2015年3月11日水曜日

老舗連続増配企業に祝福のKISSを -プロクター・アンド・ギャンブル(PG)-

戦線を縮小しろよ。つまり昔に戻るのさ。

村上春樹 『羊をめぐる冒険(上)』 講談社文庫

先だって、うちの奥さんが突然「パパは若々しくないといけません」と高らかに宣言し、彼女御用達のSK-IIのクリームを毎朝晩の洗顔後私の顔に塗りたくるようにとのお達しがありました。これこそ無駄な抵抗で費用対効果ゼロと考えるのですが・・・下手に抵抗すると貴重な時間まで無駄になるので唯々諾々と従っております。綾瀬はるかさん、ごめん。

そのSK-IIを提供する58年連続増配中のプロクター・アンド・ギャンブル(PG)ですが、2014年度版アニュアルレポートが出ていたので読んでみるとともに、モーニングスターのサイトから今年度の数字を確認しました。まずRevenueから見ます。
まず気が付いたのは、アニュアルレポートだと14年度は前年と比べてNet salesが1%増(ボリュームは3%増)となっていますが、モーニングスターのサイトでは上記のグラフ通りそうなっていません。

これはどうやら14年度中に手放したEU諸国以外のペットケア事業のインパクトを修正したか否かで違っているようです(お・そ・ら・く)。で、モーニングスターはそこまで親切に修正しない、と思われるのでこのデータを見るときはその辺を気をつけないといけないですね。

PGのセグメントは以前レビューしたので割愛するとして、そのセグメントごとの前年度比は: 

世界の女性と、日本で少なくとも一人のおっさん青年を麗しくしているBeautyはNet salesが-2%、グローバルマーケットシェア 0.4ポイント低下。
GroomingはNet salesは平坦、シェア0.2ポイント増。
Health careは1%増、0.2ポイント増。
Fabric care and Home Careは1%増、0.2ポイント増。
Baby, Feminine & Family Careは 2%増、-0.3ポイント減。

それでトータルで見ると、既に述べたようにVolumeで3%増、為替で-2%、Pricingで1%増、モデルミックスで1%減で、その結果Net salesは1%増です。

ここでも為替がね・・・

PGは以下の通り押しも押されぬグローバル企業なので、ドル高の波をもろにかぶります。
PGのアニュアルレポートより
上記で見ると北米以外でNet salesの約6割を占めています。

逆に考えればPGに限らず、ガラパゴス・in Americas以外の企業の株式を今の局面に買うというのも賢い作戦かもしれません。

いずれにせよ、ここ最近トップラインが頭打ち気味なのは否めないようで・・・その現状を打開すべくブランド数を70~80あたりに絞り込もうとしています。これらのブランドはPGのSalesの約90%を占めているそうです。

逆に撤退しようとしている90~100にのぼるブランドは、過去3年間でSalesは-3%、Profitは-16%なんだそうです。ようするにストライクゾーンを小さくして狙い球を絞っているんでしょうな。

それと同時にリストラも着々と進行中です。北米を筆頭にSCMまわりを、特に生産サイトの統合を開始しているようですし、今年度中に既にRole(職種?役職?ポジション?)を16%減らしたそうです。従業員の数も09年度は132,000人でしたが14年度は118,000人になっています。
数値はアニュアルレポートより
CEOがアニュアルレポートの冒頭で数ページにわたって述べていることをまとめるとKISS (Keep It Simple, Stupid)を実行中! となります。まあ頑張ってください。

私が勤めている企業も、私が入社した当時は何をやっているのかよくわからない部署や人が多かったことを覚えています。明らかに重複している部門が多く、かったるいムードが漂っていて、しかも思いつきのような継続性にないプロジェクトが乱立し、意味のない出張に数回呼び出された記憶があります。

で、リーマンショック前にガタが表面化し、その後の長い年月にわたる粛清の日々がありました。現在仕事をしていてとっても風通しがよく、業績も回復、株価も好調になっています。が、私からみると既にまた脂肪がたまりつつある徴候が散見・・・話がそれました。

一株当たりの指標は:


数値のソースはモーニングスターのサイト
Payout ratioが上昇中ですね。EPSはHigh single digitの成長を目標にしています。

キャッシュフローをウォーターフォールで見ると:
数値はアニュアルレポートより
今年度の営業キャッシュフローの低下はForeign pension planに入用だったからとのこと。自社株買いの バッファーを考慮すると、まだまだ増配当の余地はありそうです。

前述のコア・ブランディングと組織の引き締めというタネが、今後どういう風に芽生えていくかはわかりません。しかしPG製品の極端な凋落というのは考えにくいですし、すでに述べたとおりドル高時の逆張り投資として考えると、当銘柄は今後の追加投資の有力な候補です。

情報開示:この記事を書いている時点でPG50株保有 

Appendix BS
数値はアニュアルレポートより




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