2015年10月12日月曜日

ここで一発掘り当てろ - ヘルメリッチ&ペイン(HP)の獲得 その2-

娘はがたがたと震え、腕を体の前で合わせ、小声で言う。「何なの、これ。いったいぜんたい何がもちあがっているの?」
「なんにも」と僕は言う。
「へええ」
「なんにもないよ、プリンセス、掘っているだけ」
「掘っている」と彼女は言う。
「そう」
「何を?」
ティム・オブライエン 『ニュークリア・エイジ』 村上春樹・訳 文春文庫
前回からの続き。

2015年9月上旬、某所、ドラフトルームにて。第3四半期の定期獲得の候補選択の会議。

3rd man (以下3rd): いやはや、最近K.のムスメは離乳食をがっつり食っているから匂うな。で、Where were we?



E:あらためてヘルメリッチ&ペイン(HP)のキャッシュフローから見てみましょう。最初の調査でも述べたとおり、Capexは大きいです。職業柄、仕方がないとは思いますが・・・


この記事のグラフの数値の元ネタはモーニングスターのサイト
3rd: 資本を食う豚(1)を抱えているな。フリーキャッシュフローが少ない。The 3rd Man's fundのほかの構成銘柄と比べるとかえって新鮮ではある。よくこれで42年も連続増配ができたもんだ。今後の増配は大丈夫かな、とくに最近のオイルをめぐる情勢を考えると…

E: まあどういうふうにキャッシュが流れているのか興味深いところではあります。ぽーる、過去5年のキャッシュフローのウォーターフォールを見せてくれないか。

P: どうぞ。あらかじめお断りしておきますが12年度の配当金額が$30MM(矢印部分)で、前年度($27MM) とほとんど変わらないのですが、なぜかエクセルでばかでっかく表示されてしまってミスリーディングです。直そうとしたけど直らなかったので、そこだけご留意のほどを。


P: まずDebt issuance / payment(債券発行・支払い)が10年度以外ほとんどなし、投資キャッシュフローがときにでかい、しかしそれが少なく済んでキャッシュがあまると、ポンと配当額を上げています。

E: たしかに、13・14年度は配当額がどーんと増えてるな。自社株買いが、わりあい低い。

3rd: シェールで一山当てたから、儲けたキャッシュはみんなで山分けって感じだな。お持ちの株を買い戻しまーす!!なんてよりはわかりやすくて、ワイルドかつ単純明快でいいな。さすが山師、タフガイはそうでなくちゃ。

E: 債券発行とかをあんまりしないところからも、とってもゲンキンな会社ですね。配当金もオイルの染みがついた1ドル札やクォーターのコインとかを現金書留で郵送してきそうな勢いですね。

3rd: 最近の状況下でのキャッシュの動きは?

P: 14年度3月からの四半期ごとの推移です。こちらも矢印部分の配当金がでかく表示されてしまっていますがご容赦のほどを。



P:  15年度の12月から3月にかけてのOther fin activitiesでキャッシュが増えているのはsenior notes(優先債券)で調達している模様です。

3rd: ちょっと配当の気前が良すぎたんでねーの? この状況下でやっぱキャッシュを手元においときたかったのか? 大丈夫かな。

E: まあ、あんまり心配しなくてもいいのでは。同社のバランスシートはとても健全なように見受けられます。

3rd: タフガイにしちゃ、随分保守的な感じだな。Current Ratioは悪くないし。

P: 獲得対象としては…儲かった時に気前よく取り分(配当)をばらまくってことは、あんまり儲からなかったときはその逆、すなわち減配まで行かなくても増配ストップを躊躇なくやりそうなイメージはありますね。

E: ない袖はふれませんからね。そこらへんHPは正直に反応しそうな気がせんでもない。

P: ただ国策を考慮するに、米国は、これからもFrom Carifornia to the NY island, from the red wood forest to the Gulf tream waters (2)内でのオイルやガスの確保を後押しするでしょうし、そうなってくると非在来型油田に頼らざるを得ないです。シェアNo.1のHPの出番です。

E: 今後も米国、ひいては世界の人口は増え続けます。エネルギー需要は増えるでしょう。そして中東をはじめ、米国外の産油国の政情は安定しているとは程遠いです。ここまでオイル関連の銘柄が悲観的に判断されているときに、主に米国内の石油・ガス油田の掘削請負をやっているHPは狙い目と思います。

3rd:ふーむ。痩せても枯れても42年連続増配、業界シェアNo.1の実績、バランスシートの健全性。どちらかというと配当だけでなく、投資方針から逸脱するかもしれんが、ある程度キャピタルゲインもすこしばかり考慮に入れて獲得するのもいいな。

P: 投資方針にはキャピタルゲイン目当ての売却は禁止されていますが…

3rd: しかし保有銘柄の株価があまりにも割高と判断された場合は、売ってもよいと書いてある。

P: ・・・

3rd: よし今回はHPでいこう。

E: 市場全体が錯覚しているというほうに賭けるわけですね。数十年後にどういう結果になりますかね。承知しました。9月28日付で、成行きオファーを出します。

情報開示:この記事を書いている時点でHP50株保有
   
(1) ジェレミー・シーゲル 『株式投資の未来』 瑞穂のりこ・訳 日経BP
(2) 『This Land Is Your Land』 words & music by Woody Guthrie

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