2017年1月28日土曜日

老舗連続増配企業に祝福のKISSを その2 -プロクター・アンド・ギャンブル(PG)-

 彼女は集計をつづけ、彼はかごを持たずに商品棚を見てまわった。男はポール・ニューマンも、どんな醜男も、それだけはおなじだ。安全剃刀の替え刃を買いに来て、最後はかかえきれぬほどの品をかかえこむくせに、決してかごを取ろうとしない。
ジョン・ル・カレ 『ナイト・マネジャー』 村上博基・訳 ハヤカワ文庫
男たちの足をしぶしぶドラッグストアへ運ばせる、ジレットの替え刃を擁するプロクター・アンド・ギャンブル(PG)が復活の兆しを漂わせています。ああ、FY18のQ2の結果が出る前にこの記事を書きたかったな。

FY16までの数字を見てみます。断りのない限り、数字のソースはモーニングスターから。

まずはRevenueとOperating Income。




トップラインは例によって為替や事業の売買で左右されるので、まあ、ふーんと眺めるとして、ここで特筆すべきはそのOperating Marginの回復です。


数年来アニュアルレポートではひたすら組織の効率化を謳っていましたが、その効果が出てきたのでしょうか。


PLの推移をみると(数字はアニュアルレポートより、おおまかに見るのが目的なので数字は多少のつじつま合わせがあります)。




FY15から16にかけて、COGSは11%減、販管費は8%減です。


ただFY15はベネズエラ関連で特別なコストがかかっていたようですが。


アニュアルレポートを読んでみると、FY16では乾電池のDuracellの売却が終了し、41のBeauty関連のブランドをCoty Incへの売却を交渉し(FY17 Q2で売却したのかな)、さらにはあまり儲けの出ない事業エリアから撤退したとのことです。


強みを持っている10のカテゴリー分野内でブランド数を65まで絞った模様です。


ブランド数や事業だけでなく、組織自体も再構築中で、2011年からnon-manufacturing roleを25%減らし、事業の売却を含めるとFY17中にこの数字を35%までにもっていくのだとか。


逆に言えば、こういう整理整頓をまだやっているのでトップラインは堪忍してね、みたいなことをCEOのTaylorさんは述べています。ですがその数字もOrganic salesでみると年の前半は前年比でフラットでしたが、後半は1.5%伸びているとかで。


ほほう。


もうすこし詳しく見るためにPGのAnalyst Day 2016 Presentationを見てみます。


嬉しい兆候としてFY18のQ1にOrganic Volumeが回復してきています(slide 9)。

Fabric & HometとBaby, Feminine, & Familyが+4%、Beautyが+2%(がんばれSKII)、Healthが+5%、Groomingが+3%。

この傾向はQ2も続いているようです。


Operating MarginもFXの影響を除くと+120bps (slide10)。


物流網もすっきりさせるようです。



Analyst Day 2016 Presentationより抜粋
以前『サプライチェーン(SCM)を制する者は』で書いたようにPGのSCMはすでにとっても評価されているのですけど、さらなる効率化を追求しているようです。こりゃ、すごい。

あとマーケティング関連のコストも徹底的に見直し中のようで、いや、ゼロベースで聖域なしの再構築ですな。



Analyst Day 2016 Presentationより抜粋
PGはThe 3rd Man's  Fundのなかでもっとも退屈な銘柄だったけど、もっとも確かな期待がもてる銘柄に変貌しつつあります。

リスクというと、シン・ダイトーリョー誕生による中国との関係悪化くらいですか。


このプレゼン資料でおもしろかったのはオムツ。パンパースはHuggiesを引き離しつつありますね(slide 105)。日本のシェアは、これって本当かな(slide 106)。なにぶん最近の私をドラッグストアに誘うのは、ジレットの替え刃ではなくムスメ用のオムツなので、ちょっと関心が高い。


で、今後の配当は?


財務諸表を眺める限り、増配余地に関してはそんなに心配ないように思えます。FCFが潤沢にGenerateされていますし。







Q1での追加獲得候補です。


情報開示:この記事を書いている時点でPG83株保有。


このブログでのPGのその他の記事はこちら


Appendix 配当性向の推移



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