2016年6月1日水曜日

害虫防除がサイエンスの域に達するとき その2 - ローリンズ(ROL) -

もっとも、門番の論旨ははっきりしたものであった-この建物には鼠はいないのである。医師が、二階の階段口に一匹、しかも多分死んだやつらしいのがいたといくら断言しても、ミッシェル氏の確信はびくともしなかった。この建物には鼠はいない。だからそいつは外から持ってきたものに違いない。要するに、いたずらなのだ。
カミュ 『ペスト』 宮崎嶺雄・訳 新潮文庫
ローリンズ(ROL)のプレゼンテーション資料がとても興味深かったのでレビューします。とは言っても、なんというか、いくら商売柄とはいえ、こヤツをプレゼンファイルの冒頭に持ってくるかよ。

あらかじめ警告しておきますが、アレが嫌いな人は、この記事を読むのを止めておくほうが賢明です。アレってなにかって? ほら、アレです、アレ、今もあなたの背後のタンスの陰で、なにやら物音が聞こえませんでしたか・・・。振り返ればいつもそこにいるヤツです。


ROLのプレゼンテーションファイルより抜粋
まったくこのセンスがいかにもアメリカンですな。他になんかなかったのかよ。これでROLは日本の女性投資家を獲得し損ねましたな。私も女性読者を失った気がする。防除するのは害虫だけで十分だよ、大和なでしこまで防除してどうする・・・

あ、いや、そもそもこのブログに女性の方はほとんどいらっしゃらないと思われ・・・

気を取り直して、ROLの銘柄の魅力と可能性を再確認します。

以前に書いた害虫防除がサイエンスの域に達するとき - ローリンズ(ROL) - でも確認しましたが、RevenueとIncomeが安定して伸びてきています。以下にモーニングスターのサイトから数字を引っ張ってきましたが、あれれ、サブプライムの金融危機ってどこの惑星で起こったんだっけってな感じです。



Revenueは左軸、OperatingとNet Incomeは右軸
なんでも18年連続でEarningが増加しているとか。

ROLのビジネスの強みの一つに、不景気に対する耐性の強さが挙げられます。Revenueのうち80%がリピートなんだそうで、さもありなん、ウォール街の金融機関が破たんしようがなんだろうが、やつらは侵入の手を緩めたりしません


それから察するに、いったん害虫(獣)駆除の業者を選定すると、もう別の業者に変更するモチベーションはあんまり働かないのでしょう。


で、市場ですが、ROLによると規模は$12.3Bあり、うち70%が一般住宅向け需要だそうです。それでROLとTerminix(SERV、シロアリ関連ではNo.1)、Ecolab(ECL)の3社で約30%を占めています。


ということは、残り70%は比較的小規模の事業者、いわゆる3チャン(父ちゃん、母ちゃん、お兄ちゃん)か、それらよりちょっと規模が大きいくらいの会社がひしめき合っているようです・・・推測ですけど。


ROLはこれらの比較的小規模の競合他社をどんどん買収して大きくなっていっています。08年度から15年度のキャッシュの使用用途は:



数値はROLのプレゼンテーションファイルより
買収に31%を費やしています。Capexは低く、配当が一番多い・・・いいですなあ、私好みです。それでその買収した後なのですが、ROLの強みはここから始まります。

先日、日本での出来事ですが、ハチの巣を駆除しにきた業者が火事を発生させてしまった、という記事をネットで読みました(参考:産経WEST『スズメバチ駆除で爆発、自宅炎上 「どこがスペシャリストやねん!」家族怒り心頭、法廷闘争の行方』)。


これらの小さな業者間では、腕のレベルにかなりばらつきがあり、なかなか信用しにくい、という問題があります。おそらく米国でも事情が似ているのではないでしょうか。

ROLはペストコントロール業界ではユニークな27,000スクエアフィートに及ぶトレーニングセンターを保有しているそうで、従業員の質の向上とスタンダード化に努めているようです。なにやら過去14年間ずっとTraining MagazineのTOP125にずっと選ばれ続けたんだそうです。


つまりは、全従業員のスキルを一定レベルに保ち、害虫防除をTribal knowledgeに頼った職人芸ではなく、サイエンスのレベルに持っていくことを行っているのです。


さらには、BOSSというCRM(たぶんCustomer Relationship Management)システムを導入し、ここでも従業員の業務とサービスの効率化・スタンダード化に励んでいます。


おお・・・耳をすませば、時空を超えて、賢者の声が聞こえてくる。

昔ながらのビジネスが設備の近代化と事業規模の拡張を同時に進めるとき、そこには利益が増える可能性が存在する
ピーター・リンチ 『ピーター・リンチの株の法則』(平野誠一・訳、ダイヤモンド社)

ROLは、既に述べたサイズとクオリティの2本立てで、今後も利益を増やしてくれることでしょう。

もうひとつ興味深いのは、ROLの米国内の拠点のロケーションですが、以下の図の通り、



ROLのプレゼンテーションファイルより抜粋
比較的米国の南側に位置しています。

もちろん害虫や害獣は暖かい気候の地域に多いので、こういうロケーションになるのでしょうが、昨今は地球温暖化が叫ばれています。日本も今年の夏は暑くなりそうな気配です。


であれば、やつらも今後長い期間にわたり、気温上昇とともにジワリと北上してくることが予想されます。人々の健康への意識も高まりつつあることですし・・・マーケット・サイズの拡張も見込まれますなあ。


ここはひとつどうでしょう・・・温暖化のニュースをみて欝々となってしまうより、ROLの株主となってニヤリと笑うのが、我々にできる効果的な温暖化対策と言えるのではないでしょうか‼


・・・


違うか・・・


地道に省エネに励みましょう。


情報開示:この記事を書いている時点でROL90株保有


GWにヨメの実家に行ったのですが、リビングで洗濯物を畳んでいると巨大なムカデがオレの腹の上に落っこちてきた。映画『Godfather part III』の最後のシーンのアル・パチーノなみに絶叫してしまったぜ。


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