君は何を求めているんだ。バラ色のもやの中をあでやかに飛ぶ黄金の蝶々か?
レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』村上春樹・訳 早川書房2019年6月16日の日本経済新聞朝刊の一面に『米企業は借りすぎか』と題した後藤達也氏・伴百江氏の記事がありました。
米企業金融の拡大(企業信用の膨張)に対する懸念について書かれた記事です。なんでも米国の信用サイクルは、18年末にかけてITバブル期やサブプライム金融危機前の住宅バブル時のピークを越えたのだとか。
良い機会なので以前『配当、自社株、そして負債 その2』を書いたときに学んだ財務レバレッジを用いて、The 3rd Man's Fundの構成企業をおさらいしてみます。
まずは『配当、自社株、そして負債 その2』を書いたときに調べたインターナショナル・ビジネス・マシーン(IBM)の財務ビバレッジの推移をみてみます。
なおこれ以降のグラフの数値のソースはモーニングスターのサイトからです。
トレンドとしてはレバレッジが大きくなっていってますね。
さて悪名名高い(?)IBMの財務レバレッジを踏まえたうえで・・・
The 3rd Man's Fundの構成企業で比較的財務レバレッジが高いもの(だいたい3倍を上回っているもの)を抽出し、グラフ化しました。ちなみに構成企業の中でも日本企業のものについては調べなかったです。ま、どうせ、優良なのはわかっているので。
棒グラフが途切れている個所は、バランスシートで債務超過となっており、
財務レバレッジ(倍) = 総資本 ÷ 自己資本
の計算が出来なくなっていることを現しています。
以前はクロロックス(CLX)、最近ではアッヴィ(ABBV)とマクド(MCD)が債務超過状態ですね。
私は債務超過が嫌いなのです。それらの企業を選ぶより、他にバランスシートが健全な企業はたくさんあり、どうせならそっちを選べばよいじゃないか、というスタンスです。
実のところ、CLXの獲得にGo aheadのサインが出されたのは、バランスシートが強くなりつつあるのが傾向として見て取れたからです。ゾエティス(ZTS)に関してもしかり。それにZTSは買収等でアニマルヘルスケア分野でのグローバル・ジャイアントに成るべく成長を続けているので、負債が増える理由がちゃんとあるとの判断も下しました。
逆にやたらと負債が増えて言っている割にそれが成長につながる絵が描けない、要は借金して何をしたいのかいまいちわからないコカ・コーラ(KO)は積極的にポジションを減らしていっています(関連記事はコチラ)。
またマクド(MCD)に関しては、金を借りているのは自社株買いをして株主に良いツラをいるだけで、成長につながる施策につながっていないと私は判断しているので、ポジションは減らさないまでも増やすつもりはありません。あくまで現時点では、になりますが。MCDについては最近フォローしていないので、また機会があったらアニュアルレポートを読んでみようと思う。
それではThe 3rd Man's Fundの構成企業以外で、これまで調べてきた企業のうち財務レバレッジが高かった米国企業を並べてみます。
コルゲート・パルモリブ(CL)とフィリップ・モリス(PM)です。PMの財務レバレッジ154.97倍ってすごいですな。
上記にリストアップされている企業の共通点は、生活必需品を扱い、日々キャッシュがはいってきて、景気の好不況の影響にそこまで振り回されない、という点が挙げられますかね。ABBVはちょっと毛色が違うが。
見方1としては、これらの企業の経営陣は最早これといって何の打つ手もないので、株主のご機嫌を取るために、営業利益で生み出せるキャッシュ以上の還元を借金でまかなっているといえます。私のような素人だと、経済の風向きが変わるとキャッシュが回らなくなり、結果株主の期待を損ねて、株価・株主還元的にブサイクなことになりかねないリスクがある不健全な状態に思えます。
別の見方2をすると、たとえバランスシートが弱くても、こういう低金利下にじゃぶじゃぶお金を借りられるだけの信用を持つ素晴らしい企業なので、どんなときでも株主は枕を高くして寝られる企業とも言えます。
なんとなく世間一般的には見方2が強いように見受けられます。ことウォーレン・バフェットが保有するKOはとくに。
Really?
私は懐疑的です。通説にかまけて投資することほど危険なことはない。他人が作った言葉(この場合は「ディフェンシブ株」)に踊らされて投資することほど愚かなことはない。潮目が変わったときに、貧そなボディをさらす破目になる。冷徹に投資の判断を下さねばならない、とくに今のような順調な状況下では。
それに記憶違いかもしれんが、以前これらの企業に対する評価は、ブランド力があり、日々お金が入ってきて、バランスシートが健全だ、だから投資に値する、というものが多かった気がする。それが負債が増えてくると、これだけお金を借りれる信用がある、だから投資に値する、というふうに理由付けが都合よく変化しているように思える。
こういう識者によるもっともらしく聞えるご都合主義がはびこるときは、気をつけないとね。
バラ色のもやの中をあでやかに飛ぶ黄金の蝶々は、そう簡単には見つからない。
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