山口氏:でも、やっぱり女性は日本にとって巨大な資源。P39
前回のエントリーでも見ましたが、日本の人口動態は厳しいものがあります。
ソースはUnited States Census Bureauのサイト |
しかし日本の経済を活性化を図るヒントとして、山口氏は米国の女性の就業者と景気動向について述べています。曰く、米国では70年代後半から80年代にかけて女性の就業率が増えていって、ダブルインカムで年収が倍になったのと同じことになった結果、リーマンショック前のバブルへ突き進んでいったとのことです。
確かに、1970年代は米国経済はスタグレーションに苦しみ、株価も低迷しています。しかしS&P500指数が90年代に3倍以上成長した要因の一つに、女性の就業率が挙げられそうです。
山崎氏:別の見方をすれば、女性の労働力を使うことによって、日本経済全体として、もう1度労働力のボーナスを作れるかもしれないということですね。P36では、国別の就業率推移をちょっと見てみよう。
ソースはOECD iLibraryのサイト |
あれれ、こうしてみると米国と日本は2012年時点ではあまり差が無いように見受けられます。米国は2008年から下がってきていますが、サブプライムローンが発端の金融危機の影響と思われますね。もっと最近だと、就業率も上がってきているのかな。
確かにサブプライムがはじける前の米国の女性就業率は60%台半ばだけど、日本も最近60%台にのってきているので、ドラスティックな労働力ボーナスとそれに伴う経済活性化はは期待できないのでは?
ひょっとしたら就業率だけではわからないネガティブな要因が日本にあるかもしれません。この本で初めて知ったのですが「M字カーブ」なる言葉があるそうです。では日本の女性の就業率を年齢別でみてみます。
ソースはLABORSTA Internet |
2000年と2008年の女性の年齢別の就業率を見てみると、30から50歳にかけて凹んでいます。日本では、結婚・出産・子育ての時期に女性が働くのを辞めているケースが多いということになります。これがM字カーブです。
2008年になると凹み具合は穏やかになっています。 これは働いている環境が産休や子育て対応できるようになったこともあるでしょうが、逆に未婚・晩婚や、出産をあきらめるケースが増えてきている可能性もあると思います。
出産のために勤め先を辞めたり、キャリアの追及を諦めたりするとどうなるか。容易に想像できますが以下の通り賃金に男女の格差が大きく出てしまいます。
2008年時点のMonthly賃金。ソースはLABORSTA Internet |
日本では全業種の平均で見ると、女性は男性の65%!の賃金となっております。Financial & Insurance activitiesの業種にいたっては56%!!です。いまの時代、男女間でこんなに仕事の実力差は無いと思いますが・・・。
こうなってくると当然働く女性の購買能力は男性のそれより劣ります。また専業主婦(主夫)になると、家庭単位の購買力にも影響が出てきます。
ちなみに米国でのM字カーブはというと・・・
ソースはLABORSTA Internet |
凹みがほとんどなくMになっていませんね。実態はわかりませんが、私の印象では、米国では出産を理由にキャリアを諦める人は、日本のそれと比べてかなり少ないように見受けられます。私の仕事上の米国本社のカウンターパートの女性(なぜか女性が多い)も、よくマタニティ休暇を取っていますが、例外なく休暇前と同等のポジションに復帰しています。(生まれたばかりの赤ちゃんに起こされたついでに、米国時間の夜中に日本へ仕事の電話を入れてきたりするので、それはそれでこっちは大迷惑だったりしますが・・・)
たとえ日米の女性の就業率はそう大きな違いは無くても、このMの形成で大きな違いが見受けられます。ここらへんをどれだけ修正できるかで①購買力の増加、②出生率のアップが期待でき、日本経済を活性化させることが期待できそうです。
安倍首相は、かなり積極的に女性の登用に力を入れています。とてもいいことだと思います。男女逆差別という意見もあったりしますが・・・私はそれくらいでちょうどいいと考えます。企業は人材の多様化を図らないと生き残るのは難しいと思いますし、長い目で見ると、ポジションがそれにふさわしい器の人材を選ぶと思うので、男女別なくしかるべき人がしかるべきポジションに落ち着くと思います。
いまはそっと女性の背中を押すのがいいのではないでしょうか。列強に追いつけと日本のリーダーが約150年前に「人材登傭」に活路を求めたように。
情報開示:とくになし
山口 正洋 山崎 元 吉崎 達彦
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