気を付けなければいけない、ここは食慾の道場だ。三昧を擾してはならない。人々は敬虔に本能に禰り入っている。人々の態度はいう。 「食事は祭典だ」
岡本かの子 『食魔に贈る』
我らがThe 3rd Man's Fundの2021年末におけるポートフォリオの首位打者であり、なおかつOperation Jupiterの旗艦企業でもあるマコーミック(MKC)の2021年度の結果を振り返ります。
【初回の獲得】
初回獲得は2015年1月。以来折に触れて追加しています。確か途中で株式の分割もあったような気がするが、よく覚えていません。
FEET ON THE GROUND
【参入障壁】
農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶねの2019年9月の月次レポートによると、MKCの調味料(Consumer Segment)は、北米や主要欧州諸国において市場シェアが40~50%とのことです。
日本でいうと、味の素とエスビー食品、ハウス食品あたりが一緒になったくらいの存在感かもしれません。
そういえば社会人になって間もないころ(いまから30年くらい前だ)に、喫茶店で週刊ポストをパラパラめくっていたときに、大前研一氏による、
日本は食品メーカーが多すて規模が小さすぎる、だから世界の競合に太刀打ちできない!
みたいな連載記事を読んだ記憶があります。
山の多い島国という地理的な影響で、どうしても地方地方の食文化が多様だからある意味仕方がないなあ、でも消費者としてはおトクだよなあなんて思いながら、秋田のお酒『六舟』を呑みつつこの記事を書いている次第です。
またB to BであるFlavor Segmentでは、これはまさしくNVICの受益者カンファレンスコールで言及されるノンコアだけどクリティカル・・・どころじゃすまない、結構コアでクリティカルなところを押さえており、食品・飲料メーカーが調味料のパートナーを変えることのスイッチングコストは、想像するにとっても高くつきそうです。
結果、MKCは2番手の競合先に対して4倍もの規模を誇るグローバル・マーケット・リーダー(2021年度版アニュアルレポートより)の地位を築いており、障壁はAAAクラスと考えます。
【世の中に提供している価値は?】
「人」にとって舌は永遠のモチベーションです。それは世界史を勉強すればわかります。英国が日の沈むことのない大帝国を築き上げられたのは、あの島国のメシがまずかったからだし、中国がCenter of the world(中国)と称して万里の長城の内側に長らくこもっていたのも、かの国のメシがうまくて、外に出ずとも事足りていたからです(独断と偏見)。
MKCはその人類史のコアの部分に信用・安定という付加価値を加えて世界中に提供しています。
【営業利益率は10%を超えているか】
2004年以後では2006年に若干下回ったことがありますが、それ以外は安定して10%越えです。
【企業の価値は増大しているか】
さて、ここで少し懸念です。
2017年にFrank's RedHotブランドを擁するRB Foodsを買収して以来、効率が悪くなっています。そして上向きトレンドがまだ確認できません。
MKCは、とくに若い世代がスパイシー嗜好であるとしており、その流れに沿ってCholulaも2020年に買収していおり、No.1 Hot Sauce Companyと誇っています。
アニュアルレポートより |
こりゃ、辛そうですね。若者の嗜好もそうかもしれませんが、米国でどんどん存在感を増しつつあるラティーノを見据えていると考えます。
ザ・トロ・カンパニー(TTC)もそうですが(参考記事『となりのト、トロ その3 - ザ・トロ・カンパニー(TTC)の2021年度 -』)、この大型買収があったあとの経営っていうのが個人投資家にとっての見所のひとつかと考えます。
EYES ON THE HORIZON
【向こう10年の姿を想像できるか】
Yes.
【Risk & Opportunity】
Riskはよほどヘタな買収をしてしまわない限り、無いと思います。コロナ禍の出口がどう転ぼうとMKCはきっちり受け止められるポジションを持っています。また、まだまだFragmentedな業界の他社を買収していく余地はたっぷりあると考えます。
【現時点での立ち位置】
てなわけで、いまのところはHold。ポジションを減らす理由は無し。もしROICの数値が上向き始めたら、さらに積極的に追加していくのもやぶさかではありません。
情報開示:この記事を書いている時点でMKC418株、TTC167株保有
このブログでのMKCについてのその他の記事はこちら。
Appendix
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