「ナイフを振るうほうの腕は、いつでも使えるようにしておくこと。そして、防御場(シールド)の発生ベルトはつねにフル充電しておくことです」
フランク・ハーバート 『デューン 砂の惑星』 酒井昭伸・訳 ハヤカワ文庫 *本ではシールドは防御場のルビとして書かれています。
みなさま、現在公開中の映画『砂の惑星』はご覧になられましたでしょうか。私は会社を休んで、家族には内緒でIMAXシアターで観てきました。いやもう圧巻です。これを見ずにSF映画を語ることなかれ、というやつです。
あ、これ、アニメのあれに出てきたやつにそっくり、とか、どこかで見たことがあるとか言ってはいけません。アニメやどこかで見てきた方が、『砂の惑星』に影響を受けて真似しとったんですよ。そう、フランク・ハーバートの原作は、こりゃ、SF小説の金字塔なのです。ぜひ本屋で手に取ってみてください。
で、このハーバート氏が作り上げた世界では、どうやら攻撃よりも防御の技術がすさまじく発達していて、重要施設はもとより、各重要人物ならびに兵士は皆シールドの発生ベルト(映画ではリストバンドっぽかったと記憶している)を身に着けていて、イザというときはそれで身を守っています。
なので宇宙船団から降下してきた兵士達は、ほとんど重火器を使うことなく、剣や槍のようなものを武器とする肉弾戦を行っています・・・というのが私の理解。原作にそのあたりの説明があったかどうかよく覚えていない。いずれにせよ、その戦闘シーンもなかなか痺れます。
株式投資では、投資先の企業が「参入障壁」というシールドを身に着けているかどうかの判断が重要になります。バフェット氏が言うところのWide Moatというやつで、競合他社が一目見ただけで、あかん、回れ右、してしまうような障壁です。
これがないと、その企業はひたすら消耗戦に巻き込まれてしまいます。そうなるともう安売りしか手段がなくなってくるため、社員を使い倒したり、下請けをいびったり、納税額が少なかったり、環境を汚染したりした挙句株価も下がるという、世の中になんの価値ももたらさない存在になり果てます。
一方、何らかの参入障壁を持っている企業は、少々の不況でもそれなりのキャッシュを生み出すことができます。
投資先のひとつにクロロックス(CLX)という生活必需品関連の企業があるのですが、CLXのメインの漂白剤の事業はいつだって安定してキャッシュを稼いでいるようで、それ以外で凹んでいる事業部があると、そこへ稼いだキャッシュをつぎ込んでテコ入れし、その事業部が良くなったら別の凹んでいる事業部にキャッシュを回し、というスパイラルを繰り返して、長い年数で見ると企業全体が成長している、なんてことが見られます。(あくまで私の推察ですが)
おそらくコアの漂白剤の事業において、同社は強い障壁を有していると思われます。
かように参入障壁は大事なのです。
さて最近読んだ柳下裕紀氏の『真のバリュー投資のための企業価値分析』では、参入障壁の定義として以下の七つが挙げられています。
- 規模の経済性
- 製品差別化
- 巨額の投資
- 流通チャネル
- 独占的な製品技術
- 経験曲線効果
- 政府の政策
それぞれの詳細は、ぜひ同書を手に取られたし。
せっかくなのでThe 3rd Man's Fundと『いざ・波』の構成企業を、この七つの視点から評価してみることにしました。かような強固な参入障壁を備えている本は、目を通すだけでは歯が立たず、こうやって拙いながらも少しずつかみ砕いていくしか、自分の血肉にするすべがない。
で、やり方は、この7つの障壁それぞれに対し、対象企業が備えていると確信している場合は5点、わからない場合は3点、ないと確信している場合は1点を与えるというものです。
通信簿みたいに1~5点で評価するというのも検討しましたが、やっている最中にワケが分からなくなったため、思いっきりシンプルな方法にしました。
また上記7つに加え、企業の価値創造を後押しする長期的潮流があるか否かも同じ方法で評価しています。さらには参考資料として過去5年のROICの平均の値も載せました。ROICの値はモーニングスターからとってきています。入手できなかったものはN/Aとしています。
で、得点が高かったものから並べた結果は以下の通り。じゃじゃーん。
日本株式ですと、クボタがトップですね。
逆に最下位のプロッグ・ホールディングス(PRG)は、長期的潮流以外全部3点。ということはワカっていないってやつですな。私の悪い癖である、まずは買ってから、調べるのはあとあと、というのがあらわれてしまっています。いや、実力に対し株価は安すぎると思うんだけど。
規模の経済性ってやつが難しく、ま、誰もがうなずくコカ・コーラみたいなのは居ないですが、それでも例えばTSCOのような米国の田舎暮らし向けに特化した小売店とか、洗車・コーティングのKeePer技研のような企業は、そのニッチなエリア・業界に限ると規模の経済性を有しているんじゃないかと判断し5点を与えています。
製品差別化も、単に製品・サービスだけをみるのでなく、総合的に何を提供しているか(安心感だとか、安らぎの空間だとか、人間の本質を刺激するSomething elseなものとか)で判断しています。
巨額の投資も、規模の経済で下したような要素をもとに判断していますね。
流通チャネルに至っては、正直個人投資家レベルではなかなか難しく、例えばZTSとかは強いんだろなとかは容易に想像できるのですが、あとはえいやっと採点。
独占的な製品技術は、上記の製品差別化と同じ視点で。
経験曲線もえいやっと。ちなみに私は2006年あたりから、もうカレコレ15年ほど株式投資をしているのですが、経験を重ねれば重ねるほど悪い方向に向かっているような気がする・・・
政府の政策はシステムD(デジタル化)とXネット(デジタル化と貯蓄から投資へ・・・ってこれはもう死語だっけ?)のみ5。あとは分からん。
長期的潮流はセリア以外皆5。鎌倉新書なんて、これ以外1でもよかったかもしれんな。
ちなみにROICの過去5年平均は本当に参考まで。やっぱこれは歴史を丹念になぞらないと。アボット(ABT)のそれが低い値なのは、それなりのまっとうな理由がある。
てなわけで、これはあくまで現時点での私の判断です。今後はこういう視点をなるべく有機的に取り入れながら、各保有株式を点検していって、ポートフォリオ全体に強固な障壁を築きあげていければ・・・と思います。
シールドの発生ベルトはつねにフル充電しておかなくちゃね。
情報開示:面倒くさいのでSkip
IMAXで観ましょう。でないと後悔しますぜ。
人生を豊かにする、必読の書。
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