Investing is an activity in which consumption today is foregone in an attempt to allow greater consumption at a later date.
Berkshire Hathaway Inc., Shareholder letters, 2017上記引用は、ウォーレン・バフェット氏による株主への手紙2017年の、座談会で話題になった箇所です。
訳すると、投資とは、今日の消費をいったん抑えることで、未来の消費をより豊かにする試み、といったところです。農林中金バリューインベストメンツさん(以下NVIC)のCIO奥野氏は、「現在の購買力と将来の購買力の交換」と解説されています。
私なりに意訳すると、「投資とは、今日余裕を持って生活することにより、未来の生活を優雅にすること」になりますかね。
手元のキャッシュを全部使ってしまおうとする、ある意味カツカツの生活ではなく、余裕をもって一部のキャッシュを投資に回し、それが将来の更なる余裕をもたらしてくれる、つまり余裕が余裕を生むという意味です。
前回の『株式への長期投資という選択 その2 -農林中金バリューインベストメンツでの座談会-』で、日本での株式へ投資が欧米諸国と比べて低い理由の一つとして、日本の株式指数の推移が長期的にパッとしないことを挙げました。私はあと2つ理由があると考えています。
そのうちの一つ目は『カントク・フジノ、頼んだぞ -投資信託積立開始その3 ひふみプラス-』で書いたように、一般的に日本人(列島人)には「今この瞬間を楽しむぞ、宵越しの金は持たねえ、のど元過ぎれば・・・」という気質が大きいと思われ、そもそも長期的な思考を持たないきらいがあるというものです。
二つ目は、お手本となるような人物、つまり株式投資で成功し、なおかつ山っ気のない一般人も関心を持ってしまうような人間的な魅力(Charm)をもつ、米国におけるウォーレン・バフェット氏のような投資家が日本に不在ということが挙げられます。
一般的な日本人にも、利の乗らない貯蓄や投機的な金融商品ではなく、腰の据わった株式長期投資を訴求していくには、この2点を踏まえたうえで、以下のことをNVICに期待します。
その1
まず、「投資とは」の定義を一般の方々に広めるためのフレーズを生み出すことが大事かと思います。つまり「現在の購買力と将来の購買力の交換」を魅力的な言葉に翻訳し、人々に広めていく必要があります。
今は、人々に投資を促進させる方法として、いかにして「儲けるか」か、人生100年時代の老後の不安を煽るか、あるいはインフレのリスク等云々カンヌンと七面倒くさい理屈をもってくるか、しか無いように見受けられます。
「儲けるか」といわれても、多くの人はうさん臭く感じるし(実際うさん臭い事例が日々起こっています)、老後の不安って言われても切り口がネガティブだし、義務感(やらされ感)が出てくるし・・・。それからインフレって言われてもね、そういやぁ、私が投資を始めた2006年あたりも盛んにインフレに備えよ、みたいなことが盛んに言われてましたね。
当時は円安・資源高だったこともあり、来るべきインフレは、私には説得力ありましたなあ。
それから数年後(つまりサブプライム金融危機後)、投資に全く縁のなかった同僚の女性陣が「キャー、やっすーい!(ドル円のこと)」と目をキラキラ輝かせて南の島へ出かけていくのを、私は目をウルウルさせて見送っていたね。
あれから10年たちましたか。インフレは・・・物価をなんとか2%上げようと黒田さんは目を真っ赤にし続けています・・・。
よって、これらでは山は動きません。
なので、「投資とは現在の購買力と将来の購買力の交換」という言葉をもっとかみ砕き、その余裕が将来更なる余裕を生む、といったような、ポジティブなキャッチフレーズを繰り返し繰り返し伝えていくことが重要であると思います。
その2
それをするにあたり、「農林中金〈パートナーズ〉米国株式長期厳選ファンド」は、少しインパクトが弱いかなと思います。座談会でほかのブロガーさんからの指摘があったように、やはり日本人にはまず馴染みのある日本の企業名が取っつきやすいかと思います。United Technologiesより日本電産のほうが親しみを感じるでしょうし、誰しもがInternational Flavors & Fragrances(IFF)をスズキ・モトコ氏のように鮮やかに発音できるわけではありません。
というより、個人的な願望として、「日本株式長期厳選ファンド」を一般向けに出してほしい。いや、まじで。これが出たら、私のムスメの教育資金用にNISAで積み立ている日本株式枠を、「ひふみプラス」からこちらにスイッチすると思います。
「ひふみプラス」のこれまでのパフォーマンスになんの不満もありませんが、懸念事項としてファンドマネジャーが引退等で変わったらどうなる?というものがあります。なにせ「ひふみプラス」の特徴に、組み入れ企業のアクロバティックな回転がありますが、果たしてそれがファンドマネージャーが交代してもうまく引き継がれていくのか不安ではあります。
なんせ、こちらは20年くらいの長期で積み立てていこうとしているわけですから。
しかしNVICの長期厳選ファンドのコンセプトからいくと、その投資方法のDNAは確実に組織の中で引き継がれていくであろうという安心感があります。
あ、しかし、私の積み立てNISA口座は楽天証券なんだな・・・
話がそれました。
NVICの厳選された日本株式への投資は非常に良い実績を残していることもあるし、とてもいいと思うのですが。これを皮切りにNVICのブランド価値を上げ、ひいては米国株式長期厳選ファンドにつなげていった方がよいかと考えます。
それが難しいようでしたら、そのブロガーの方が提案されていたように、国境なき株式厳選投資があれば面白いと思います。上位組み入れ企業に信越化学工業と3Mが肩を並べていたら、それはそれでよろしいのではないかと。
その3
で、やはりバフェット氏による株主への手紙みたいなのが欲しいですね。とくに投資信託を持っていない人でも、思わず娯楽として目を通してみたくなるやつ。長期厳選なので一年に一回くらいのペースでじゅうぶんと思います。
ここで重要なのは、組み入れ企業や投資候補先の紹介よりも、残念ながら手放さざるを得ない企業があった場合の理由ですね。これを丁寧に書いてほしいです。
長期で保有することを前提に厳選した企業を手放すということは、それなりの理由があるはずです。それをきちんと説明して欲しい。似たようなコンセプトのファンドもあるのですが、長期で保有するはずの企業が、あっさりとさしたる説明もなくポートフォリオから消えている、なんて事象が散見され、なんじゃらほいと思って解約した過去があるもので。
あとは上記の本で奥野氏・河北氏がサンドイッチのパンの部分として書かれているようなことを毎年更新して書かれれば、とても魅力的なレターになるのではと考えます。
そしてウィットとユーモアを忘れずに。日本の場合、この手のものはどうしても「投資道」的な辛気臭いご高説になりがちです。休日にそんなもん読みたくないですね。投資家は別に修行をしているわけではありません。楽をしたいのです。
日本には『吾輩は猫である』という、すばらしいお手本があります。ああいうノリが望ましい。
というわけで、次回の記事では、NVICでの座談会を受けて、私自身の今後の株式投資に関して考えたことをつらつらと書いてみます。
情報開示:この記事を書いている時点でIFF15株保有
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