Domo Arigato, Mr. Robot, Mata Ahoo Hima de
styx 『Mr. Robot』日本WHO協会によると世界全体の死亡原因のTop10は以下の通りです。
1虚血性心疾患、2脳卒中、3下気道感染症、4慢性閉塞性肺疾患、5気管・気管支・肺がん、6糖尿病、7アルツハイマーその他認知症、8下痢性疾患、9結核、10道路交通傷害
このうちアボットラボラトリーズ(ABT)が直接的に対峙しているのは、1、2、6、7ですかね。あくまで私の理解ですが。3も結構絡んでくるのかな、特に発展途上地域のあたりだと。7に関しては、糖尿病とアルツハイマーに深いかかわりがあるとの本を読んだことがあります(参考記事『サードマンの収入明細(2018年3月)』)。
10については、トヨタに頑張ってもらいましょう。
ABTは以前私が勤めていたヘルスケア企業(医療機器)の多くの事業部で競合していました。そこで見聞きしたABT製品の評判の良さ(なんせ競合他社であるその企業主催の講演会に呼ばれたお医者さんが、近々上市予定のABTのステントのすばらしさを延々と語りやがってさ、その後うちのエース級の営業が2-3人辞めたんだぞ。どこに行ったかまでは知らんが)をもとに、ささやかながら敵対的買収のつもりで獲得しました。
やっかいな敵は買収するに限る。
2010年9月のことです。そして2016年6月に追加で獲得しています。
なお、私はヘルスケアの企業で約10年で働いていた経験がありますが、あくまでバックオフィス業務の冴えない社員でした。ですので医療や製品、はたまた業界そのものに関しては知ったかぶりの知識しかないことを、あらかじめお断りしておきます。
Yahoo! Financeより、赤丸が大まかな獲得タイミング |
保有期間中の大きな動きとしてはアッヴィ(ABBV)がスピンアウトされ、セントジュード・メディカルを買収したことが挙げられますね。
ではRevenueとOperating incomeの推移。
2017年度にOperating Marginが悪くなっています。
アニュアルレポートによると、過去3年間の利益率は、糖尿病関連(フリースタイル・リブレ!)やEstablished Pharmaceuticalなどを中心に良くなっているのですが、やはり大型買収に伴う無形固定資産の償却やコストが足を引っ張っているようです。Inventory set up amortizationという表現もあったけど、在庫の評価額の引き下げのことかな?
ちなみにセントジュードの買収前と後のBSは以下の通り。
セグメント別での直近3年の推移(以下、グラフの元ネタはアニュアルレポート2018年度版より)。
Cardiovascular & Neuromodulation
循環器(ペースメーカ、ICDやステント等)、弁膜症などの心構造疾患(生体弁等)、および脳深部刺激療法(DBS・・・パーキンソン病等)や脊髄刺激療法(SCS・・・痛み)の医療機器。ペースメーカはご存知の方も多いかと思いますが、同じような技術を利用して、体内への植え込み式の機器による電気刺激で、パーキンソン病の症状や耐え難い腰痛をやわらげる療法がNeuromodulation(上記のDBSとSCS)です。
ABTは昔からステントやガイドワイヤーなどの血管関連の事業はありましたが、そこにセントジュード・メディカルの買収によって、ペースメーカやNeuromodulationの製品が加わってきた格好です。
営業利益率が若干低下しているのは、セントジュード・メディカル製品が加わってきたことと、冠動脈関連(ステントやバルーン、ガイドワイヤーあたりと思われる)の競争が激しくなっていることが挙げられています。2018年に薬剤溶出ステントのXIENCEの新型が日米で承認されたようなので期待しましょう。
ちなみに日本のテルモの営業利益率は会社全体で18%くらいです。メドトロニック(MDT)のCardiac & Vascular事業部の利益率(EBITA)は、39%程度。ICDとかCRTDは、やはりメドトロさんかな・・・。
Diagnostics
2017年に高速ポイントオブケア(患者さんの近いところで、簡単に素早く正確にできる監査なのだそうです)診断薬・機器のAlereを買収しています。
利益率の改善に注力しているとのことですが、こちらも買収の影響および為替のインパクトで、過去3年間は横ばい。
Nutrition
ここは、先進国の高齢化と途上国の所得増加の恩恵を期待できるセグメントです。The 3rd Man's Fundの仮想敵企業であるネスレが力を入れてきている分野かと推測します(参考記事『デススター、反乱軍、そしてミルク殺人』)。ちゃんと糖尿病患者用の製品もあるようですね。
ただ原材料費のインフレが利益を押し下げているようです。
Established Pharmaceutical Products
ジェネリック医薬品。おもに途上国がマーケット。2018年度では、中国とインドで売り上げ成長率がダブルディジット。
ここの事業はいらないのではと思わないでもないけど、途上国でのABTのプレゼンス向上として、やはり必要なのかもしれません。
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世界の糖尿病患者数は2017年に4億人を突破、2045年までには7億人までに増える可能性があるとのことです(ソースは糖尿病ネットワーク)
糖尿病になると、血管や心臓等の循環器に様々な悪影響を与えます。
このことを鑑みながら事業のポートフォリオをながめると、ABTは、
- 途上国の発展と、所得の増加
- 先進国での高齢化
の恩恵をうまく受けることができるポジションにいます。ちゃんと事業のポートフォリオが循環しておりますね。健全なる血と健全なるお金は、循環させてナンボや。
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豊かに、しかして老いていく現在社会の一員として、グローバルヘルスケア企業の株式は持たざるをえません。そして長期保有を前提とするならば、やはり押さえるべきは医療機器の企業と考えます。
なぜか。
それはスパークス・新・国際優良日本株ファンドの平成29年11月のレポートに書いてあるとおりです。
製薬業界が、莫大な研究開発費用を投下して希少な新薬発明を目指すというハイリスク・ハイリターン型ビジネスであるのに対し、医療機器ビジネスは、より安定したビジネスであるケースが多い。
おっしゃる通りだと思います。さすがプロ。私もこういう風に簡潔かつ明瞭に断言してみたい。
すでにThe 3rd Man's Fund以外でも以前勤めていたヘルスケアの会社の株式をたんまり持っているので、これ以上ABTの株式を獲得することは考えていません。もちろん放出は毛頭ありません。
Hold, and let it beです。
というわけで、Domo Arigato, Mr. Abbott, Mata Ahoo Hima de.
情報開示:この記事を書いている時点でABT161株保有
このブログでのABTのその他の記事はコチラ
Appendix
ABTの2018年度アニュアルレポートより |
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