでした。
***
これらのアクション(動かないことこそがもっとも重要なアクション)の結果、The 3rd Man's Fundのポートフォリオは以下の通りになっています。 (4/30時点、1ドル157.68円で計算)
ROCE(私の計算)は過去10年のMedian、Debt/Equity Ratioはモーニングスターからとってきています。
6501がMKCを抜いたとばかり思っていましたが、意外とMKCが為替の追い風もあり粘りました。スパイスのグローバルトップである同社のROCEが低いのは、思わず手を打ってしまうような付加価値が提供できていない、もしくはその価値を受け手側にうまくアピールできていないのかもしれない。あと意外でしたが、全般的に生活必需は急なインフレには弱い傾向があるように見受けられます。ただ、じわりと追いつき追い越すような気もします。
構成企業のイコール・ウエイトでの初回獲得からの保有日数平均は1,130日。最長はMKCで3,381日、最短は3064で63日。10年後にはイコール・ウエイトで平均4,000日を目指します。期中、たとえば90日しか保有しないで放出する株式があった場合は、その90日も計算に含めます。自分に厳しくいきましょう。もちろん、これにとらわれて放出を躊躇するようなことは、決してしないつもり。
年に一度確認予定の保有株式の過去10年のFree Cash Flow per Shareと株価のCAGR。(私のマニュアルチックな計算なので参考値。(株)日立製作所は過去9年、KeePer技研(株)とFloor & Decor Holdings, Inc.は過去6年)。
プレ・シーズン中の各株価のパフォーマンスは 以下の通り(為替考慮せず。期中に加わったMonotaROは獲得来の数字)。
High Performers (Top 3社)
- (株)日立製作所 (6501)
- (株)MonotaRO(3064)
- Tractor Supply Company (TSCO)
6501は世界的規模でインフラ課題解決事業を営む会社。日本がかつてない金融緩和政策を行っている間に、しっかりやるべきことをやっている上場企業。ただ金融政策がどうであれ、6501はやるべきことをやるでしょうし、やらない企業はやらない。こちらとしては、やらない企業に資金を回すつもりはない。
自国通貨を毀損した負のほうが大きかったのでは?と思える政策は、しっかり検証してほしいところ。フル・リフレは足裏マッサージだけにしてほしい。閑話休題、6501はまだまだTurn around真っ最中で、これから価値創造の方程式を固めていく途上にある、いわばトランスフォーメーションの段階。いちばんROCEが低くてハラハラする保有企業が結果的にポートフォリオ内で大きな割合を占めるようになったのは、正直なところ少々落ち着かない。投資家の期待が先行しすぎていると思うが、どうでしょう。
3064は既述の通りなので割愛。
せんだって、信州の森の中の友人宅に数日間お邪魔しました。この季節の彼の家のウッドデッキで過ごすひとときは、それはそれは心地よく、ここで仕事や読書をしたらずいぶん捗るだろうなあ、という感想を持っています(惜しむらくは、午前中のほとんどが二日酔いの状態であった…)。TSCOは米国でそのようなライフスタイルを求める人々のニーズをうまくとらえる小売店です。かの地での金利動向が変わり、住居の流動性がよくなると、さらにそのビジネス展開に期待が持てます。
Low Performers (Bottom 3社)
- KeePer技研(株)(6036)
- Zoetis Inc. (ZTS)
- Landstar System, Inc. (LSTR)
6036は株価のCAGRがFCF per shareのそれに先行気味だったし、コロナ禍のデマンド・スパイクがすさまじかった反動で過剰な期待が剥落し、株価自体が収まるところに収まったと推測。月次と株式の値札を追いかける株主は、足早に離れている段階かもしれない。私は足が遅い。速く走るつもりはない。
おなじくZTSも株価が先行気味だったので、なにかネガティブなニュース(中国経済の停滞や薬害の疑義)があると敏感に反応する状態だと推察します。しかるべきところに株価が戻ってきただけであると。今後の同社の価値創造能力が大きな損傷を受けているとは思わない。
LSTRは、今年はもともとマイナス成長予想だし、どうしても株価は抑えられる傾向。というよりずっとその価値が評価されていない株式と認識しています。しかし過去10年のトップライン・ボトムラインともにしっかり成長しているし、ROCEも素晴らしい数を継続中。追加獲得を虎視眈々と狙っているところです。
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