2020年5月21日木曜日

「敗者のゲーム」を始めたきっかけ -後編-

 株価というのは、要するに神羅万象の結果です。
『藤巻健史の5年後にお金持ちになる「資産運用」入門』 光文社
2005年あたりのころ、独身だった私の週末は、近所の喫茶店でモーニングセットを頼むことで始まっていました。


そのお店に朝日新聞が置いてあり、その日曜版に連載されていた藤巻健史氏による『フジマキに聞け』を読むのが、週末の朝のささやかな楽しみでした。

藤巻健史氏がどういう人物かに関しては、ケロッグ・ビジネススタイル・ジャパンの『伝説のトレーダーと呼ばれた金融のプロフェッショナル 藤巻健史』の記事がよくまとまっていると思います。

で、その『フジマキに聞け』、これが読み物として無茶苦茶面白かったんですね。

当時の私は普通預金口座を開設するために銀行の窓口を訪れること以外に金融というものには接点がなく、株式投資はもとより固定や変動金利、長・短金利、マネーサプライ、債券、直接金融、国債、ポートフォリオ、モルガン銀行等々の単語が何を意味するのかさっぱり分かっていませんでした。でも氏の独特の自虐ネタ満載の文章を読んで、何度もコーヒーを吹きこぼすほど笑いました。

活字だけの文章を読んでハラを抱えて笑ったのは、北杜夫のどくとるマンボウ・シリーズ以来でしたね。

しまいには日曜日の朝に真っ先に目を通すのは『フジマキに聞け』になっており、そうこうするうちに自然と資産運用に関心を持つようになりました。なにせ、いつもガムテープで補修した紙袋を両手にさげていたり、平気で左右の足で色が違う革靴を履いて電車に乗ってしまうおっさん(このあたりはベンジャミン・グレアム氏と同じ)が、モルガン銀行の支店長やってるくらいなんだから、オレだってちったあ出来るんじゃないか、と思ってしまったのです。

ちなみに世界広しといえども、あそこまで面白おかしく自身の大失敗を語れる投資家は、ピーター・リンチにウォーレン・バフェット、そしてフジマキさんしかいらっしゃいません。たいていの資産運用や株式投資の本は、しんねりむっつりで堅苦しく、自身の正当性を証明するのに力が入りすぎです。株式投資は楽しいものなのだから、もっと明るく書けないものかと思う。予想するにしても、あたらないんだからさ、せめて面白く書いてもらわないと。

そんな2006年のある日、本屋さんで出会ってしまったのがこの本です。


はじめにフジマキありき。

もちろん即購入。

この本は藤巻氏が2005年に品川女子学院で行った金融講座(さすが、品川女学院!)の授業内容をもとに書かれた本です。

いやもう、タイミング的にドンピシャですね。この本を買って資産運用に入門した人たちは、3年後には全員大ビンボーになったことでしょう。品川女学院の皆様は大丈夫だったでしょうか。私のささやかな資産額も、野茂英雄のフォークボールのように、切れ味鋭く落ちていったのでした。

こういうタイミングなのが、藤巻さんらしいですね。

帯には15年続いたデフレがついに終わり云々と書かれていますが、それからさらに15年たっても日銀の黒田さんはアブラ汗まみれです。おまけに冒頭から、数年後には日経平均株価が4万円台になる、と書かれています。それから15年たちましたが・・・

でもね、んなこたあ、どうだっていいのです。私の投資家としてのバックボーンはこの本を読むことにより形成されました。

投機家・投資家の存在意義。


 投機家がいないとマーケットはなくなってしまう。マーケットがなくなるということは、資本主義ではなくなってしまうということです。

市場の信頼性。


市場というのは資本主義の基本のインフラ、いちばんの基本的な構造です。この基本的なものが絶えず開いているということが非常に重要なわけです。市場というのは売りたい時に必ず売れるということがいちばん重要なのです。

長期投資の概念。


 ですが、私の経験から言うと、短期で勝負する、デイトレーダーっているじゃないですか。頻繁に売ったり買ったりする、あの人たちは儲からないと思います。もちろん儲かることもあるでしょうけど、大きく儲けることはできないと思うのです。私はモルガン銀行では世界中でいちばんの儲け頭でしたけど、それでもデイトレードでは儲からなかったですね。利益はほとんど長期的な勝負で稼いでいました。

 もちろん大きな利益の源泉は長期的な勝負です。JPモルガンを含め、世界的に有名なトレーダー、そしてヘッジファンドのオーナー、その中にはデイトレードで有名な人はいなかったですね。みんな長期的勝負で儲けていました。

株式の選択の基本。


ポイントは、やはり自分で理解できるものを買うということです。

私などは、やはりわかっている企業しか買いません。アメリカの会社の株であれば、私はニューヨークダウを構成している株にします。

もし私が、中国がいいと思うのだったら、中国に進出している日本企業や米国企業の株を買います。

うーん、現在の私の株式投資方法は、基本的には藤巻氏がここに書かれていた内容を踏襲していますね。

ただ藤巻氏から学んだことで一番大きなことは、投資は楽しい、ということです。本にはそんなことはダイレクトには書かれていませんが、氏の著書の行間からそのことが滲み出ています。

投資とは、しんねりむっつりに斜に構えてする堅苦しいものではないですし、ほったらかしにしてしまうにはあまりにももったいないものです。

うまくいかなくても笑いとばせばいい。

そういった意味で、氏は私にとって資産運用に対する肩の力を抜かせてくれた存在です。

こうして私は非常にワクワクしながら、証券口座を開設すべく当時米国株式の扱いが一番充実していると言われたイー・トレード証券(現SBI証券)に資料請求することとなります。 

それが私の「敗者のゲーム」への第一歩でした。

情報開示:とくになし

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