2017年3月14日火曜日

コーヒーブレイク その3 - JMスマッカー (SJM) -

突然、視線がドリンクメニューに釘付けになる。「コーヒー一杯が三ユーロ五十セントだと!」と怒りの声を上げる。
「これはマルクの値段か?」
「空港だから、高いのは仕方ないですよ」シュトローブルが常識人ぶって言う。
「ありえない。家だったらこの値段で……」警部が暗算をする。「……四十杯は飲めるぞ。電気代と水道代を差し引いても三十杯だ。みんな、頭がどうかしてるんだ」

フォルカー・クルプフル / ミハイル・コブル 『ミルク殺人と憂鬱な夏』 岡本朋子・訳 ハヤカワ文庫

私が生まれて初めてユーロを使ったのは、昨年の夏に欧州に出張した際、乗り継ぎをしたフランクフルト空港のロビーのスタンドで買ったコーヒーでしたが、たしか一杯三ユーロ五十セントでした(関連記事『為替に対する考察 -欧州にてー』)。愉快な傑作推理小説『ミルク殺人と憂鬱な夏』は2003年にドイツで出版されてベストセラーになったそうなのですが、ふーむ、してみるとデフレで苦しんでいるのは日本だけではないのかな。

さて、先日の記事に書いたゼネラル・ミルズ(GIS)とThe 3rd Man's  Fundのコア銘柄ポジションを争っているJMスマッカー(SJM)の2016年度をあらためて振り返ってみたいと思います。

当銘柄は2015年3月に獲得しています(赤丸で囲っているあたりのタイミング)。




最近のRevenueの推移。


数値のソースはモーニングスターのサイト
こうして眺めてみると、トップラインの成長は事業の買収によってもたらされていますね。

大きなところでは、2008年にコーヒーのFolgersをプロクター・アンド・ギャンブル(PG)から、そして2015年はペットフード・スナックのBig Heartを買収。というわけで2016年度のRevenueがグーンと伸びているのは、Big Heartの売り上げが加わったからです。

ではセグメント別に見てみましょう。

SJMの売り上げの29%を占める家庭用(ホーム)コーヒー。アニュアルレポートによると、米国人の80%近くがコーヒーを嗜み、5杯飲むうちの4杯は家で楽しんでいるのだとか。SJMはこの4杯の27%のシェア($ベース)を握っています。

以前『コーヒーブレイク その2 - JMスマッカー (SJM) -』で書いたワンカップ(注、お酒ではない)分野の市場の伸びがすごく、SJMもダンキンドーナッツのK-cupの調子がよさそうです。

2017 CAGNYのプレゼン資料によれば、トラディッショナルな家庭用コーヒーのカテゴリーに限ると、我らがFolgersは55%のシェアを握っています。ちなみに2位の企業は23%ですが、企業名は明記されていません。たぶんネスレだと思いますが。

ああ、FolgersのプレミアムのSimply Gourmetシリーズのナチュラルバニラがとてもよさげだ。今度米国に行く機会があったら是非自身のお土産に買って帰りたい。あと、Cafe Busteloもクールだ。日本でもイケるんじゃないか。Tシャツ欲しいなあ。おれが留学していたころ(90年代前半)は、缶コーヒー?アイス・コーヒー?なにそれ?っていうのが米国人の標準的なリアクションだったんだけどなあ。


欧州にて、SJMとはあんまり関係ありません
次に同じく売り上げの29%を占めるUS retail Consumer Foods、ピーナツバターやジャム、冷凍サンドイッチ、ジュース等(もともとSJMはジャムが祖業)。

そのジャムでは45%、ピーナツバターでは37%のシェアです($ベース、2017 CAGNYのプレゼン資料より)。

缶ミルク事業を売り払った模様です。よくわからんけどコンデンスミルクみたいなやつかな? 私が子供だったころは、イチゴはマズくて、甘ーいコンデンスミルクでもかけないと食えたもんじゃなかったですね。最近はイチゴそのものの品質が著しく向上して、なにもかけないほうが美味だよなあ。

米国でも事情は同じなのだろうか。

いちおう米国には留学して4年半ほど住んでましたけどね、男の学生にとってイチゴなんて無用の長物ですからね。彼の地でイチゴを食った記憶は、ほとんどありません。

ペットも、売り上げの29%を占めます。SJMはドッグ・スナックで#1、ドライ・キャット・フードで#2のシェアのブランドを擁しています(アニュアル・レポートより)。
欧州にて、
SJMとは関係ありません

米国家庭の2/3以上がなんらかのペットを飼っており、市場はどんどん拡大しつつあります。特にミレニアル世代と、子育てが終了して一人で家にいる人々でその傾向が顕著なのだとか。

人口動態のページでも確認できますが、米国では今後世帯数の増加も見込まれ、なおかつ高齢者の絶対数も増えるので、いいんじゃないですか。

ただ競争もかなり熾烈なようです。SJMは、ほかの事業同様、じーっくりとペットも育てていく方向のようです。年4-5%の売り上げ増加を予測しています。

というわけで、上記で述べてきたようなSJMの製品の少なくとも一つは、93%の米国家庭で見つかるんだそうです。ふーむ。残念ながら、私が留学中、どのブランドのコーヒーやジャムを使っていたか覚えていない・・・

えっと、それから残りの売り上げ13%はInternational and Foodserviceとのことです。主にカナダ、メキシコ、それから中国とのこと。中国⁉

なんかオートミール関連を中国でやってるみたいやけど、いかんせん、Internationalの80%はカナダなので、SJMもれっきとしたガラパゴス in Americasですね。

財務3表 (『コーヒーブレイク その2 - JMスマッカー (SJM) -』でレビューしたのと同じです。数値の元ネタはアニュアルレポート)





純利益の利回りは4%。売上に対するコストの比率はゼネラルミルズ(GIS)と同じ。
FY20末までに年間$300Mのコスト削減効果を狙っているとのこと。おそらくBig Heart買収前と比較して。

ここらへんは別の機会にGISと比較してみようと思う。

情報開示:この記事を書いている時点でSJM22株、GIS49株保有

Tip

過去5年のトータルリターン


アニュアルレポートより

過去15年間のトータルリターン


2017 CAGNYのプレゼン資料から抜粋

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