2015年1月13日火曜日

クロロックス(CLX)のレビュー(2015年1月)

“ ドイツ軍が第三空軍捕虜収容所の案を出したとき、その意図は、捕虜となった連合国の空軍将校たちを、脱走が困難な収容所ひとつに集めてしまうことだった。それが誤りだった。そうすることで、通常ではありえない多国籍の人材集団をつくりだすことになり、ロジャーとX組織はそこから人を選ぶことができたからだ。

サイモン・ピアソン 著、吉井智津 訳 『大脱走 英雄<ビッグX>の生涯』 小学館文庫
以前にクロロックス(CLX)について書いた時に述べたように、私は多種多様な国籍や人種、文化を取り込んだ組織が、一番強く永らえると考えています。それは国でいうと、近代のアメリカ合衆国が証明しています。


さて、私がCLXを獲得したい理由は、37年連続増配当中という事実以外に2つあります。

まず一つ目は、そのAnnual Reportでも強調しているように、マネージャーや従業員の人種の多様性が米国のそれより上回っていることと、従業員の満足度が高いことが挙げられます。これは組織として強いことを証明していると思います。

もう一つは、現在のところCLXのマーケットが、わりあい北南米に限られていることです。

私は、今年から欧州経済は、ますます悪いことになり、その状況は結構長引くんじゃないかなあと考えています。欧州内では、ギリシャが懲りていないし、そもそもユーロっていう通貨自体が無理がありそう。

それに付け加え、汝の隣人を程よく愛せでつらつらと書いた通り、欧州はロシア・中東・アフリカ・南米と大いなるしがらみを抱えています。おまけに2014/10/21の毎日新聞の記事にもあるように、中国にもどんどん依存しつつあるようです。

これらの国・地域のどこかが何かをやらかすと、それらが欧州経済にもたらすネガティブインパクトは、米国へのダメージより、けっこうでかいと思います。

ヨーロッパの諸君、植民地主義の時代に図に乗りすぎましたね。いま、そのとばっちりが・・・Written in history textbooks or not, what goes around comes aroundですぜ・・・とか軽口たたいていたら、フランスで悲惨な事件がおこりました。当ブログとしては、あくまで経済と株価についてのみカバーしているつもりです・・・。

€で上場している企業は、しばらく様子見です。まだまだチャンスは先にあるんじゃないかな。

てなわけで、そうなってくると両大洋に隔たれたAmericasを主戦場としているCLXは相対的によい投資対象になるわけです。おなじく炭酸飲料業界のAmericasにおけるガラパゴスである、私の愛するDPSと共に。

Revenueと一株当たりの指標の動向。


数値のソースはモーニングスターのサイト
EPSが伸びていないので、通常のPayout Ratioが高くなりつつあります。

若干脆弱気味なBSをキャッシュフローと共に見ると(数値はAnnual Reportより):



流動性負債が増加しているのは、長期負債の返済期限が迫ってきたためで、とくに負債そのものが増えているわけではないようです。また借り換えみたいなことをするのか、ちょっと興味あります。

Revenueの鈍化が前回レビューしたときの懸念だったのですが、そのあたりは最近どうなのでしょう?

その前に、強い組織には、構成人員の多様性に付け加え(というかそれが故に)、それらを率いるリーダーが必要不可欠です。第二次世界大戦中に空前の脱走計画を指揮したロジャー・ブッシェルの人物評に以下のようなものがあります。

「彼は明晰な頭脳の持ち主で、自分がしたいことと、したくないことがはっきりわかっていた。そして、われわれに求めることも - そして、それが非常に重要だった。なぜならみな自分たちがすべきことをいつもわかっているとは限らなかったし、彼がそれを明確にしてくれたからだ」” 『大脱走 英雄<ビッグX>の生涯』より)
CLXのCEOであるDonald R. Knauss氏は、なすべきことがわかっているのでしょうか。彼は2015年をthe year of valueと位置づけています。2020年のゴール①Net salesの年間成長3-5%、②マーケットシェア拡大、③EBIT marginの年成長25-50ベースポイントの達成を掲げ、そのために4つのストラテジーを掲げています。

そのうちの一つであるブランド力の拡大がキーなんじゃないかなあと、私ごときはエラソーに考えたりするわけですが、2015年度の第一四半期の結果を見てみると、うーむ、4つのセグメントのうちHouse HoldとInternationalはよさそうなのですが、CleaningとLifestyleはVolumeだけでなくPricingもだめっぽい・・・まあ、全体では為替を度外視すると対前年比3%の成長っぽいですが。

Pricingがアレってことはブランドの威光が、いまひとつなんじゃないかな。

今年は為替の影響を含めると、Sales Growthは横ばいという見込みですが、なーんで株価がこんなに高くなってしまっているのか、とっても不思議。なんとなく大企業の老舗連続増配当株式は全体的に割高感が漂ってきた気がするなあ。

もうしばらくCLXも様子見になりそうです。

このままだと今年はオイル一辺倒になるやもしれぬ。


情報開示:DPS95株保有

ひとりごと:日本企業の生産性が低いのは、人材の多様性が乏しいのと、現場レベルでは何をしなければならないかを把握しているが、上層部に何をしたいのかわかっている人が少ないからだと思います。

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