僕が「そうだ、小説を書いてみよう」と思い立ったのはその瞬間のことだ。晴れわたった空と、緑色をとり戻したばかりの新しい芝生の感触と、バットの快音をまだ覚えている。そのとき空から何かが静かに舞い降りてきて、僕はそれをたしかに受け取ったのだ。
村上春樹 『走ることについて語るときに僕の語ること』 文春文庫数日前から天気予報は、3/20の関東地方はよく晴れて四月下旬並みの暖かさになるであろうと予想していた。そしてその日は神宮球場でヤクルトー阪神のオープン戦がある。そんな日に仕事なんぞするのは、神への冒涜というものである。
というわけで有給休暇を取得し、行ってきました、実に久々の神宮球場。
いつ以来だろう・・・
独身時代、とくに野村克也氏がタイガースの監督だったころは、関西出身の虎キチの友人と、しょっちゅう観戦に来たものである。負けるとあまりにも悔しいので東京ドームは避けて、主に神宮球場、たまに横浜スタジアムまで足を伸ばしていたものです。
そういえば、当時合コンで、あんまり関心はないものの脈ありとみた女の子は、必ず野球観戦に誘っていましたね。野球を観たかっただけなんだ・・・スマン。いや、そのあとヤりたかったのもあるけど・・・スマン。
当時スモーカーだった私は、試合の旗色が悪くなると(たいてい悪かったんだが・・・フルタにペタジーニにイシイと来た日にゃ、勝てるわけがない)、内野席の最上段まで登って行って、タバコを吸ったりしていた。スモーカーに対する目線が今と比べて、まだユルかったんだな。ぷかーっと紫煙をくゆらしていたら、千秋さんに睨まれてしまった経験があります。スミマセン。
その頃のこの時期は、こたつに入って、スカパーのSKY Aで阪神キャンプレポートを毎晩2時間ひたすら見続けていたものです。あの赤江さんがリポートしてたんだぞ。
当然出社して、いの一番にやることと言ったら、日刊スポーツのサイトの阪神タイガース情報の確認だったのである。申シ訳アリマセン。
それがいまや、前日の米国株式の株価チェックなんだから、いやはや・・・進歩したのか、退化したのか。
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仕事、ワイルドライフ、二人の幼い子供抜きで、純粋に野球を楽しみたかったのはもちろんですが、もうひとつ、野球場ってのはね、ものを考えるのに最適な場所でもあるのです。3月は、The 3rd Man's Fundの定期獲得の月ですからね、ぽけーっと平和な気分で(まだプレ・シーズンなのだし)野球を観ながら思考を巡らせると、天啓にうたれるやもしれぬ。
なにせ神宮球場といえば、村上春樹さんが、自分が小説家になるんだろうと悟った場所でもあります。なにやら、ヒルトンがヒットを打った瞬間に小説を書いてみようと思い立ったらしい。
ひょっとしたら私にも、「汝、XXXに投資せよ、さすれば莫大な利益が与えられん」的な啓示が舞い降りてこぬとも限らないではないか。ますますもって仕事なんぞしている場合ではない。
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さて、若かりし頃の恥ずかしき思い出がつまった神宮球場なのですが、ずいぶん変わりましたね。
外野にはセブン・イレブンのボックス席が出来ていたり、内野にもハイネケン・パーティ・エリアが設置されていて、外国人の集団が楽しそうにワイワイやっていた。外国人といえば、20年位前から既に神宮休場は観光スポットで有名でしたね、日本のクレイジーな野球の応援を楽しむ場所として。
電光掲示板も見慣れないものになっている。
レフトスタンドの向こうは、新しい国立競技場が姿を現しつつある。それだけでなく、ぐるりと周りを見渡すと、そこかしこに建設現場のクレーンが立っている。
だれだね、日本が衰退しつつあるとほざいている輩は。スマホを捨て、街に出よう。屋根のない野球場に行こう。
内外野の境目付近にはバリアフリーの通路が出来ていて、車いすのファンが野球を楽しんでいる。ほほう。
しかし、土の色の人工芝は勘弁してほしい。正直気持ち悪い。せめてそこはアンツーカーにできないものか。
その昔、新聞で当時のダイエーホークスの社長だか副社長だかが、統計的に見て人工芝のほうがケガが少ない、だから人工芝がいいのだ、と述べている記事を読んだことがある。
かりにその統計データが信頼のおけるものだとしても、そんな結論に騙されてはいけない。私は、人工芝だとケガを恐れる選手が積極的なプレーを躊躇しているだけなのだろうと推測する。結果、ケガは少なくなるかもしれないが、私としてはプロの選手の超人的なプレーを楽しむためにチケット代を払っている。それを見る機会が失われているのだとしたら、金返せである。
東京ドームでの対ヤクルト戦でダイビングキャッチを試みた結果、選手生命を縮めるケガを負った高橋由伸氏のプレーを生で見た私としては、声を大にして言いたい。
外見だけ繕っていないで、さっさと天然芝と土にしろ。
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いやあ、結婚して以来、野球観戦どころか日刊スポーツの確認もすっかりご無沙汰になってしまったので、本日のスタメンで知っている選手は、福留、糸井、梅野の3名だけ。ヤクルトに至っては、青木のみ・・・。
なんか来し方に想いを馳せてしまいますなあ。
しかし変わらないものもある。阪神ファンもヤクルトファンも当時のままだ。こら、阪神ファン、いい加減相手投手がKOされて去っていくときに蛍の光をやるのは、やめたほうがいいぞ。
あと、ビールの売り子たちは、あいかわらず光り輝いている。もちろん一番搾りを頼む。今日はハナッから金に糸目をつける気はない。で、一杯750円・・・。あれ、昔は800円だったぞ、確か。デフレか、それともオープン戦だからか?
安いと思ったのでので、結局3杯も飲む。行動経済学なんぞ、知ったことではない。ここは野球場だ。
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日陰のバックネット裏が寒くなったので、日向の一塁側内野席に移動。回が進むにつれて、なじみの選手が登場する。
鳥谷。このあとタイムリーツーベース。
レフトスタンドの向こうは新国立競技場(建設中) |
I "honto" like ノーミ・サン |
結局飲みすぎて酔っぱらったのと、阪神が初回にホームランを3本くらい打ったりなんかしてヒットにありがたみがなくなってしまったので、沈思黙考どころではなく、また投資に関する「何か」が空から舞い降りてくることもなかった。
やれやれ、3月の定期獲得、どうしますかな。
情報開示:とくになし
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