オペレーション・マース(参考記事『令和の改新 その4 - 巨鯨現る -』と『令和の改新、最終章 -作戦術の導入ー』)の一環で、米国での今後の住宅需要増(とくに戸建て)並びに水や都市化(5G)へのニーズを意識して獲得したザ・トロ・カンパニー(TTC)の2021年度をレビューします。
米国の住宅関連企業でなにかないかなあとSBI証券の取扱企業リストを眺めていて発見しました。ちなみに同じ方法で見つけたTrex Company(TREX)も獲得候補になっていたのですが、ウッドデッキより芝刈りだよな、とTTCを選んでいます。もちろんその後の株価はTREXの方が強かった・・・ま、いつものことです。
【初回の獲得】
2019年6月です。以来株数の増減なし。
FEET ON THE GROUND
【クレヨンで描けるか? by Peter Lynch】(*)
しっかり描けます。とてもTangibleで私好みです。
ちなみに私はその昔、米国の東部の大学に約1年半滞在していたことがあるのですが(あと3年は北西部)、あのあたりの芝生の香りはとても印象に残っています。とくに6月はさわやかな青空の下での瑞々しい芝生がとても気持ちよく・・・あればっかりは日本で手に入らないかので、うらやましいところです。
【世の中に提供している価値は?】
ここが書きづらいところ。
米国での住居、とくに戸建ての場合は芝生がつきものです。芝生の手入れは、男性が髭を剃るのと同じく、嗜みのひとつです。たしか地区によってはきちんと手入れしておかないと条例違反なっていたかと記憶しています。
さらに米国の北部では、これは私も経験したのですが、除雪が必要な場所が多いです。
なので「かの国で居住するにあたりどうしても必要な作業を行うためのツールを提供している」となりますが、実際のところ喜んでこれらの単純肉体労働的な作業を行う人は少ないはず。
たまにやる分には、楽しいですけどね。
TTCはご多分に漏れず、とくに芝刈り機を中心に自動化に注力しており、そういった見地で行くと同社が提供しているのは、米国で生活するのにどうしても伴う単純肉体労働と時間的束縛からの解放といえます。
またゴルフ場においては、たんに自動的にフェアウェイの芝の管理をする機械だけにとどまらず、スタッフの配備や器具のトレース、部品の補充等々のコース整備に必要なことすべてを一元管理できるソフトウェアソリューションを提供を行っていくようです。
そのうち、ゴルフ場経営に携わっている人々は、それこそカントリークラブハウス内の事務室でパターゴルフでもやっておれば万事OKな時代になるかもしれませんな。
【営業利益率は10%を超えているか】
2012年以降は超えています。大型買収のあった2019年に下がりましたが、またじわじわ上昇中です。
【企業の価値は増大しているか】
しています。これまた大型買収のあった2019年はROICが凹んではいるものの、常にWACCを上回っています。
このCharles Machine Works社の買収の狙いが何だったのかが、いまひとつよくわからない。このConstruction業界に手を伸ばすメリットが果たしてあるのかどうかは・・・ちょっとしっくりこないですね。
もちろんバイデン政権によるインフラ投資の恩恵は受けますがね。TTCの2020年から21年にかけての株価上昇はこの辺りを織り込んだものと思います。
あ、どこかの投資運用会社では、うかつに「織込み済み」という言葉を発すると、ファンドマネジャーからグーパンチが飛んでくるようです。くわばらくわばら。
【足元はどうだったか】
Salesは前年比+17.2%、Earningは同+19.8%。地下工事用の装置以外は好調だったようです。あとトラクターサプライ(TSCO)社から2年連続でPartner of the year賞を授かったとか。
EYES ON THE HORIZON
【向こう10年の姿を想像できるか】
『令和の改新 その3 - 株式投資のメインストリーム -』で書いた通り、今後の米国での住宅周りの需要は力強いものがあると私は考えています。もちろんその時々のアップ・ダウン(いま話題の金利上昇とか)やノイズはあると思いますが。
さらにはコロナ禍をきっかけに米国で在宅勤務への流れが加速した結果、人々の居住地は郊外を通り越してどんどん田舎・自然の中へと拡がりつつあります。
であればTTCが、この人口動態と住まいの多様化という2つの潮流に沿ってそれなりに業績を伸ばしていくことは想像に難くない。
ですが・・・
【Risk & Opportunity】
これまで何度か述べたかとおり、TTCの製品でなければ・・・というブランドの価値、もしくは障壁が見えてこない。これは私が米国居住者でないことも一因ではありますね。
Left Hand Robotics社を買収したりして自動化に取り組んでいるようですが・・・
こりゃもう競合他社であるディア・アンド・カンパニー(DE)やクボタ(6326)も同じです。
DEはAIを活用した完全自立運転のトラクターの量産をするようだし(日本経済新聞朝刊、2021年2月16日)、6326はワイン用ブドウを育てるロボを研究・開発している(日本経済新聞朝刊、2021年1月17日)そうです。
あとIoTだのゼロ・エミッションだのは、これらの企業に共通のテーマだし。
このあたりの競争の激しさとTTCの特徴の欠如が同社へ長期投資をするにあたってのRiskとして目を光らせておかねばなりません。
逆にOpportunityは、非常にうまくいけば、住居周りだけではない居住区地域コミュニティそのもののスマート化、つまり家や道路周りの灌漑を含む環境保全やIoT関連を包括的に、それこそ一元化サービスとして提供できる企業になりえるかもしれないと考えています。
【現時点での立ち位置】
てなわけで、いまのところはHold。そのRiskを考えるとポジションはこれ以上増やしません。逆に、ほかによい投資対象を見つけると、まっさきに放出要員となるでしょう。
じゃなんでTTCに手を出したか。
これはひとえに、芝の香りに対する郷愁、としか言えませんな。
私は、たとえ投資対象の将来に客観的な疑義があったとしても、それが好みの事業を行っている企業なのであれば、ポートフォリオの片隅に加えたほうが良い結果をもたらすと考えるのです。
こんなことプロの世界で言ったらグーパンチどころかギロチンドロップが降ってきそうですが・・・私は個人投資家なのでね。どうだ、うらやましいだろ。
情報開示:この記事を書いている時点でTTC167株、TSCO167株、6326x900株保有
* ピーター・リンチ 『ピーター・リンチの株の法則』(ダイヤモンド社)より。本来の意味は、どれだけ企業を理解しているか、の比喩表現となります。
このブログでのTTCの記事はコチラ。
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