2021年4月16日金曜日

河を渡って木立のなかへ その2 ートラクター・サプライ(TSCO)の2020年度-

コロナ禍で生活が一変してから、はや一年以上が経過しました。出社するのは月多くて2回。たまに都心のオフィスに行った際には、なんか周りの風景が珍しくてキョロキョロしてしまうオノボリさん状態です。すっかり出不精になりましたなあ。こんなんじゃ、海外なんて今後行く機会があるのだろうか。最後に米国を訪れたのは、もう6年も前だ。

もし米国に行く機会があったらどうしても訪れてみたいのが米国の田舎暮らし御用達店、トラクター・サプライ(TSCO)です。そこで日本では決して手に入れることができない、ダサいトレーナーシャツなんぞを買いこんでみたい。

個人的に保有株式の中ではもっとも期待しているTSCOの2020年度をレビューします。


TSCOは2020年半ばから断続的に獲得した期待の大型ルーキーで、Mars作戦の旗艦企業でもあります。


TSCOの過去一年の株価推移、赤矢印が獲得のタイミング

アニュアルレポートでは、株主をさしおいてTSCOの従業員(チームメンバー)へのCEOによるメッセージが冒頭に載せられています。

TSCOのアニュアルレポートより

いいですね。素直にいい会社なんじゃないかと思います。County Mileってのがいいね、なんとも。

RevenueとOperaing profitの推移(以下グラフの数値のソースはモーニングスター


トップラインは前年比27.2%増。既存店での比較は23.1%増。この1年で一千百万人の新規の客がショッピングをして、さらに六百万人の客が復活したとのことです。

コロナ禍により加速された生活スタイルの多様化、すなわちリモートワークが拡がることによる田舎暮らしの増加の恩恵を大きく受けているようです。また出費の動向が旅行やエンタメからホーム・ペット関連にシフトしており、TSCOはその需要をフルに受けるポジションにいます。

2020年度は80店舗が新たに増えて2,105店となり、従業員(チームメンバーと称している)も10,000人加わって、41,000人(フルタイムは20,000人)になったようです。

経営効率の指標の推移。


・・・実は言いますとですね、この記事を書きながら観ていたのがNVICの奥野氏が出演されているNews PicksのINVESTORSで、初めて観たのですが今回はROAのお話しでした。それがとても中身が濃いもので、なんかうかつに数字の推移だけ確認していた私は、いまこの時点で冷や汗と脂汗を同時にかく破目になってしまった。Return on 汗と・・・やな。どうしよう。ま、いい。続けよう。

それにしてもSMGの話は面白かった。オレときたら在庫を減らせと財務の連中から毎日ケツを叩かれてるんでね・・・。でも在庫ってのは面白いですね、欠品上等で在庫点数を絞った衣料品メーカーが大成功した例もあれば、SMGのようなところもあり・・・たかだか十年くらいでは古びないモノもあるってことですなあ。

話がそれた。TSCOのそれぞれの指標の推移をみていますとROEがほかの2つと相反して伸びています。ということは経営にレバレッジがかかり始めたということですな。

財務3表をみましょう。数値はアニュアルレポートからで、P/Lはつじつまを合わせています。





BSはホーム・ディーポ(HD)と同じく流動性資産が少ないのですが、たぶん小売店はこんなもんなんでしょう。でも2020年度末にはDebtを増やしてCashを確保しています。

これは『Never bet against America  - サードマンの収入明細(2021年2月)-』で書きましたOrscheln Farmを買収するためだったのではと私は推察します。

***

TSCOは人々に何を提供しているか。

先ほど見たINVESTORSに影響されたわけじゃないのですが、田舎に暮らしている人々の憩い並びにささやかな娯楽の場、空間だと考えます。

田舎だと自然のなかで静かにゆったりと暮らせるメリットはありますが、反面娯楽に乏しいことは否めません。現在ではネットやアマゾン等のサービスが充実していて、田舎で静かに暮らしたい人にとっては快適な環境が整ってはいるものの、それでもたまには人々が集うところに出向いてみたいものです。なんといっても人間は元来社会的な動物なのです。

日本でも地方に行くとドラッグストアや特殊なコンビニ(北海道のセイコーマート)がけっこう元気だったりします。これらは上記で述べたような需要をうまく吸収しているからと考えます。偏屈な私でも、夜の東北の田舎道を長時間ドライブしたときに薬王堂の明かりが見えると立ち寄りたくなってしまうものなのです。そっけない店舗だとわかっていても。

TSCOは田舎暮らしに必要な道具や雑貨、ペット関連用品等々を備えつつ、ついついそんなに何かを買うことがなくても行ってみようかなと思わせてしまう、Rural lifeの調和を乱さない憩いの場的な存在なのだと考えます。

TSCOのアニュアルレポートより

その証拠として、オンラインで注文した客の75%が、わざわざ品物を取りに店舗まで足を運ぶ方法を選んでいます。リアル店舗と消費者の良い関係が構築されていますね。

【RISKS & OPPORTUNITIES】

私は人々の住まいの多様化の一環としての田舎暮らし人口の増加は今後も続き、とくにコロナ禍によるリモートワークへの社会的な理解がこのトレンドを加速させたと考えます。そしてTSCOは絶好のポジションをすでに築き上げています。それは好調な2020年度の結果に如実に表れています。

逆にいうと・・・このトレンドにより、おいしい儲けの源が田舎に存在することを皆が知る所になったとも言えます。これまではニッチなブルーオーシャンだった田舎暮らし小売店のサンクチュアリにも、今後はHD等のジャイアント企業やペットショップチェーンが獲物を追い求めて、河を渡って木立の中へと侵入してくる可能性があります。

巨人が進撃してくる。もっと高い壁を、もっとワイドな堀を!

TSCOのOrscheln Farm買収は、それに対する先手を打ったともいえるかもしれません。

期待をしつつ、今後も数字の動きに目を配りながら、エクスポージャーを上げるか下げるかを見極めていくことになるかと思います。

情報開示:この記事を書いている時点でTSCO207株、HD17株保有

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Appendix



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