2014年10月15日水曜日

2040年の我らが世界 -エクソンモービル (XOM) -

過去4回にわたってレビューしてきた資源株式ですが(銘柄分析は2つだけですけど)、今回でいったん終了です。あ、BHPビリトン(BHP)はいずれレビューするかもしれないけど。というわけで資本主義における一大帝国、32年連続増配当中のエクソンモービルの登場です。

といっても何回か書きましたが、アニュアルレポート読んでいても面白みがなく、積極的に調べる気力がわきません。例えば先日レビューしたヘルメリッチ・アンドペインだと、「なあ、俺たちのドリルはさあ、けっこうすげーんだぞ・・・」的な愉快な感じなのですが、エクソンモービルのレポートは、『2040年の世界と私たちの暮らし』と題したような、優等生の作文みたいな印象です。

しょうがないんで、エクソンモービルのオイル色に染まった眼鏡を通して2040年の世界を2010年と比較してみましょう。ソースはアニュアルレポート2013年度版です。
  • 全世界の エネルギー需要は35%増えている
  • それは主に発展途上国の成長(特にアジア地域)によってもたらされる
  • エネルギー需要の60%が、オイルとガスで占められる
  • オイルの需要は25%増え、それらを満たすためには非在来型オイル(タイトオイル、サンドオイル、深海等々)に頼らざるを得ない。タイトオイルの供給は10倍にもなる。
  • ナチュラルガスの需要は65%増え、そのうちの65%は非在来型ソース(シェール等)になる。
  • 資本主義経済発展とそれに伴うエネルギー需要の増大をささえるのは、とてもチャレンジングである。その使命を全うできるのは、だれあろう、我らがエクソンモービル帝国である。
・・・すみません、最後の一文は私の創作です。ですが、こんなニュアンスが行間からヒシヒシと伝わってきます。

あとアドボカシーを通して世論の誘導や政策決定に大きな影響を与えるエクソンモービルですからね(詳しくは『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社))、そのアニュアルレポートにどれだけの客観性があるかは要注意です。つまり、そうなるであろう世界ではなく、エクソンモービルが作り上げるだろう世界を述べているのかもしれない。

エクソンモービルが以前にレビューしたコノコ・フィリップスと異なるのは、Upstream(探鉱・生産)だけでなくDown stream(精油・販売部門)や、Chemical(石油化学製品)といったセグメントがあることです。それぞれのEarning(income tax後)とCapital and Exploration Expenditures(Capex)は以下の通りです。
アニュアルレポートより

 Revenueと一株当たりの指標の推移です。
ソースはモーニングスターのサイト

コノコ・フィリップスとは逆にOperating marginが金融危機以降下がりっぱなしですね。最近はフリーキャッシュフローが低めです。キャッシュフロー推移はというと、
ソースはモーニングスターのサイト
ここのところCapexが増加しています。非在来型に対応するため、粛々と設備投資をしているのでしょうか。私の忍耐力がなかったので、どこでどんなことをやっているかまでは、まだ把握していません。でも2040年のあるべき世界を実現させるため、着々と布石を打っている感じがします。

資源株式に長期投資するに当たり、挙げられる懸念点は以下の通りです。それに対する私の素人的な考えを述べます。

1)いずれ化石燃料は枯渇するのでは?
  
2008年のシェールガス革命以降ではあまり聞かなくなりましたが、折に触れて資源の枯渇説は浮上してきます。私も資源の埋蔵量が、需要に対してどうなのかは知る由もありません。ただ私が知っているのは、私が子供のころ、ニュースでひっきりなしに石油はあとXX年分しかとれない等々刷り込まれたけれど、それから30年たった今、まだ枯れている気配はないことです。

2014/10/16追記:逆にシェール革命後の供給過剰感があって、直近ではオイル価格が下落していますね。

2)エコカーをはじめとする、エネルギー消費の効率化による需要低下

たしかにインパクトはあると思います。でもね、それで不安に思ったら、じーっくりと人口動態予想を眺めてみましょう。世界全体、特にAsiaや、Less Developed Countories等々。車社会に住む、基本的にイケイケどんどん気質の米国人も馬鹿になりません。シェールでガス代が安くなったら、米国人のエコ意識は雲散霧消になりそうな気がするな・・・彼らは隙あらば、プリウスよりトランザムな人々である。

3)こちらで述べたエネルギー業界への風当たりの強さ

まったく環境団体の意見は正しい。私もおおむね彼らに賛同するし、個人的にも日々エネルギーの無駄遣いをしないよう心がけています。ただし、正しい意見が資本主義の先兵を打ち負かした例は、ほとんどないのではないか。

なにより結果として、資源株式のリターンは長期になればなるほど、S&P500を上回っています。
アニュアルレポートより
あとは、帝国の野望に、のるか、そるか、ですね。

情報開示:特になし

Appendix
ソースはYahoo! Finance、項目は適当にまとめています

ソースはアニュアルレポート、項目は適当にまとめています

ソースはモーニングスターのサイト、負債の単位は$ Million


 










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