2018年12月9日日曜日

A.O.スミス(AOS)の追加獲得

2018年第四四半期の定期獲得として、A.O.スミス(AOS)をマネーボールしました。

AOSの最近の状況については『A.O.スミス(AOS)の2017年度』で書いたので、あまり書くこともないのですが、せっかくなのでその歴史をちょっとまとめておきたいと思います。

もともとは、米国はウィスコンシン州ミルウォーキーで、チャールズ・ジェレミア・スミス(C.J.Smith)なる人物が、たった一人でハードウェア関連の仕事を立ち上げたことが始まりです。1874年の夏のことです。ちなみにこの年の夏は、米国初の動物園がフィラデルフィアに開園され、日本では北海道屯田兵制度が創設されたようです。

彼が始めたビジネスは、自転車やベビーカーのメタルパーツのサプライヤーとして急成長し、彼の3人の息子たちも加わります。

三男のA.O.Smithは、米国における自動車生産革命の初期に軽量のスティール製カーフレームを開発し、キャディラックやオールズモビル、フォード等に販売します。そして1904年にA.O.スミスが法人化されます。

その息子、Ray Smithが事業を引き継ぎ、さらなる自動車産業への浸透、及び石油・ガス産業にも手を広げていきます。1920年代には自動車用フレームのフル・オートメーション工場を建設し、8秒にひとつのフレームを生産したそうです。

1933年に醸造タンクにグラスライニング処理を行い始めます。なんせミルウォーキー発祥の会社ですからね。1936年に住居用給湯器のグラスライニング処理のパテントをとります。以降、それが業界のスタンダードになったとか。

1948年に、買収により商業用給湯器市場に参入。

1972年に欧州、1995年に中国、2010年にはインドに進出。2000年代は、その中国をはじめ、北米でも多くの企業を買収し、地歩を固めます。

というわけで、米国の片田舎の3チャン事業が、今日の10,000人以上の従業員を擁するグローバルな給湯器・ボイラー・浄水器の企業になったというわけですね。

***

AOSを保有する理由ですが、大きく分けて2つあります。

一つ目に挙げられるのが、人々の、より良き衛生環境を、というベーシックな欲求に応えられるビジネスをしているから、です。



米国でも浄水器を扱っていますが、特に潜在的なポテンシャルの高いのは、中国における空気洗浄機と浄水器ですね。

私が中国は上海を遊びで訪れたのは2006年か7年なので、相当昔にはなるのですが、聞きしに勝る空気の悪さでしたな。帰国後、そのことを行きつけの散髪屋のお兄さん(私と同年代で横浜は綱島育ち)に話したところ、彼曰く、「いやあ、私も上海好きでちょくちょく行くんですけどね、昔の横浜の空はあんなもんじゃなかったですよ。ちょっとばかし、懐かしく感じますね」とのことでした。

うーん、確かに。『8時だョ!全員集合』のコントの背景の空の色は、いつもネズミ色だったからなあ。

現在は中国の空も随分よくなったそうですが、それでも:


しかし、(二酸化硫黄の)排出のレベルは依然として非常に高い水準にあり、楽観的な政府関係者でも、都市の大気が先進国として許容されるレベルになるまでは15年から20年かかると考えている。また、汚染された河川や湖、土壌の浄化など、他の重要な環境問題への取り組みはほとんど始まっていない。
アーサー・R・クローバー 『チャイナ・エコノミー』 東方雅美・訳 白桃書房

らしいですし、中国が豊かになり、人々の意識が向上すると(最近は観光客のマナーも随分洗練されてきたようで…、日本人が歩んできた道と同じかな)、ますますより良き衛生環境つくりへのニーズは強まりそうです。

うん? 中国での住宅バブル崩壊? 『チャイナ・エコノミー』(原書の出版は2016年)を書いたクローバー氏によると、以下の3つの理由で、中国住宅市場の暴落は考えづらいとか。


  • 2010年の政府による介入により、一般的な集合住宅の価格は、年間世帯収入の7倍未満に下落し、これは東アジアとしては一般的な数字である。
  • 今後15~20年に、都市人口が2億人ほど増えると予想されている。
  • 中央政府は不動産市場の重要性をと経済全体への影響を認識している


こう簡単に書いてしまうとアレなので、詳しくは同書を読むのが一番なのですが、キモは以下のパートですね。


中国トップクラスのエコノミスト、林毅夫(ジャスティン・リン)は、温家宝の発言であるという次の言葉をよく引用する。「どんな問題も、中国の人口を掛け合わせるととても大きな問題になる。だが、その問題を中国の人口で割れば非常に小さなものになる」。
アーサー・R・クローバー 『チャイナ・エコノミー』 東方雅美・訳 白桃書房

つまり中国での個別の問題を、日本をはじめとする各国々の自国の規模で絶対値として計ってしまうと、とんでもない大問題としか思えないのだけれど、そもそも中国という存在そのものがあまりにもでっかいスケールなので、それとの比較でみてみると、じつのところは大した問題ではない、ということが多々あるということですね。

ここの認識のずれが、おそらく書店の戸棚を飾る多くの中国崩壊論の本が出回る原因と思われます。もちろん出版すれば売れるというのが一番の理由ではあるのだろうけど。

そう、そしてAOSを保有する理由としてこれまで述べてきたことも、ささいなことである。

本当の理由はこちら:




豊かさとは、きつい一日の労働を終え、重たい足を引きずって、なんとかマイホームにたどりつき、暖かい湯船に身を沈めて、ふううーっと一息つくことである。これが豊かさでなくって何であろうか。

なにげにやっている日常的な行為ですが、いざこれができなくなった状態を想像してみましょう。iPhoneの新型モデルがどうたらこうたら言うてるレベルではないことは確かです。一部のマニアを除いて。

もちろん、例えば以下の通り収益性を示す指標が継続的に高いのも、それから連続増配25年も保有の理由になりますが、これらはあくまでも補完的ではありますな。



数字のソースはモーニングスターのサイト


AOSは、特に中国におけるビジネスの成長の期待の高さゆえに株価が高めだった傾向があったと思われますが、ここのところの米中関係のプロレス化を受けて、期待がしぼんできた感じがしますね。

こちらは向こう20年以上の保有を見据えています。

いまはトランプさんですが、いずれ女性、ヒスパニック系、ひょっとしたらアジア系の米国大統領もその期間中に誕生する可能性は大いにあります。

しかし人々の熱い湯に対する欲求は変わらない。これは断言できる。

というわけで、今年最後の(といっても今年は2回だけやったけど)定期獲得はAOSとなりました。ババン・ババン・バンバン。ハァー、ビバノノ


情報開示:この記事を書いている時点でAOS90株保有


AOSのその他の記事はコチラ

参考図書

0 件のコメント:

コメントを投稿