2019年12月26日木曜日

アクティビスト・ムラカミとの対決と、2019年配当再投資

すぐに換金可能かどうかなどの細かい議論は置いて、端的に言えば日本にはまだまだお金がある。政府にも個人の世帯を見ても、お金はあるのだ。それなのに世界一の借金大国になっている。なぜなのか。私の答えは簡単だ。「お金が循環していないから」という理由に尽きる。
村上世彰 『生涯投資家』 文藝春秋
以前、『サードマンの収入明細(2019年2月)』に書いた通り、近所にテニススクールができたので、ムスメ誕生以来やめていたテニスを再開しています。


紆余曲折があり、結局スクールに通いだしたのは、この秋からになりました。おかげでここのところ、ケツが慢性的に筋肉痛です。

同じクラスに、私より年配のアベさんという人がいます。いつも燃える闘魂をあらわすかのような真紅のショートパンツを履いているこのおっさん、その風貌が「村上ファンド」で有名な、村上世彰氏にそっくりです。あのグレイなヘアや独特な目つきが似ているうえに、眼鏡まで同じようなチョイスをしている。

なので私は心の中で彼を「ムラカミ」と呼んでいます。あまりにも似ているので、そう呼ばざるを得ない。

で、このムラカミのやつ、プレースタイルが、はた迷惑なくらいにアグレッシブです。

年配のテニスプレーヤーにありがちなのですが、両手をだらーんとしてボーっと突っ立った状態から、いきなりブンブン力任せにラケットを振り回します。

ボールを沈めるとか、緩急をつけるとか、戦略的につなぎに徹するとか、プレースメントを意識して相手を段階的にコートの端に追い出すとか、そういったことを意識している気配はまるで感じられません。ひたすらフルスイングで、ボレーも無駄にハエ叩きで、息が荒いです。

ハゲタカめ。

平行陣対雁行陣の練習で彼が平行陣のチームになると、猪突猛進で突っ込んできてネットにべた張りで立ったりします。その立ち位置だと簡単にカウンターで頭上を抜けるので、私としては冷静に中ロブを上げます。

たいていの人は、それをやられると次からは立ち位置を修正してくるものなのですが、このアクティビスト野郎は、「ふん、つまんねーヤツ」と言いたげな一瞥をこちらにくれて、次回も同じく猪突猛進にネットに突進してきます。

わかったよ、ムラカミ。上等じゃねえか。

私は腰を落としてムラカミのはなったアプローチショットに対応し、突進してくる「もの言う株主」の足元へ沈むスピン(もしくはスライス)のかかった柔らかなボールを打ち込みます。足元をすくわれた形のアクティビストは、バランスを失いコート上をすってんころりんと転がる羽目になります。

調子こきすぎだぞ、強欲野郎。いまのニッポン、カネは回っていないのかもしれんが、今日のオマエはいつもより多めに回っているぞ。

しかし脱兎のごとくネットに突進してくる相手の足元へボールを沈めるのはかなり困難で、おまけにムラカミのアプローチは力任せの横殴りなだけに威力があり、往々にして私の返球は浮かびがちです。そうなったらムラカミはここぞとばかりにハエ叩きボレーを打ち込んで、ご満悦な表情をします。

おのれ、ムラカミ。次を見とけよ。

なぜに年齢アラウンド50のおっさんたちがこうまでムキになっているかというと、同じクラスにかわいい女子高生がおるんですわな、これが。

その女子高生は、おっさんたちが加齢華麗なショットを決めると、キャーっとばかりに手をたたいて微笑んでくれるのです。最近、黄色い声援とやらに縁がなくなったおっさんとしては(いや、オレは昔から縁がなかったか。きっとムラカミにもなかったことだろう)、そりゃ、手を抜くわけにはいかない。

というわけで、アクティビスト・ムラカミと私は、女子高生のキャー、パチパチをめぐる熾烈なプロキシー・ファイトを毎週末繰り広げているわけです。きっとお互いが自分のことをホワイトナイトと思いながら。

ふう、やれやれ。この様子を見たら、きっとチャールズは肩をすくめて、ため息をつくことでしょう。




***

現在の私は少なくとも一週間に8日くらいは、打倒ムラカミの策略を練っている次第である。株式投資についてなんぞ考える暇は、これっぽっちもあるはずがない。またすべてのアドレナリンはコート上で費やされるので、株式投資でミスターマーケットと戦う気力はない。

そんな私が唯一安らげる時間というのは、テニスが終わった後のお風呂である。アクティビストとの戦いを振り返りながら、酷使された肉体をゆったりと熱い湯船にしずめる。目を閉じながら私は、そしてきっとムラカミも同じことをしながら、こう思う。

今日のところは、オレの勝ちだ。

というわけで、2019年の配当再投資先は、 住宅・商業用温水機器(給湯器・ボイラー)と水質処理製品のメーカー、A.O.スミス(AOS)になった。Operation Marsの一環です。

20年後は、オレの勝ちだな。

***

あのさ、チャールズ。きみ、間違っているよ。株式投資もウィークエンド・テニスも「敗者のゲーム」なんかじゃないね。「エラー(失敗)のゲーム」なんだ。あるいは「勘違いのゲーム」かもしれん。ま、本のタイトル的にはthe Loser's Gameのほうがインパクトはあるけどさ。

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てなわけで、今年の更新はこれが最後です。なにせ忙しくクリスマスツリーさえ片づける時間がない。明日は早朝から帰省の旅です。

良いお年を。

情報開示:この記事を書いている時点でAOS205株保有


村上世彰氏に対する世間一般的な印象をネタに記事を書きましたが、投資家としての彼の行動を理解するには、文庫化された以下の本を読むのがいいと思います。面白いですよ。ただし村上ファンドと対峙した企業の方にも、彼らなりの言い分があるはずということは留意しないといけませんが。




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