なにしろ人口の半分が二十一歳以下で、若者の三分の二が都会に住んでいる。平均国民所得がわずか二五〇〇ドルの国にあって、これは大変な都市化率だ。私の朝は、午前5時くらいにムスメのミルクを求める泣き声で始まります。ミルクを与える前に、オムツを交換するのは私の役割です。
ルチル・シャルマ 『ブレイクアウト・ネーションズ』 鈴木立哉・訳 ハヤカワ文庫
だいたい一日に10回程度オムツを替えていて、まだまだあると思っていたストックが、みるみるうちになくなり、油断すると在庫切れでえらいことになります。なので近所のイトーヨーカドーの3階の隅っこにあるオムツコーナーへ結構な頻度で出かけることになっています。
そのイトーヨーカドー、1階の玄関から入ってちょっと行った便利なところに介護用品コーナーに年輩の方用のオムツが置いてあったりします。一方赤ちゃんのオムツは3階の隅っこ・・・しょうがない、我々日本人は、現在このような国に住んでいるのです。
かたやフィリピンはこうです。(X軸の値が2国で違うのに留意)。
ソースはUnited States Census Bureauのサイト (2015年5月時点でダウンロードしたデータをもとに作成) |
なにせ向こうでのmore or less normal areaでは子供が市街地のそこらじゅうで駆け回っています。
この写真の通りを、フィリピン人同僚のJくんとぶらぶら歩いていると、いきなりちいさい女の子3人が駆け出してきました。そのうちの一人が履いていたビーサンをもう一人の女の子にやおら投げつけ、それが見事に顔面に命中。
けたたましく泣きわめく被害者を尻目に、ゲラゲラ笑いながら、あと二人の女の子は走り去っていきました。
また少し行った右手の方には建築現場があったのですが、作業員が黙々と仕事するのに混じって、はだしでスコップに上り楽しそうにはしゃぐ女の子がいました。
もう少し先には、路上で放置されている巨大なタイヤの上で男の子たちが車座になってメンコのようなゲームに夢中になっておりました。
みな元気です。
大人たちは、家屋の日陰部分で暑さを逃れでぐったりとしていたり、無表情に店番をしていたり、意味もなく(というふうに見える)トライサイクルの上でぼんやりしているのですが、子供は暑さをものともせず走り回っています。
ああ、私が子供のころも、こういう週末の午後の風景はありましたね。実家の前は古い町工場で、その前に横積みされていたプロパンガスの缶の上に座り、兄弟や近所のみんなとコマを回したりかくれんぼをしていたもので、そのわきを自転車に乗る中学生の途切れることのない列が走って行ったものでした。
今はその町工場は空き地になり、たまに帰省しても路上で遊ぶ子供の姿を見かけることはめったにありません。めっきり人口の少なくなった街中に、山から下りてきたシカのふんが発見されることも珍しくないそうです。
さて、フィリピンにとってもっとも需要の高い製品の一つにオムツが挙げられるのは、その人口ピラミッドと街の様子を見る限り明白で、さきのイトーヨーカドーと違い、どどーんと通路の目立つところに特設コーナーがあったりします。
まあ、人口のうち、どれだけがこれから見るようなオムツを購入できるのかという問題はありますが…
左の写真はキンバリークラーク(KMB)のオムツですが、これだけではなくDrypersのオムツのタワーもありました。
DrypersはSCA Groupの製品ですね。
調べてみたところSCA Groupは、44,000人の従業員を擁するスウェーデンの会社で、どうやら莫大なエリアの森林を所有しているらしく、そこからとれる材木を利用して(ここのところは私の推測)、ティッシュやオムツ、包装紙等の紙製品やちょっとした木材の家具を扱っているようです。
Nasdaq OMX Stockholmに上場していて、約100か国で製品を販売しているようですが、ざっとそのブランドを見ても私にはピンと来るものはなく…日本では存在感薄いのかな。
ただその事業内容からしてKMBとわりと真っ向勝負な感じです。この2社の製品のタワーがそびえ立っているのを見ると、まるで仁王門ですな。
その特設コーナーをすり抜けて奥へ進んでいくと、以下のような風景が広がります。まずは高級スーパーRustan'sの売り場。
手前がパンパース、その奥にHuggies、さらにマミーポコ |
左にDrypers、右にマミーポコ |
これが日本人が多く住むエリアのRustan'sだと、マミーポコが一番目立っていました。ただ面積的にはSCAのDrypersと、その廉価版と思しきEQ dryが多かったように思います。
庶民的スーパーのSMになると、ユニ・チャームが少なくなり、SCAのEQが目立っていました。SCAが一番、すぐ背後にKMBとPG、遅れてチャームといったところです。
手前にEQ、次にパンパース、フロアディスプレイはHaggies、それらに混じりその他の企業のブランドも散見 |
そして最後に…その一応高級なショッピングモールにあるタイレストランで夕食をとっていた時のこと。
隣の席で赤ちゃんがけたたましく泣き始めたので何かと思ったら、なんとおばあさんとおふくろさんが、おもむろに赤ん坊のオムツを変え始めたではありませんか。
オムツ交換を手伝うウェイター(緑のシャツの方) |
若いウェイターのお兄さんがダッシュで駆けつけてきたので、注意するのかと思いきや…
…せっせとにオムツ交換を手伝い始めやがった。
おい、おれは隣でタイ風シーフードチャーハンを召し上がっている最中やで…
これは赤ちゃんがどのブランドのオムツかを探る絶好のチャンス! と思ったものの、見たところ大きいほうをやらかしたっぽいので、遠慮しました。さすがに私もそこまで身を挺してブログネタを仕入れるほど熱心にやっているわけではありませぬ。
それにしてもレストランの公衆の面前でオムツ交換ですか…ウェイターのサポートつきで。日本ではショッピングモールのフードコートでオムツ交換する光景はもう見れないよな、さすがに。我々はもっと先進している国民なのだ。
でも先進した結果、子供の声を騒音として排除するまでになってしまっている。私は国の借金の行く末よりも、こっちのメンタリティーの行きつく先のほうが怖いですね。
情報開示:この記事を書いた時点でPG50株保有
フィリピンはアメリカとの関係が深いからPGとKMBが圧倒していると勝手に思っていましたが、そうでもないんですね。
返信削除それから、SCAなんて初耳です。H&MやIKEAとかスウェーデン企業ってけっこう世界に羽ばたいていますね。
ice_skaterさん、私もSCAは初めて知りました。のちに書きますが、欧州企業ではもうひとつ、フィリピンで圧倒的な存在感を誇っているのがありました。あの、思わず、Do you know where you going toと口ずさんでしまうやつです。
返信削除ネスカフェのCMソングですね。懐かしすぎます。
削除