まず進化は系列を作ります。変化したものがまた変化し、変化の上に変化が積み重なっていくので、変化へ系列化せざるをえません。次にその変化の幅がふくらんだり狭くなったりします。これを放散(divergence)と、収斂(convergence)といいます。放散は分枝とも分岐ともいい、種が多様に分化して枝分かれしていく過程です。収斂はその逆で、多様なものが似たものにまとまっていく過程です。進化現象というのは、だいたいこの二つが交互に起きます。一直線の変化というのは起きません。
立花隆 『サピエンスの未来』 講談社現代新書
『サピエンスの未来』で立花隆氏が紹介しているテイヤール・ド・シャルダンによると、万物の進化は放散と収斂が交互に起こるのだそうです。人類に当てはめると、内省的思考をはじめた時点で人間化がはじまり、自然に解体の方向に向かうエントロピーの法則に従って放散されていくものの、言語を獲得して集団での共同思考が始まると放散から収斂へとベクトルの転換が起こり、その収斂は放散を防ぐという消極的なものから収斂それ自体を目的とした積極的なものに変化していき、いずれ臨界点であるオメガ点へ収斂していくそうです。
図にするとこんな感じです。