過去6か月間のABTとSP500の株価比較(Yahoo! Financeより)、青の折れ線がABT |
まずABTの特徴として挙げられるのは、売り上げの7割が米国外から来ていることです。
2014年度の地域別Net Sales、数値はアニュアルレポートより |
- 為替の変動の影響をもろに受ける
- 他地域の景気の同行の影響を受けやすい
- 新興国の経済的(社会的)発展の恩恵を受ける
かと思います。
最近では1と2がダウンサイドに働いていますかね。
でも、『故郷の行方、人々の向かう先、そして The Boss』で書いたように、今後は中国をはじめアジア諸国も急速に高齢化が進んでいきますし、日本やほかの先進国でもマーケットが拡大していくのはヘルスケア分野だと思いますので、そこらへんは長期的に見て安心できるのではと思います。
アニュアルレポートにも、2050年にはABTのマーケットの人口の40%は50歳以上になると予測しています(2014年度末では23%)。
またヘルスケアへの支出は、例えば米国ではGDPの18%ですが、新興国(emerging markets)では6%に過ぎぬそうであり、ここに伸びしろが大きくあると見受けられます。
カバーしている分野は以下の4つ。以下の各ビジネスの日本語訳はアボットジャパンのHPを参考にしました。
アニュアルレポートより抜粋 |
幼児用、成人向け、Performance(おそらくスポーツ時の栄養補給みたいなやつ)に分けられます。
うち44%が成人向け。糖尿病や人工透析を受けている患者さん向けのようです。
Medical Device (医療機器)
ステントやバルーンカテーテル、ガイドワイヤー等の血管関係。つまってしまった血管に、まずガイドワイヤーを通し、そのワイヤーに沿ってバルーン(風船)カテを患部まで通してつまりを吹き飛ばし、最後にステント(土管のようなもの)を留置して詰まるのを防ぐ治療です。
そのほか糖尿病のグルコースモニタリング機器や、レーシック関連も扱っていますね。それは知らなかった。
Diagnostics (診断薬・機器)
免疫診断、血液検査、ベッドサイド検査、コンパニオン診断の分野らしいです。ようわからん。免疫/血液スクリーニング分野ではワールドワイドでNo.1とのことです。
Established Pharmaceutical (ジェネリック医薬品)
ここは新興国での需要が伸びているようで、インド、ペルー、チリ、コロンビアで一位だそうです。主な分野は以下の通り。
• Gastroenterology
• Women’s Health
• Cardio-Metabolic
• Pain/Central Nervous System
• Respiratory Anti-Infectives
• Influenza Vaccine
もはや訳する気力なし、しても、ようわからんと思う。インフルエンザ・ワクチンもやっているのか。
それではRevenueの推移。
数値のソースはFY14までモーニングスターのサイト、FY15のRevenueは1/28付の8-Kより、ちなみにFY13にABBVをスピンアウトしています |
栄養剤においては5.5%増、中国とラテンアメリカが寄与。診断薬・機器では7.3%増。医薬品は34.1%増、これはおそらく南米でのCFR Pharma、ロシアのVeropharmの買収の効果も含んでいます。医療機器は1.5%増です。いずれも為替の影響を除いた数字です。
前期(Q3)あたりからドルに対し、主に新興国の通貨が下落していったとのことなので、株価はこれを反映しているのでしょう。中国をはじめとする新興国経済の減速懸念も影響しているかもしれません。
直近の株価の下落は、1/28に出された来年度のAdjusted EPSのガイダンスが$2.10 - $2.20(FY15の結果は$2.15)、EPS under GAAPが$1.55 - $1.65(FY15の結果は$1.72)と発表されたせいかと思います。(以上ソースは8-K)
理由は引き続き為替、とくに資源価格下落であえいでいるベネズエラのネガティブインパクトを織り込んでいるからのようです。ここに関しては、為替のみならず経済自体がもうカオス状態のようで。
というわけで、すくなくとも数字の上では目下のところ世界の経済情勢の節目で逆風を目いっぱい浴びているABTですが、新興国の発展から先進国の生活習慣病や高齢化までしっかりカバーしていますし、シェアもそうだけど何よりも優先するのはマージンと謳っていますので、為替のヴェールを除くと、けっこうな横綱相撲を今後も長きにわたり展開するのではないでしょうか。
なんとなく株価がオーバーリアクションな感じのいまが獲得の良いチャンスかもしれません。2015年には体内で自然分解されるステントの承認申請が米国と日本でだされたようなので(参考アボットバスキュラージャパンのプレスリリース)、個人的にはこれに興味あります。
いずれにせよ、皆様も生活習慣には気を付けましょう。ABTのお世話になるのは株主還元だけにとどめたいものです。
情報開示:この記事を書いている時点でABT108株、ABBV108株保有
Appendix BS
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