「ストレート・エッジ」という言葉がある。囚人のある種のライフスタイルを指すスラングだ。監獄生活の憂さを晴らすため、多くの囚人がタバコや酒、ドラッグ、その他の破滅的な気晴らしに魅了されていく。だが、ストレート・エッジを歩く男たちは違う。自分を律しながら時間を過ごしている。身を潜め、他人には構わず、汚れを知らず、集中したままでいる。体内にアルコールやドラッグ、ニコチンのような毒を入れない。常に自分を制御していく生き方だ。
ポール・ウェイド 『プリゾナートレーニング 超絶‼ グリップ&関節編』 山田雅久・訳 CCCメディアハウス
読書するとは、自分でものを考えずに、代わりに他人に考えてもらうことだ。
ショーペンハウアー 『読書について』 鈴木芳子・訳 光文社古典新訳文庫経営者にとって大事なことは、資本の配分である。これは一般の人にも当てはまる。とくに家庭を持っていれば、なおさらだ。可処分所得を、何にどれくらいアロケートするかは、投資関連でよく言われるアセットアロケーションなんぞよりも、もっと重要である。
そして注意を払うべきは資本の配分だけではない。小さな子供とワイルドな妻をかかえる中年のおっさん(いちおう気分はいつも18 till i dieなのだが)にとって、時間と体力のアロケーションも慎重を期する必要がある。
もう以前のように、手取り給料-家賃・光熱費=自由な金ではないし、体力勝負で毎日ちんたら残業したり、週末の朝にベッドで寝そべりながらコーヒー片手にMLB中継を眺めるわけにはいかないのだ。
平成の時代は終わった。
いまは4時半に起床し、洗濯や朝食の準備をする。起きてきた子供たちと一筋縄ではいかない朝食をとり、七時の開園と同時に保育園に預け、八時前には出社をする。ほかの社員がどやどやとやってくる前の一時間が肝である。
そして昼食を取るまでになんとしても、いささかなりともアタマを使う仕事や、気合が必要なタスクをやり遂げる。
出社してから5時間以内が勝負だ。それ以上は本当に体力・気力が続かない。あとは仕事をするふりをしてぼんやり過ごし、少しばかり充電する。子供達との夕食に間に合うよう帰宅し、食事の前に師ポール・ウェイドの指導のもと、トレーニングを行う。師が実在するか否かは大事ではない。大事なのは私がトレーニング時に彼の存在をそばに感じるか否かだ。バー・ハンギングで前腕が爆発しそうになっているときに、彼の鋭いまなざしを感じるか否かだ。
夕食後、絵本を読んで子供を寝かしつけ、皿洗い等の後片付けをしたら、ベッドへ直行する。
よくある時間の使い方みたいな指南本には、一年間の予定の立て方みたいなことが理路整然とわかりやすく書いており、それにはまずバケーションの予定を入れ、それから逆算して仕事等の段取りを・・・みたいなことが書かれてある。そしてさらにはそこから細分化して、月、週、日のTo Doリストに落とし込む。
すばらしい。
しかし何人の人がそれをできているだろう。ああいうのってなんか、肝心かなめの「生活といううすのろ」(*1)をヨソにどけてしまっている。私個人的には、まず第一に考えなければならないことは睡眠時間の確保だ。これを起点として、それ以外の行動に時間をアロケートしていかねばならない。
師ポール・ウェイドもこう述べている。
監獄に入ると否応なくそうなるように、消灯時間を決めるのだ。起床時間を基に、十分な睡眠が取れる就寝時間を定める。その時間になったら、すべての誘惑を断ち切って、何が何でもベッドに入る。
こうなってくると読書に割り当てできる時間は、通勤のときしかない。現在のところ、電車の中で過ごすのは約20分。これが絶妙で、若かりし頃は想像もしていなかったのだが、この年齢になってくると、仕事と同様に本を読む体力が相当落ちている。正直なところ20分ももたない。なんたることや、サンタルチーヤ(*2)。
というわけで、一日に読書に振れる時間はせいぜい計30分。
何を読むかの選択が大事になる。
***
人が物事を学ぶ方法には、大まかに分けて以下の3つに分けられるんじゃないかと思う。
- 見て(聴いて)学ぶ
- やって学ぶ
- 読んで(書いて)学ぶ
幼い頃の誕生プレゼントとして親からもらった『シートン動物記』を手に取って以来、読書は私の趣味です。そのせいか、私は新たなことを学ぶときは、基本的に3.のアプローチをとります。
1.のような授業や講演会みたいなライブはね、気分が乗っていないとすぐに上の空になって大事なことを聞き逃してしまう傾向があるのです。そのてん3.はやりたいときに自分のペースでやれるし、わからない箇所は誰に気兼ねすることなく何度でも読み返すことができるので、小心者の私としてはピッタリなのですな。
