2016年3月5日土曜日

害虫防除がサイエンスの域に達するとき - ローリンズ(ROL) -

 四月十六日の朝、医師ベルナール・リウーは、診療室から出かけようとして、階段口のまんなかで一匹の死んだ鼠につまずいた。
 カミュ 『ペスト』 宮崎嶺雄・訳 新潮文庫
以前に書いた『北米に忍び寄る危機をジカくせよ - 米国での虫よけ剤 -』で読者の方からローリンズ(ROL)の存在を教えていただきました。どうもありがとうございます。非常に面白そうな銘柄なので、調べてみました。

ROLはもともとデラウェア州で1948年に創業、現在はジョージア州アトランタにヘッドクォーターがあるペストコントロール(参考:日本ペストコントロール協会のサイト)とシロアリ防除のサービスを提供する企業です。ペストコントロール分野では、北米No.1とのこと。2015年一月時点で約11,000人の従業員がいます。

忘れちゃいけない、現時点で14年連続増配中です。

The Orkin Man Truck / Rusty Clark - On the Air M-F 8am-noon 

☆☆☆


以下の子会社を通じてサービスを提供しています。



Orkin


世界最大のペストコントロール及びシロアリ防除の会社。米国を筆頭に、カナダ、中米、カリブ海諸国、中東、アジア、欧州、地中海沿岸、アフリカ、メキシコに直接、及びフランチャイズを通じてサービスを提供。まあ、一口にアジアって言われてもねえ、どの国やねん。メキシコが単体の国で述べられていたけど、それだったらほかの地域も国名で述べてほしいと思う、いかにも地理に詳しくなさそうな、ある意味アメリカ人っぽい記載がアニュアルレポートにありました。


ふつうの家はもちろん、ホテルや食品業者、小売店等の商業施設にも、害虫防除をサイエンスの域に達するまでのサービスを提供しています(参考: The Orkin Solution)。


セグメントに分かれているようではないですが、大きく分けてペストコントロール、シロアリ、Bed bug (南京虫や虱)の3つの敵から人類を防衛している模様です。



Orkin Canada


上記のカナダ版子会社。1999年にOrkinに買収された。



Western Pest Services



2004年にROLに買収された。Orkinと同等のサービスを、主に米国の北東部で提供。



IFC


2005年にROLに買収された。食品・コモディティ業界にサービス提供。



Home Team Pest Defense


2008年にROLに買収された。住宅建設業者(Lennr House、PulteGroup、Toll Brothers等々)にペストコントロールサービス(というか技術?)を提供。



Rollins Australia


2014年にAllpest WAを買収することによって誕生(と思う)。一般住宅や商業施設に対するシロアリ防除、ならびにかの地のマイニング業者にもサービスを提供。


実は私の最初の就職先でオーストラリアのシロアリ防除会社と仕事をしたことがあります。だから何か知っているか…と問われると...何も知らんけど。懐かしいなあ...。


全体的に害虫防除というより同業他社駆除で会社が大きくなっていっているようです。


☆☆☆


Revenueの推移を見ます。



数値のソースはモーニングスターのサイト
いいですね、Revenueの伸びもさることながら、オペレーティングマージンが順調に大きくなっています。

2014年度ではRevenueベースで商業向けPest Controlが41%(前年度比6.7%増)、一般住宅向けPest Controlが41%(同4.5%増)、シロアリが17%(同5%増)とのこと。ただ買収による前年度比増加は2%以下にとどまるとのこと。


また2014年度の海外比率は約8%です。2014年度では11のフランチャイズが米国外で増えています(アジアでは中国)。


一株当たりの指標の推移。



数値のソースはモーニングスターのサイト
フリーキャッシュフローがじゃぶじゃぶgenerateされとります。

2014年度の財務3表(数値は2014年度版アニュアルレポートより)。




純利益の利回りは19%。いいですねえ。またDebtに依存していません。BSでその他負債が増えているのは年金の引き当て(Accrued Pension、訳が正しいかは知らん)の増加のせいです。


きちんと調べていませんが、一般住宅向けのサービスでは代金回収のタイミングが早いのでは?と思いますし、業務用サービスでは、定期的にリピートされる確率が高いと思われるので、すごく安定したビジネス展開ができているのではないでしょうか。


FY15では、iPhoneで活用できるCRMのシステム、BOSSの導入で業務の効率化を進めています。また従業員の教育も手厚くおこなっているようです。さらには2月にCritters Controlを買収し、野生動物からの防御にも手を広げています。


しかしCritters Controlのホームページには、ワニやネズミの隣に、かわいいスズメの写真が載っており、そりゃ無いんじゃないかと思ったりします。


このビジネスの安定性とフリーキャッシュフローの潤沢さ、14年連続増配、地球温暖化によるWild livesの前線北上、巡航速度に乗った米国経済と人口増の恩恵を受ける米国住宅事情の明るい展望(私見)を鑑みると・・・


So...What are you waiting for !?


というわけで、ROLは2月の最終週で獲得済みです。


リスクっていうと、各家庭を訪問するサービスパーソンが、なんかの不祥事をやらかさないか、くらいですかね。

ちなみに競合他社ではTerminix(SERV、シロアリ関連ではNo.1)、Ecolab(ECL)、そしてRentokil(RTOKY)があります。日本ではアサンテ(6073)かな。しかしSERVとRTOKYは配当がちゃんとなってないし、ECLはけっこう分野が違うし、ここはやっぱりROLですな。


情報開示:この記事を書いている時点でROL90株保有


Appendix


配当性向推移



数値のソースはモーニングスターのサイト
前年度からのRevenue、Operating Income、配当の伸び率の推移。


数値のソースはモーニングスターのサイト


2 件のコメント:

  1. とくめいせんたい2016年4月24日 1:03

    こんにちは。こちらでROLを知り、私もすごくいい銘柄だと思いましたが、15年EPSが0.70、16年予想EPSが0.78で、16年予想PERでも26.94/0.78で約34倍になるようです。PER的にはVやNKEなどのグロースよりも高いぐらいですが、それについてはどうお考えですか?
    Kさんはバリュー投資が多い気がするので、その辺についてお考えを知りたいです。
    よろしくお願いいたします。

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  2. PERは、そうですね、片田舎の交通量の少ないハイウェイの側に立っているスピードリミットの標識くらいにしか気に留めていませんね、最近。似たような銘柄のどちらかを選ばなければならない場合は、PERの低いほうを選ぶかと思います。投資も運転も自己責任ですね。投資の場合は自損事故だけで他人に迷惑がかからない分、気が楽ではありますが。

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