投資においては、すべては判断することから始まる。だが、他者の判断を評価していると、自分がどこにいるかわからなくなる。
ジョエル・ティリングハスト 『ティリングハストの株式投資の原則』 長尾慎太郎・監修、藤原玄・訳 パンローリング他の人々、とくに著名な投資家や機関投資家(株式投資に限ります)が、どのように投資先を選んだかというのは、そのポートフォリオの中身以上に興味が惹かれるところです。
特に私がやっている株式への長期投資、基本的にBuy&Holdでポートフォリオの回転率が少ない投資、と似たようなスタンスをお持ちの方々の投資先の選考方法は、とても気になるところです。
ですので昨年、農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)さんの座談会に参加させていただいたときでも、私の質問の一つはそこでした(参考記事『株式への長期投資という選択 その1 -農林中金バリューインベストメンツでの座談会-』)
そのNVICの奥野氏より、京都大学の経営学講義シリーズの最新刊を送っていただいたのですが、その本にNVICの投資先候補企業発掘の手法が書かれてありました。いやあ、助かります。なんせ鳥並みの記憶力の私なので、今振り返ってみても座談会の記憶といえば、あのカツサンドはうまかったな、くらいしか残っていないもので・・・ハハハ。鳥よりタチが悪いか。
かいつまんで紹介します。
NVICの投資先候補発掘は、常に個別企業を起点としているようです。つまり、流行りものの投資テーマ(オリンピックやAI等々)とか、PBR等のスクリーニングから出発しているのではないとのことです。
きっと、どこかのダイトーリョーが、どこかのドクサイシャにヒジ鉄食らわせたからと言って、その影響を予測して発掘開始なんてこともしていないことでしょう。
出発点は
「長期投資に適う面白そうな個別企業」
であり、そこから、その企業の競合や川上・川下産業の企業へと、国境をまたいで調査・分析を勧めていくそうです。
そこで強調されているのが、調査をするにあたり独自の仮説を持つことです。
同書では例としてエマソン(EMR)が挙げられています。もともと日本電産を分析している過程で、同社のある事業の競合先であるEMRの分析を開始します。そしてEMRのプロセスマネジメント事業の優れた経済性(2012年時点で営業利益率18.9%)に注目し、なぜなのかを探ったのだそうです。
そして、ある仮説を打ち立てます。
その仮説を検証するために、世界を股にかけて競合他社を訪ねたそうで。ハネウェル(米)、ロックウェル(米)、シーメンス(独)、ABB(スイス)、ロトルク(英)、SMC(東京)、ファナック(富士の樹海)・・・インディアナ・ジョーンズなみですな。ちなみにファナックの施設はテニス合宿で山中湖に行くときに道に迷った結果、見たことがある。
この仮説と検証のプロセスを不断で繰り返すことにより、ポートフォリオの構築、並びにアップデートがされていくようです。
さて、その仮説とは…それは本を紐解いていただければと思います。
***
私もEMRは保有していますが、こんなことまで考えもしなかったですね。何やっているかよくわからんけど、連続増配数十年だから・・・という理由で獲得しましたね。
さて、ブログを始めてもうすぐ5年ということもあり、ここらで現時点でのThe 3rd Man's Fund、および『いざ・波』の構成企業をどうやって知ったかをまとめておきたいと思います(あくまで投資対象として知覚したという意味)。
ABT:私が以前勤めていたヘルスケア企業の競合先。製品の評判はよく耳にしていた。
ABBV:ABTからスピンアウト。いまだによく知らないし、正直無関心。
AOS:Seeking alphaのROLに関する記事に寄せられた読者のコメントより。
CLX:Dividend Championsのリスト及び米国留学時代(early 90's)の記憶
CVX:Dividend Championsのリスト及び米国留学時代(early 90's)の記憶。
EMR:Dividend Championsのリスト
HP:Dividend Championsのリスト
IFF:ウィッチクラフト作戦
JNJ:私が以前勤めていたヘルスケア企業の競合先+ウォーレンバフェットが保有。私が獲得したのとほぼ同時期に、あの爺さん、手放しやがったらしい。
KO: Dividend Championsのリスト+ウォーレンバフェットが保有。
MCD:Dividend Championsのリスト
MKC:Dividend Championsのリスト
MO:Dividend Championsのリスト+ジェレミー・シーゲル氏が『株式投資の未来』で取り上げていたから・・・。しかし同書を購入したのは、MOを獲得した後なので、『株式投資の未来』について書かれたブログでも読んだのであろう。当初はPMもセットで獲得する予定だったが、回避。
PG:Dividend Championsのリスト
ROL:当ブログの読者からのコメント。ブログやっててよかったぜ。
SJM:Dividend Championsのリスト
WMT:Dividend Championsのリスト+ウォーレンバフェットが保有。
ZTS:ウィッチクラフト作戦
リログループ:投資ブログ(参考記事:『序にかえて』)
日本SHL:投資ブログ(参考記事:『序にかえて』)
ステップ:わりと地元
鎌倉新書:会社四季報2016年新春号
アイアールジャパン:会社四季報2017年夏号
システムディ:日本経済新聞
弁護士ドットコム:妻の友人の会話「知り合いに弁護士いない?」
まあね、普通のサラリーマンやっている個人投資家ですからね。こんなもんですわな。
私としては、投資方針【2018改訂版】にのっとったうえで、良い企業が見つかったら、とりあえず獲得します。なぜなら私には、保有したものでない限り真剣かつ冷静に調べない、という、あまり褒められたものではない性向があるからです。
そして定期的(一年に一回ぐらい)に保有企業の動向を確認し、たとえば営業利益率等が下がってきているのを発見すればさらに深掘りし、その時点でダメな理由の仮説を立てて、さらに時間をおいてもう少しこまめ(四半期ごと)に検証し、いざその仮説が正しいようだったら放出、という感じでポートフォリオのアップデートができればいいかなと考えています。
それにしても、時間もお金も限られた個人投資家にとっては、とっかかりとしてのDividend Championsのリストの活用は悪くない手段だと思います。やはり連続増配年数が長いということは、その企業が長年価値を創造し続けていて、マネジメントチームも株主を尊重しているということの証明になると考えるからです。
情報開示:面倒なのでパス
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