といっても何回か書きましたが、アニュアルレポート読んでいても面白みがなく、積極的に調べる気力がわきません。例えば先日レビューしたヘルメリッチ・アンドペインだと、「なあ、俺たちのドリルはさあ、けっこうすげーんだぞ・・・」的な愉快な感じなのですが、エクソンモービルのレポートは、『2040年の世界と私たちの暮らし』と題したような、優等生の作文みたいな印象です。
しょうがないんで、エクソンモービルのオイル色に染まった眼鏡を通して2040年の世界を2010年と比較してみましょう。ソースはアニュアルレポート2013年度版です。
- 全世界の エネルギー需要は35%増えている
- それは主に発展途上国の成長(特にアジア地域)によってもたらされる
- エネルギー需要の60%が、オイルとガスで占められる
- オイルの需要は25%増え、それらを満たすためには非在来型オイル(タイトオイル、サンドオイル、深海等々)に頼らざるを得ない。タイトオイルの供給は10倍にもなる。
- ナチュラルガスの需要は65%増え、そのうちの65%は非在来型ソース(シェール等)になる。
- 資本主義経済発展とそれに伴うエネルギー需要の増大をささえるのは、とてもチャレンジングである。その使命を全うできるのは、だれあろう、我らがエクソンモービル帝国である。
あとアドボカシーを通して世論の誘導や政策決定に大きな影響を与えるエクソンモービルですからね(詳しくは『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社))、そのアニュアルレポートにどれだけの客観性があるかは要注意です。つまり、そうなるであろう世界ではなく、エクソンモービルが作り上げるだろう世界を述べているのかもしれない。
エクソンモービルが以前にレビューしたコノコ・フィリップスと異なるのは、Upstream(探鉱・生産)だけでなくDown stream(精油・販売部門)や、Chemical(石油化学製品)といったセグメントがあることです。それぞれのEarning(income tax後)とCapital and Exploration Expenditures(Capex)は以下の通りです。
アニュアルレポートより |
Revenueと一株当たりの指標の推移です。
ソースはモーニングスターのサイト |
コノコ・フィリップスとは逆にOperating marginが金融危機以降下がりっぱなしですね。最近はフリーキャッシュフローが低めです。キャッシュフロー推移はというと、
ソースはモーニングスターのサイト |
資源株式に長期投資するに当たり、挙げられる懸念点は以下の通りです。それに対する私の素人的な考えを述べます。
1)いずれ化石燃料は枯渇するのでは?
2008年のシェールガス革命以降ではあまり聞かなくなりましたが、折に触れて資源の枯渇説は浮上してきます。私も資源の埋蔵量が、需要に対してどうなのかは知る由もありません。ただ私が知っているのは、私が子供のころ、ニュースでひっきりなしに石油はあとXX年分しかとれない等々刷り込まれたけれど、それから30年たった今、まだ枯れている気配はないことです。
2014/10/16追記:逆にシェール革命後の供給過剰感があって、直近ではオイル価格が下落していますね。
2)エコカーをはじめとする、エネルギー消費の効率化による需要低下
たしかにインパクトはあると思います。でもね、それで不安に思ったら、じーっくりと人口動態予想を眺めてみましょう。世界全体、特にAsiaや、Less Developed Countories等々。車社会に住む、基本的にイケイケどんどん気質の米国人も馬鹿になりません。シェールでガス代が安くなったら、米国人のエコ意識は雲散霧消になりそうな気がするな・・・彼らは隙あらば、プリウスよりトランザムな人々である。
3)こちらで述べたエネルギー業界への風当たりの強さ
まったく環境団体の意見は正しい。私もおおむね彼らに賛同するし、個人的にも日々エネルギーの無駄遣いをしないよう心がけています。ただし、正しい意見が資本主義の先兵を打ち負かした例は、ほとんどないのではないか。
なにより結果として、資源株式のリターンは長期になればなるほど、S&P500を上回っています。
アニュアルレポートより |
情報開示:特になし
Appendix
ソースはYahoo! Finance、項目は適当にまとめています |
ソースはアニュアルレポート、項目は適当にまとめています |
ソースはモーニングスターのサイト、負債の単位は$ Million |
0 件のコメント:
コメントを投稿