というわけで投資を開始するときも3.でいきました。いまから12‐3年前、本屋さんで『藤巻健史の5年後にお金持ちになる「資産運用」入門』(2006年出版された同書を、そのタイミングで購入して参考にした人は、数年後ビンボーになったと思われる。私はその一人。しかしいまだに私の投資方法は藤巻氏が書かれていたことがベースになっている)を買い求めて以来、うーん、いったい何冊読んできたかな。
スペースに限りがあるので、また紐解きたい箇所がきっとでてくるであろう、と感じた本以外は処分してきました。うちの本棚に残るのは、セブンイレブンの陳列棚に残り続けるのよりも難しいのだ。
現在、投資関連で本棚に残っているのは以下の通りです。
写真に納まらなかったけど、本棚の左端には文庫版バージョンの藤巻健史の5年後にお金持ちになる「資産運用」入門』が、ちゃんとあります |
株式投資を始めて13年(当ブログを初めて5年)、この間サブプライム・クライシスを経験し、いろいろ試行錯誤してきました。
ただ最近ようやく自分なりの投資に対する軸足が定まってきた手ごたえがあります。
もうこれ以上貴重な時間と体力を割いて新たな投資の本を読むのはやめにしよう。必要であれば現在本棚に残っている書籍を読み返すことにしよう。
ショーペンハウアーさんもこう言っています。
人々はあらゆる時代の最良の書を読む代わりに、年がら年じゅう最新刊ばかり読み、いっぽう書き手の考えは堂々巡りし、狭い世界にとどまる。こうして時代はますます深く、みずからつくり出したぬかるみにはまってゆく。
ま、ショーペンさんに言われるまでもなく、自称読んだ本、あるいは寝た女の数がやたらと多いやつとは、飲んでて楽しかった記憶はないからなあ。
というわけで通勤電車のなかは、株式投資以外の愉しむ読書だ。
***
だだし新たな株式投資関連書籍の無期限購入停止の決定は、ただ単に私の投資方法の軸足が固まったからだけではない。実のところ、以下の充実したレポートが毎月無料で手に入るようになったからというのもある。
そう、農林中金〈パートナーズ〉米国株式長期厳選ファンドとスパークス・新・国際優良日本株ファンドの月次運用レポートです。
そんじょそこらのチャラチャラした最新情報のケツを追っかけたり、単なる紋切り型のレポートじゃないんだな、これが。
例を挙げてみましょうか。
スパークス・新・国際優良日本株ファンドの平成29年の12月のレポートではポートフォリオ内の分散についての考察が書かれています。
同ファンドは、一般の株式投資講座で習うような分散投資の有効性はあまり重視していないとした上で、
株式ポートフォリオというのは、幅広い銘柄に投資をすればするほど、下げ相場のときに、ポートフォリオ全体につられて下がってしまう可能性が高まります。
〈中略〉
一方、一握りの銘柄への集中投資で成功すれば、市場全体の下げに反して、自分のポートフォリオだけは上昇することが起こりうるのです。
と書いています。そのうえで、それぞれ性格が異なるビジネスの株式を保有することで、銘柄間の相関関数も低く抑えられるとしています。結果同ファンドは2019年4月時点で16企業のみの集中型ポートフォリオになっています。
これに対するリスクとして同ファンドは、突発的なスキャンダルや経営トップの不慮の事故等を挙げています。それを踏まえたうえで、企業の選択にあたっては、不祥事があっても経営危機にならない財務基盤やこれまでの経営陣の立ち振る舞い、後継者の準備等を考慮しているとのことです。
上記を踏まえたうえで毎月の企業の分析と、同一企業への評価の変化をみていくと、読みごたえがありますね。
また農林中金〈パートナーズ〉米国株式長期厳選ファンドの2017年9月の月次レポートでは、工場の自動化の2つのタイプであるプロセス管理とディスクリート管理についての説明があり、それに加えて新たなハイブリッド管理という新しい潮流は登場していることが説明されています。
そんなもん、その業界以外のサラリーマンは、なかなか把握できない情報です。
これらのレポートでは、個別の企業の分析もそうなんですけど、それに対してプロのファンドマネジャーがどういう考えでどういう行動を起こしているかの思考過程に触れることができます。
どうです、このような内容のレポートが毎月配信されるのですぜ。本屋さんで時間とお金を浪費している場合ではない。
最後に師ポール・ウェイドの言葉。
強制してるわけではない。外の世界には誘惑がたくさんある。だから、この生活スタイルを続けるのは難しい試みになるかもしれない。しかし、トレーニングに心底取り組みたいなら・・・・・・ストレート・エッジを歩け。
投資もストレート・エッジを歩こう。
情報開示:この記事を書いている時点で、毎月農林中金〈パートナーズ〉米国株式長期厳選ファンドとスパークス・新・国際優良日本株ファンドを積み立て投資中。
(*1) 佐野元春の名曲『情けない週末』より
(*2) 高校時代の数学教師の情けないギャグ
参考図書
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