2020年3月18日水曜日

沈黙の春・・・害虫防除がサイエンスの域に達するとき その6 - ローリンズ(ROL) -

さて、毎年密かに楽しみにしているローリンズ(ROL)のアニュアル・レポートの表紙です。2019年度のものは・・・



・・・こら。

まともじゃねえか。コロナウイルスにでもヤられたのか。キミたちはいつからDecentな会社になったのだ。ま、重箱の隅をつつくと、アジア系を一人くらい入れておいたほうがいいと思うけど。


随分期待していただけにがっくり肩を落として2019年度版アニュアルレポートをめくっていると、なんだか強い違和感を感じた。なんだろう。最初はその違和感の正体がわからなかったのだが、30ページ目くらいまで来てハッと気づいた。


ムシが一匹もいない。


目を皿にして各ページの隅々まで見たのだが、・・・ゴキブリが、ハエが、カトンボが、クモが、みんなみんなアニュアルレポートから一掃されている。アリ一匹居ない。なんというか、ミツバチの大量死どころではない異常事態が発生している。どんなに耳を澄ませても、ゴキブリが這いずり回るカサコソという音や、ハエや蚊の羽音が聞こえてこない。


沈黙の春だ。

代わりにESGが云云かんぬんとかいうご託が聞こえてくる。どうやらコイツら本気でまともな会社になっちまったらしい。

ショックだ。コロナ・ショックどころではない。オレをほったらかして潔癖症のミレニアム世代やキャピキャピギャル(死語)の株主に媚を売り始めやがったぞ。あるいはNVIC(敬称略)あたりが、なんかモノを言ったのか。


オレは今、無性に寂しい気分である。しかたがない、まだ日は沈んでいないがバーボンをあおろう。ギムレットではもう遅い。


私のささやかな楽しみが、またひとつ、消えた。


***


ROLは2016年の2月(NISA口座)と6月に獲得しています。そのころのROLのアニュアルレポートはエッジが効いていたな。ROLは私にとって、その存在をブログの読者に教えてもらったことと、それまでの配当率重視から事業内容重視への穏やかな転換の第一歩を踏み出した投資先として、印象深い企業だった。


いまは普通の企業になり下がったが。



ROLの過去5年間の株価推移。赤丸が大まかな獲得のタイミング。

人々のよりよい(住)環境をもとめる本質的な欲求に応えることのできる企業として、投資先に選んでいます。




2019年にROLの成し遂げたことは、


*22年連続の増収増益

*Revenue $2B達成
カリフォルニア州とネバタ州北部を基盤とするClark Pest Control社買収
17年連続増配

なんぞはどうでもよく、


*アニュアルレポートから害虫を一掃

これに尽きる・・・


RevenueとOperating incomeの推移:



数字のソースはモーニングスター

会社全体でのRevenueは10.6%増で、このうち買収による効果は5.8%とのこと。

*一般住居のペストコントロールのRevenueは11.3%増(買収インパクトが大きい)
*商業施設のペストコントロールのRevenueは8.9%増
シロアリ関連のRevenueは11.8%

2019年の需要の約80%が2018年からの継続(recurring)ビジネスとのこと。また蚊関連のサービスの伸びがすごいらしく(前年比+30%以上)、しかも顧客の定着率が90%とのことす。そういえばROLを見つけたきっかけは、4年前のジカ熱騒動だったな。


あと、ますます顧客サービスに力を入れているようで、"Glympse"というプログラムが紹介されていました。これは急行中のサービスパーソンの現在位置や到着予定が顧客にわかるサービスのようです。


これも虫嫌いな人にとっては効果のあるサービスなのでしょう。昔付き合っていた彼女が、夜中にゴキブリが出たとかで「早く来てなんとかしてよ、いま・スグ・Now!」と電話をかけてきたことを思い出します。


ROLはどんどん競合他社を買収し、上述のようなサービスを適用させて、害虫防除業界におけるプレゼンスを大きくしていっておるようです。


経営効率をみてみましょう。



数字のソースはモーニングスター

すこしClark Pest Control社買収の影響が出ているように見受けられます。とくれば財務3表(数値のソースはアニュアルレポートより)の確認。









ながらく無借金経営だったのが、Clark Pest Control社買収のためにDebtがBSに乗りました。地道に返済するか、さらに買収を推し進めるのかは見ものです。どうりで昨年は年末恒例の特別配当がなかったわけだ。


直近では商業施設へのコロナ・インパクトが気になるところではありますが、メインストリームでは:



  • 米国の人口動態
  • コロナ騒動でさらにブラッシュアップされるであろう、人々の潔癖化
  • 地球温暖化による、やつらの増殖ならびに凶悪化
  • ビジネスの安定感
  • 経営のプロによる成長戦略

上記を鑑みた時にROLを持たない理由はどこにもありません。たとえアニュアルレポートがつまらないものになったとしても、それだけでは手放す理由にならない。

バーボンをあおる理由にはなるが。


情報開示:この記事を書いている時点でROL241株保有

バーボンをあおりながらふと疑問に思ったのだが・・・ワイルド・ターキーって害獣なのだろうか?


このブログでのROLのその他の記事はコチラ


Appendix


あんまり関係ないけどいちおう参考図書:


0 件のコメント:

コメントを投稿