三十六箇の角型の、あるいは丸い缶詰の群れを自室の畳の上に積み重ねたとき、徹吉はなにがなし罪深いほどわくわくしてしまって、しばらくレッテルを眺めたり、ずっしりと重いその手ごたえを慎重に測ってみたりした。これは徒や疎かに食べてしまえるものではない。どうしてどうして、戦争はこれからも非常に長くつづくに違いない。すべてが窮迫していき、やがてはこのような食品はあたかも黄金のようにみえることになろう。
北 杜夫 『楡家の人びと 第三部』 新潮文庫北杜夫は人間のユニークな部分を観察し描き出すことにとても秀でている作家だと思います。彼の代表作『楡家の人びと』には、一見して奇人変人ばかり出てくるようですが、私が思うに、楡家の人々が実際に隣近所に実存していたとしても、案外ごく普通の家庭として映るのではないでしょうか。
上記の徹吉は、戦時の食糧不足の折、せっせと缶詰を調達してきては大きなトランクにひそかにため込みます。それが次第にため込むこと自体が目的になってしまい、食べしぶりした結果、戦災でまるごと焼失してしまいます。
投資に関する本をいろいろ読んでいくと、私のような金融・株式には素人かつ銘柄分析やギャンブルの素質が乏しい人間が長期投資を行うとなると、インデックス投資がベストな選択だと書いてあります。チャールズ・エリス氏やJ.C.・ボーグル氏はもとより、わりあい誤解されているようですがジェレミーシーゲル氏もインデックス投資が基本であると説いています。
私も異論ございません。おそらくほとんどの人にとっては、資産配分を決め、株価や不動産、国債価格等のインデックスに連動する投資信託やETFに投資し、定期的にリバランスを行うのがベストな選択だと思います。
コストは安いし、分散が効いていてリスクは抑えられているし、手間暇もかからず、少額から積立も可能です。うーん、文句のつけようがありません。実際、インデックス投資を実行されているブロガーさんのブログを見ていると、この投資方法の欠点を強いてあげるならば退屈であることくらいのようです。
本当にそうかな?
この投資方法は大きな罠が仕掛けられてるように思います・・・私にとっては。
インデックス投資を実践されている方(以下アナタと書く)の目的を、リタイア後に豊かな生活を送るためと仮定してみます。アナタは今から数十年後にそれなりの資産を築いたものとします。それは数千万円かもしれないし、一億円を超えているかもしれない。素晴らしい。
そのために数十年間もの間、アナタは定期的に余剰資金をコツコツと積立てて、定期的にしっかりリバランスしてきました。このようなことができるアナタはきっと真面目で几帳面な方と察します。よくインデックス投資はズボラな方にぴったりな楽ちん投資といわれますが、私はズボラな方に、アナタがやったきたことができるとは思えません。アナタは素晴らしく真面目で几帳面です(念のため、皮肉ではないです)。
さて、そのアナタに、過去数十年間積みげてきた努力の結晶を取り崩す勇気はございますか?
年々、いや月々取り崩されて減っていく努力の結晶を眺めつつ、時には余生の長さとの兼ね合いを図りながら、心穏やかに過ごせますか?
その状態でリーマンショッククラスの嵐が起こったとき、それでもアナタの心は凪いでいますか?
仮にあなたが今現在(2014/4/25)引退5年前で、目標金額の85%くらいの地点までいるとして、残り5年をこれまでどおりに積み立てていられますか?
ほら、中国の不動産がバブルだとか、理財商品がデフォルトだとかというニュースがちらほら聞こえていますよ・・・この聞こえ方は2006〜2007年あたりのサブプライムへの懸念の聞こえ方と似ていますね・・・ひょっとすると、あと5年の努力分が霧散するかもしれませんよ・・・?
私には心穏やかにいられる自信はありません。私にはコツコツ蓄えたものを売り崩していく苦痛と不条理に耐える強さを持ち得ていません。私は簡単に目的と手段を取り違えてしまうくらいに心が弱く、自由を得るための手段が、かえって私を束縛してしまう重りになりかねないのです。
インデックス長期投資は、つまるところ究極のCapital Gain目当ての投資であり、これを有効に活用できるのは、割り切って売る勇気を持っている人だけです。せっかく蓄えたものを売り崩すなんて不条理だと考えてしまいそうな私には、とても合っている投資方法とは思えません。
願わくば、なにも売らずにCash incomeが欲しい、もっと願わくば、そのCashは年を追うごとに増えていってほしい。これが私がインデックス投資ではなく、連続増配当株式に投資をする理由です。どれだけ実現可能かどうかは別として。
かくいう私も確定拠出年金ではインデックス投信を利用しています・・・ま、それしか選択肢はないのだけど。
その状態でリーマンショッククラスの嵐が起こったとき、それでもアナタの心は凪いでいますか?
仮にあなたが今現在(2014/4/25)引退5年前で、目標金額の85%くらいの地点までいるとして、残り5年をこれまでどおりに積み立てていられますか?
ほら、中国の不動産がバブルだとか、理財商品がデフォルトだとかというニュースがちらほら聞こえていますよ・・・この聞こえ方は2006〜2007年あたりのサブプライムへの懸念の聞こえ方と似ていますね・・・ひょっとすると、あと5年の努力分が霧散するかもしれませんよ・・・?
私には心穏やかにいられる自信はありません。私にはコツコツ蓄えたものを売り崩していく苦痛と不条理に耐える強さを持ち得ていません。私は簡単に目的と手段を取り違えてしまうくらいに心が弱く、自由を得るための手段が、かえって私を束縛してしまう重りになりかねないのです。
インデックス長期投資は、つまるところ究極のCapital Gain目当ての投資であり、これを有効に活用できるのは、割り切って売る勇気を持っている人だけです。せっかく蓄えたものを売り崩すなんて不条理だと考えてしまいそうな私には、とても合っている投資方法とは思えません。
願わくば、なにも売らずにCash incomeが欲しい、もっと願わくば、そのCashは年を追うごとに増えていってほしい。これが私がインデックス投資ではなく、連続増配当株式に投資をする理由です。どれだけ実現可能かどうかは別として。
かくいう私も確定拠出年金ではインデックス投信を利用しています・・・ま、それしか選択肢はないのだけど。
情報開示:確定拠出年金は2014年3月までMSCI KokusaiとTopixに連動する投信に70%:30%で積み立てていました。しかしアベノミクスの行く末と中国の理財が気になり、現在ではMSCI Kokusaiが60%、Topix10%、3年定期30%に変更してます。
そもそもこのブレさ加減からして、インデックス投資失格ですね。
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