「リヒテンシュタインに行く理由は二つあると聞いている。一つは、あそこで毎年出している郵便切手を集めに行くこと。もう一つは、脱税会社を設立するためだ。お前さんのいう男は切手蒐集家のように思えないね」
ルイス・ケインのセリフ、ギャビン・ライアル 『深夜プラス1』 菊池 光・訳 ハヤカワ文庫、以下当記時の茶色の箇所は全て同作品からの引用最近「パナマ文書」の発覚による騒動のニュースを見ることが多いですね。
私は昨年度に株式の売却益による税金が100万円近く発生しています。これはThe 3rd Man's Fundの範囲外で起こっており・・・いや、もう、改めて確定申告の計算していてアタマを抱えてしまいましたね。本気で何年かぶりにマルボロを吸いたくなった。(参考記事:煙草が目にしみる 2 ‐アルトリア・グループとフィリップモリス・インターナショナルの15年の結果‐)
とある事情があり、不承不承ある保有株式を全部強制的に売却せざるを得なくなり、利益が確定してしまったのですが、しっかり計算した結果は漠然と想像していたより遥かに儲けが多かった。なぜこんなことが起きたのか・・・は、数年後をめどに『個別銘柄投資の罠』とでも題して書こうかなと思っています。
で、その株式は、同銘柄を同株数そっくりそのまま買い戻すという選択をしたので、手元のキャッシュが増えたわけでもなく・・・いや、しんどい。
てなわけで、税金に関してはけっこう過敏・・・、怒り心頭モードで、
そもそもなんでタックス・ヘイヴンなんてものがあるんだ?
第二次世界大戦で工作員としてフランスのレジスタンス活動にかかわっていたイギリス人、ルイス・ケインによると・・・
「<ルイスケインのセリフ、前略> 彼はカスパール・AGに関係しているらしい」
「AG?」
「アクテインゲゼルシャフト、株式会社だな。カスパールは巨大な持株会社で、販売会社を兼ねている。ヨーロッパのこのあたり、フランス、ドイツ、イタリアにたくさんの電子工業関係の会社を持っているんだ。これらの会社が製品を原価でカスパールに売る。利益がないから税金は払わない。カスパールが製品を売って利益を上げる。ところが、リヒテンシュタインにはこれといった所得税がない。だから連中はどこでもいっさい税金を払わなくてすむ。とくに新しい手口ではない」
ふーむ。で、名うてのアメリカ人ガンマン、ハーヴェイ・ロヴェルも私と同じ疑問を抱く。
給仕が去るとハーヴェイが言った。「それでリヒテンシュタインはなにか得るところがあるのか?」
「印紙税少々と低率の資本税、しかし弁護士連中は商売にことかかないね」酒をくちにした。
「とにかくそういう会社からなんらかの収入は得ているわけだ。さもなければまったく縁のない企業だ。聞くところによると、そんな外国企業が六千ほど登記してあるらしい」
彼がほほえんだ。顔の片側だけをねじるようなゆっくりした微笑であった。「知らなかったな。あそこは毎年新しい切手を発行して食っているんだと思っていたよ」
リヒテンシュタインはフランスからみて“スイスの向こう側でオーストリアとの間”にあるヨーロッパの小国です。読まずに死ねない(by 内藤陳氏)冒険小説の名作『深夜プラス1』は1960年代に書かれた小説ですが、いまも事情は同じなのでしょうか。
パナマも同じような方法で食っているんですかな。なんせ切手すらあんまり発行してそうに無い。
いずれにせよ、まだまだ資産を隠していた人々の名前が公表され続けるようですね。“あのデカイやつ”1932年型のモーゼルで掃射してやりたい。
☆☆☆
「鉄砲うち? 四月だよ? 射つものなんかいないぞ」
私はまた肩をすぼめた。「いないこともない、ということだよ」
連続増配等株式界隈では四月に射つものがいたようです。それも大物。
アボット・ラボラトリーズ(ABT)がセント・ジュード・メディカル(STJ)を買収するというニュースがありました。
びっくりぽんやで。あんまりびっくりしたんで、ハードボイルドな反応ができませんな。
☆☆☆
早川書房創立70周年記念とかで、『深夜プラス1』の新訳が発売になっていました。本屋で見かけて、これまたびっくりぽん。装飾がかっこいい。
うーん、買うかどうか迷うなあ。どうせなら、ル・カレの『パーフェクト・スパイ』を復刊してほしかったなあ。『ナイト・マネジャー』の復刊に関しては感謝してるけど。
情報開示:この記事を書いている時点でABT108株保有
サードマンの収入明細の履歴はこちら。
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